第97回 フットマンズ・フレイル 回転の力
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100回が見えて来た!?
番外編とか入れたら、とっくに超えてるんだけどね。
フレイル
フットマンズ・フレイル
フレイルとは広い意味でいうと、長い棒の先に鎖や紐をとりつけて、その先端に短い棒や鉄球などを取り付けた武器です。
もう少し細かい事を言うと、長い棒と短い棒の組み合わせのことをフレイルと言ったりします。
これはフレイルを訳すと「多節根」とか「連節棍棒」とかになるからですね。
極端な話、ヌンチャクだってフレイルのカテゴリーに入りそうな武器になります。
今回とりあげるフットマンズ・フレイルは長い棒と短い棒の組み合わせで作られており、つなぎ目の鎖は比較的短く作られています。
中には鉄の輪を数個だけとりつけた程度の10センチに満たない短い鎖だったりします。
使われていたのはヨーロッパ。
柄となる長い棒は150~200センチ、尖端の短い棒は20~40センチ程度。
使い手の体格や腕力などで、調整されて作られていたと考えられます。
長い棒を勢いよく振り回すと、尖端には遠心力が働き強い力を生み出します。
鎖を介して先端の短い棒も振り回されますが、長い棒が持っている力が鎖を通して短い棒に伝わり、鎖を通して振り回される短い棒に力が集中するばかりか、この短い棒にも遠心力が加算されています。
つまり、木の棒という材質にも関わらず金属の鎧をひしゃげさせるほどの威力を発揮する事ができました。
振り回す時の回転の力を味方につけて振る武器なので、ちゃんと練習すればマッチョマンな力持ちでなくても、必殺の一撃を繰り出す事ができます。
今日はこの木製の武器、フットマンズ・フレイルを見て行きましょう。
◇
~避けられない!?~
使い方は実にシンプルです。思いっきり振ってぶつけてやるだけです。
普通のメイスや剣などと違い、尖端部分が鎖で引っ張られて飛んでくるので、その軌道は非常に見切りにくい物になります。
当然、戦場で使う場合はプレートメイルなどの重装備をしているわけですから、カンフー映画のようにサッとしゃがんだり、転がったり、飛び上がったりと軽やかな回避行動は出来ません。
フットマンズ・フレイルの特徴の1つは長い事ですから、槍でも持っていなければ間合いの外から必殺の一撃を繰り返し打ち出されてしまいますので、せっかくのフルプレートアーマーもぼっこぼこに凹まされてしまうでしょう。
もちろん、無理に先端を打ち付ける必要はありません、柄の部分で直接殴打することも十分に有効です。
この衝撃で先端部分が回転するので、柄の部分で頭を殴打したら、尖端が回転してもう一発プレゼントしすることができます。しかも、後頭部や側頭部などの脳みそが揺れやすい場所に直撃です。
フルプレートメイルと呼ばれる全身装甲の騎士たちの中にはバックラーというお鍋の蓋程度の小さい盾を装備している場合がありました。
この小さな盾は結構優秀で、盾としての機能ばかりか、相手の顔の前に掲げて目くらましすることも、直接相手を殴りつけて隙を作る事にも使えます。
装甲を簡単にひしゃげさせるメイスも、このバックラーで柄の部分を押さえられてしまうと、途端に威力が減衰します。
ですが、フットマンズ・フレイルは止められません。例えバックラーで柄の部分を止められても先端が相手を襲います。先端部分を止めようにも、鎖で引っ張られているので人間の目で捉えて止める事は至難の業です。
やろうと思えば、足元を狙って転倒させることもできたかもしれませんが、相手がフルプレートアーマーという超重量級なので、木製のフレイルでは折れてしまうでしょう。
軽い木製という点を活用して、回避不可能な殴打を連続して繰り出す事が強そうです。
◇
戦場でフットマンズ・フレイルを持っていたのは、下級の従者でした。
フルプレートを着込む騎士でもなく、馬に乗るわけでもなく、戦いの訓練を受けたエキスパートでもない、そんな人たちがフルプレートアーマーを着込んだ敵兵にもなんとか対抗するために使った武器です。
下級の従者なので、装備にお金はかけられない。戦いの訓練をする時間も短いため、使いやすい武器が必要。
戦場に出る経験もあまりないため、敵兵からはある程度の距離を取れる長柄の武器でないと、ガッチガチに防具を固めた敵兵のロングソートやメイスの餌食になってしまいます。
こうした条件を見事にクリアした、低予算でありながら十分な威力があり、長物のフットマンズ・フレイル。
名前にも「フットマン」という馬に乗らない者という意味の用語が含まれていますね。
アチョ―!
国が違うけど、同じように発展する武器ってあるんですよね。
アジア圏でもフレイル的な武器はあります。