第95回 鉄拳 鍛え上げた拳ではなくて
鉄拳
実は鉄拳は忍者道具です。
鍛え上げて鉄のようになった己の拳でもなくて、どこかの格闘ゲームでもなくて、大砲や銃を仕込んである義手や小手でもないんです。
言ってしまえば、メリケンサックやナックルダスターの仲間なんですね。
硬い鉄で作られた少し横長な楕円を描く鉄の輪で、指を4本通して握り込めるようなサイズになっています。
メリケンサックのようにピッタリと指にはまる、というよりは余裕をもって人差し指から小指で握り込んで使います。
相手を殴り飛ばす部分は漢字の「山」のように鋭い突起が3つ並んでいます。
そのうち真ん中の突起は特に大きくて、殴った時の衝撃がこの1点に集中するように作られています。
こんなんで後頭部や脊髄を殴りつけられたら、一発で気絶ですね。
まさに、鍛え上げた鉄拳で殴られたかのような……
ん? いや、すみません、鉄拳で殴ってましたね。
今回は知られざる忍者道具、鉄拳を見て行きましょう。
◇
~疑問が残る使い方~
気になる点はあちこちの解説も見ながらになりますが、気になる点は2点あります。
1つ目は隠し方、2つ目は対武器の受け方です。
まず、隠し方ですが、メリケンサックに比べて、余裕があるのでクルリと手の内側に鉄拳を回す事ができます。
こうすると、手と手首の内側に鉄拳がくるので、相対してみると素手で構えているかのように見せる事ができます。
一度殴りつけたあと、こうして隠す事で、素手で殴られたと相手が勘違いするそうですが……
せっかく先制で殴りつけられるチャンスがあるのなら、武器を見られてもいいので相手を無力化するほどの攻撃を仕掛けるほうが安全です。
わざわざ素手に見せかけるメリットが薄いような印象を受けてしまいます。
素手に見せかけるとすれば、相手に姿を見られている時になりますが、サイズ的に例えると事務所に置いてある穴あけパンチみたいなサイズです。
確実に隠すにしては、ちょっと大きいような気がしてきますね。
反対の腕を正面に伸ばして、鉄拳を持つ手を死角に入れる構えをとるなど、工夫が必要になってきます。
懐やふんどしの中に隠すなら分かりますが、手で隠すにしては少し面倒です。
暗闇に乗じて後ろから、後頭部に全力の一撃。
倒れた相手にとどめとばかりに振り下ろして、頭蓋や脊髄に重症を負わせるような使い方が妥当に思います。
2つ目の対武器ですが、握った状態だと相手の刃を受け止めたり、弾き返したりできるそうです。
これは、正直に言うと、滅茶苦茶怖いです。
いくら鉄拳をにぎっているとはいえ、感覚的にはパンチするように使う武器ですからね。
振り下ろされる刀に向かって真正面から殴りつけるか、フックのように横なぎに打つことになります。
対刃の作業用軍手の上に砂鉄入りの強化グローブを付けてたとしても自分は刃物を殴りつける勇気は持っていません。
鉄拳で相手の刃物を何とかしなきゃならないという状況になっている時点で「詰み」となっているようにしか思えません。
◇
結局の所、素手にみせかけるとか、対刃物の使い方とかはネタのように思えてしまうピーターです。
ですが、鉄拳そのものはその名の通り鉄の塊です。
握って、正拳を叩き込めば人の骨程度は簡単に砕くことができます。
手の内側に隠すとか、刃物を払うとか、そんな絵になる事を考えなくてもよいのです。
一般人に紛れる、ごくごく普通の服装をしておいて、どこかで一杯ひっかけてきたかのようにほろ酔い気分で歩くふりをしてターゲットを尾行。
人気のない暗がりに行ったところで、鉄拳を取り出して後頭部に必殺の一撃。
闇に紛れる服装をして、こっそりターゲットの屋敷に侵入。物置や押入れの中など人が隠れられるスペースにでも隠れておきましょう。
ターゲットが来たところで、鉄拳を握り飛び出して。
顔の中心や喉などに一撃入れて、その隙に首の関節を極めてしまえば、後はそのまま尋問タイム突入です。
捉えた相手の目の前で、鉄拳を使って石でも砕いてから「情報を吐かないと、次はお前がこうなる番だ」と脅してあげるのも効果的。
こうやって考えると、すっごい物騒な武器だと思えてきますね。
やっちゃだめですよ、平和的利用からどんどん遠くなっていく武器の鉄拳でした。
鉄拳制裁!
この鉄拳で制裁されたら、閻魔大王様とお話しできるかも。
使っちゃだめですよなんですが……
通販で売ってます。
最近は材質も色々あるんですねぇ、鉄じゃないから錆びの心配もあまりないです。