第94回 南蛮棒 とっつかまえたら離さない
南蛮棒
長物の武器だったり、特殊な武器だったり、分類にちょっと困ったりする事もあるのが南蛮棒です。
大きな括りでは「マン・キャッチャー」と呼ばれるような、人間の動きを制限したり、取り押さえたりするときに使われる武器のカテゴリーに入ります。
長さは2メートルくらいで、尖端にはトラバサミみたいなトゲトゲした開閉式の鉄の棒が付いていて、ここに鉄の棒やバネ、縄や鉄線が組み込まれています。
カラクリ仕掛けになっていて、柄の所に持ち手を柄にそってスライドさせる事でマジックハンドのように開いたり閉じたりさせることが出来るようになっています。
柄の中が空になっており、そこに鉄線や縄を通して、手元のトリガーで先端の金具を操作できるという見事なカラクリです。
武器としてよりも当時の技術を知る資料という側面が現代では強いかもしれません。
いくつかタイプもあるようで、尖端の金具が閉じないように支えている掛け金という留め具にカラクリが繋がっているタイプもあります。
これだと、手元で操作した時に留め具が外れて、バネの力で一気に閉じるようになっています。
本当にトラバサミそのまんまですね。
南蛮棒の先端はトゲトゲになっているので、これに挟まれた相手は激痛で簡単に抜け出す事はできません。
自分の肉が引きちぎられる事も覚悟すれば抜け出せるでしょうが、そこまで根性がある人間はそうそういません。
例え逃げても、血を流しながら走る事になってしまいますから、悪目立ちするので、すぐに見つかってしまいますからね。
使われていたのは江戸時代。
罪を犯した人を取り押さえる捕り物に使われていたとされていますが、それほど普及していなかったようです。
こうしたカラクリが仕込まれた物は、どうしても可動部が弱く、数回使うとカラクリ部分が緩んだり破損したりして効果が半減してしまいます。
カラクリが仕込む手間がかかる分、使われるパーツも増えるので、手間も代金も高くなってしまうので、そりゃあ普及しませんよね。
南蛮棒そのものが登場したのも江戸時代だったので、戦争に使うという発想ではなく、街中で使う事を前提としていたアイテムです。
鎧武者が相手だとしたら、南蛮棒で押さえつけようとしても槍を突き込まれるか、矢をかけられるかになってしまいますから、比較的平和な時代を感じさせてくれます。
よくよく見ると先端もトゲになっていますが、内臓に届くような物ではありません。
殺傷よりも、拘束を目的としている事がうかがえます。
安土桃山時代に水軍が使っていた装備に先端に鋭い棘や刃が付いた槍のような物があり、これが原型とされている説があります。
こちらは殺傷が目的なので、グッサリ、ザックリ刺さるような形に作られていたり、刃がつけられていたそうです。
マジックハンド!
マン・キャッチャーってシリーズも沢山あります。
南蛮棒じゃないけど、最近でも学校とか銀行とかに近い原理の防護武器が置いてあったりする。
皆さんいつもありがとうです!