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第103回 標槍(ひょうそう) 投げ槍の事です

標槍ひょうそう


 中国で手で投げる槍の総称として言われている言葉も標槍です。

 オリンピック競技でもある投槍のことを中国語で表記すると擲標槍となります。


 インターネットで『標槍』と入れて検索をすると競技中の動画や写真が沢山ヒットしてきますね。


 今回とりあげる標槍は北栄ほくそう時代から使われ始めた槍で、大小さまざまなタイプがあります。


 短い物では100センチ、長い物では300センチ。

 軽い物では800グラム、重い物では2.5キログラム。

 先端が幅広になる剣のような穂先を持ち、石突部分も尖らせてある槍です。


 接近戦で槍として使う事もできますが、どちらかと言うと投げて使う事を前提としている槍になります。


 西洋のジャベリンや、ローマのピルムのような投げる専門の槍も世界には多数存在していますが、中国では弓・弩といった飛び道具が発展しています。

 手裏剣のような刃物を投げる投擲術などもあったため『投槍』という物自体があまり行われていませんでした。


 確かに、投げつけるにしては槍とは大きい物ですし、もっと持ち運びがしやすくて小さくても威力が出るのであれば他の飛び道具が選択肢に入ってきますね。


 自然が多くて、移動距離も長い、様々な民族が入り乱れているといった情勢では剣などの接近武器より優位に立てる槍を投げるわけにはいきません。


 投げる専門の槍という短めの槍を持っているくらいなら普通の槍が選択肢になりますし、槍が使いにくい足場や森などの障害物が多い所では、大振りな鉈や呉鈎ごこうなどが戦いに使われます。


 出番がなさそうな標槍でしたが、モンゴル族が好んで使っていた事から広く普及することになりました。

 彼らの扱った標槍はかなりの大型で300センチに届くようなタイプです。


 しかも、これを騎乗した状態から投げつけて戦いました。

 接近戦で騎乗の槍は効果が高いとされており、通常の槍としての使い方に加算して投げつけるという戦法が効果を発揮したとされています。


 その後、標槍はサイズやデザインを変えながらも広く普及して、正式な装備品として取り入れられていくようになりました。


 中国は様々な民族がいるばかりか、東西南北に他の国もあり、同じ中国の国土の中でも言語が違うと言われるほど様々な文化が存在しています。


 そのため、接近戦に使われる武器も剣・槍・棒・斧・鎌・錘などが用いられ、人によっては二刀流として両手に1本ずつ武器をもったりすることすらありました。


 この様々な武器の中に標槍が含まれていたと考えてよいでしょう。


 集団戦法として陣形を用いて軍と軍がぶつかり合う事も、小競り合いのように少数の人員同士で戦う事など、戦いのタイプも本当に様々です。


 山、川、里、荒れ地、森、林、船、建築物、街、田畑、岩場、戦いになる場所も様々あったのですが、どこで戦うにしろ、同じ槍を使うなら普通の槍の方が使いやすいですし、槍が使いくい場所ならば他の武器が候補にあがります。


 飛び道具として標槍を持って行こうとしても、弓・弩に軍配が上がってしまいます。


 こうした標槍よりも使い勝手がよく、場面を限定したとしてもより優れた武器が存在していたため、段々と標槍は使われなくなってしまいました。


 1900年代の清の時代になってくると高性能な銃火器が登場し、剣や槍などの武器は一気に前線から駆逐されていくこととなります。


 当然、標槍もこの流れには逆らえず、元々下火であったこともあり、表舞台からは姿を消してしまいました。

脇役でもいいじゃない!


 メインを張れなかった武器になってしまいましたが、武地域や文化などの影響が複雑にからみあった結果その武器の姿を形作っていきます。

 世が世なら、時や場所が上手くかみ合えば標槍は別の進化を遂げていたかもしれませんね。


 ブックマークに評価、感想など、ありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[一言] 日本では投槍は犬槍として不名誉な行為だったそうですから所変われば文化も違う物ですね
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