第100回 石 原始からの万能素材
石
どっちかというと素材、材質を問わなければ世界中どこでも手に入ると言っても過言ではない素材です。
原始時代などを舞台とする時に、石が使われた斧や槍などの武器などとして描写されたりしています。
例え、沼地や砂漠だったりしても、石が1個もないという地域は中々ありません。
数メートルも雪が積もるような豪雪地帯の冬期間だと、手に入れるまでは相当な労力がかかったりするかもしれませんが、無いってことは無いんです。
世界の大半の地域で安価で確実に手に入る素材としてあげられるものは現代でも「石」なのです。
野生の猿たちでも石を道具として手に持ち、木の実の殻を割ったりなど便利に使っている種族もいますね。
類人猿が「道具を使う」という事で初めて手に持った物は石か木のどちらかだったはずです。
今回は石を武器にするという事を考えてみたいと思います。
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~そのまま使う~
一言で「石」と言っても、その種類はとんでもない量になります。
大理石とか黒曜石とかが、石の中では有名ですね。
特に黒曜石については、原始の時代からナイフとして活用されており、他の集落との交易品になったりもしていました。
石の中には丈夫な物、削れやすい物、軽い物や重い物など色々とあります。
川の近くに行けば石がゴロゴロしている場所などもありますから、手に盛った感じでちょうどいい形や重さのある物を選ぶことができますね。
素材の持ち味を生かすとなると、掴んだ石でそのまま殴るということが考えられます。
私も畑などに杭を打つ時にハンマーの代わりに両手で持てるくらいの大き目な石を持ってきて、ハンマーの代わり振り下ろしたりしていました。
杭打ちに使えるくらいなので、これで人を叩こう物なら、大怪我に繋がる事は明白です。
もちろん、手で握れるくらい、野球ボールサイズの石での殴打も十分に効果的です。
素手で叩くよりも石の重さが加算され、握りこぶしで直接叩くような皮膚へのダメージもありません。
石には人間の骨をも砕くほどの重さと強度がありますし、大きい物になれば臓器にすらダメージを当たるようなほどの威力を生み出します。
人間のオリジナルの使い方とも言えるのが投石です。
猿の中にも物を投げるという技を持っている種族が居ますが、そのほとんどは下から腕を振り上げて放り投げるという投げ方になります。
人間は手首などの動きを工夫して、腰のひねりや肩の回転などの複雑な運動を駆使して、とてつもないスピードや、回転による軌道の変化を生み出す事ができます。
プロ野球の公式ボールは141.7グラム~148.8グラムと定められており、ピッチャーはこれを時速150キロを超えるような猛スピードで、投げ込んできます。
直撃しよう物なら、骨の1つや2つ、歯の1本や2本をポッキリやってくれるほどの威力になります。
投げ方も、下から腕を振り上げるようになげるアンダースロー、横なぎに腕を振るサイドスロー、上から振り下ろすオーバースロー、斜め上から振り下ろす、サイドとオーバーの間のクォータースローと何種類にも分かれています。
これほど複雑な投擲ができるのは人間だけです。
平たい石に回転をかけて、水の上をポンポンと跳ねさせる「水切り」という遊びもあったりするほどなので、人間の投擲能力と、強度と重さを両立する投石はすごい威力になります。
江戸時代には子供同士で石を投げ合う遊びがあったとされていますが……
死人が出てもおかしくない、恐ろしい遊びもあったものですね。
現代でも抗議活動などで石をなげるという行動がありますが、攻撃という面では十分な効果がありますね。
スリングショットやパチンコなど石を弾とする武器も多数ありますから、有史どころか人類の歴史の始まりから現代にいたるまで石は武器として活用されています。
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~加工して使う~
現代ではメジャーな物は少ないのですが、石を加工して武器にする事も多くありました。
尖った石を棒の先端に括りつけた石槍や、手ごろな石を取り付けた石のハンマーは有名ですね。
石の性質にも影響されますが、薄く剥がれるように割れる石ならば、わざと薄くなるように割る事で刃物のようにすることもできます。
こうした石は黒曜石が有名ですが、河原などをよくよく見て回るとタマゴの殻のように薄くなっている石を見かけたりします。
こうした石を他の石で研いでおくと切れ味がイマイチな包丁より切れる刃物になります。
そうなると石の剣なども思いつきますが、石の特性は固さと重さです。
金属のような柔軟性もある固さではないので、自分が持つ重さもありポッキリと折れてしまいますから、剣として扱うには工夫が必要です。
とはいえ、遺跡からは石でできた剣なども発掘されていますから、一概に全くないとは言えません。
装飾的な意味合いや宗教的な理由などの方が濃厚そうですね。
後々、銅を用いた武器や儀礼用の道具が登場してきますが、それまでは石をメインの素材として使っていました。
もちろん生活にも石は使われていて、皿やすり鉢、まな板などに加工されていました。現在でも石臼はそば粉を作るときなどに活用されたりしていますね。
石ばかりを加工するのではなく、石を扱うための専用の道具も登場してきます。
先ほども出したスリングショットやパチンコ以外にも、シーソーの原理で巨大な石を投げる投石機も開発され、大砲の弾としても石が活用されるようになりました。
ファンタジーではダンジョンなどの坂道で上から真ん丸な巨大な石がゴロゴロと転がってくる、ローリングストーンといったトラップがあります。
こうした石を加工する手間や、石のサイズに合わせた通路の幅と坂という角度をつくるとなると、とてつもなく高度なトラップになります。
現実でも、ファンタジーでも石がとんでもない兵器になっています。
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人類の歴史と共にあった石というものは、武器に限らず建築や彫刻などの生活や文化を支える基礎とも言える物になっています。
こうしてみると、庭の駐車場に敷いてある砂利や、片隅においてある石畳みなどの風景も特別な物に感じてきますね。
今も昔も石というものは人間の生活の中に溶け込むように存在しています。
100回記念!
第1回が棍棒だったからね、それを思うと随分書いたなぁってなりますね。