第99回 突棒 猪八戒と言えばピンとくる
ちょっと間が空きました。
エターナルはしませんよ~
突棒
実は名前が沢山ある武器です。
書き出すとキリがないんですが、鈀、鉄鈀、月剣、作振などなど色々な文字を当てられます。
最近よく見かけるT字型の箒のような見た目をしており、尖端の横棒部分と柄の部分の先に沢山の鋲や錨のようなかぎ爪が取り付けられています。
呼び方で鈀となるとまさに猪八戒が持っている武器そのものを指すようになりますが、こちらはかぎ爪ではなく、四角っぽい突起が付いている描写になったりします。
これは元々が土をならしたり、種を植える浅い溝をつけたりするための農機具だったからですね。
突棒として日本に入ってきたのは室町時代とされています。
どうやら中国から持ち込まれていたようですので、起源は猪八戒が持つ武器である鈀から来ているのかもしれませんね。
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突棒は江戸時代に捕り物に使われる三道具「袖溺」「刺叉」と並んで扱われています。
袖溺が相手の衣類を引っかけて足を止めさせ、刺叉が二股に分かれた先端で相手を押さえつけ、突棒の先端部分の横棒を押し付けるようにして相手を拘束するように使ったりします。
先端部分がかぎ爪状の突起と、横棒になっているため、他の捕り物道具よりも相手の武器を受け止めたりするように扱いやすくなっています。
もちろん、袖溺のようにかぎ爪や鋲を相手の衣服や体に引っかけて引き倒す事も出来ます。
他の捕り物道具に比べて先端部分が大きいため、掲げて持つ事で相手へ威圧感を与える効果もあります。
こうして武器を見せつける事で相手の闘争心や逃走する気持ちを削ぎ落して、降伏させるような心理的な攻撃になります。
場合によっては市中引き回しなどの刑を執行するときに、罪人を無理やり歩かせたりする時にも使われたとか……
こうした武器は基本的に棒術や槍術の技術に近い扱い方があったと考えられますが、現在では突棒を使った捕り物術は失われてしまっているようです。
極めて少数の流派の一部に突棒の技術が残されているようですが、失伝しているとも考えられているようです。
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捕り物という怪我こそさせるものの、相手の命を奪う事なく身柄を押さえ、裁きを受けさせるために欠かせない技術。
当然そこには、捕り物をする役人にも、罪もない町人に被害を及ぼさない防衛の考え方があります。
現在では逮捕術というカテゴリーとして、警察や警備隊、警備会社に技術が伝わっています。
捕り物と違うのは、犯人さえも怪我をさせないという発想と、そのために圧倒的な優位を作り出すという戦いの前の組織作りと徹底した訓練から考えて実戦してきたという点です。
命があれば、怪我は良しと考えていた捕り物術。
突棒のように突起だらけの道具が各番所に常備されていた理由もなっとくできますね。
捕らえよ!
こんなん押し付けられたら、即ギブアップ!