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第90回 熊手 掃除用品や縁起物じゃなくてね

 あちこちで記述は見かけるんですが、実物が扱われている所の情報はあんまりなかったりする。

熊手


 秋に神社や公園で、竹ぼうきとセットにして落ち葉をあつめるときに使われる、竹の鈎爪を団扇うちわの骨組みのように組み合わせた掃除道具。

 もしくは、お正月に福を集めるという縁起物として、飾りつけがされたものを神棚に置いたりする。

 そう、あの熊手です。


 この熊手が平安時代~江戸時代にかけて、農具から発展した武器として活躍していました。

 しかも街中から平地、海や城内に至るまで、様々な場所で目的を変えながら扱われており、歴史に登場している期間は1000年を超える程になっています。


 3メートル程度の木で作られた柄の先端に、金属で作られた鋭い3~4本に分かれた鈎爪が取り付けられており。この鈎爪の形状が熊の手のように見えた事から、熊手と呼ばれていました。


 鈎爪の下に1本の鎖が取り付けられている形状が有名なタイプです。この鎖が取り付けられたのは鎌倉時代の頃の話です。

 鎖は長柄の武器の宿命ともいえる先端の切り落としの対策であり、鎖を巻き付けておけば木の柄を切り落とされにくくなります。


 今回はこの便利な熊手を見て行きましょう。





~使い方~

 鈎爪と鎖が熊手の攻撃手段ですが、引っかけたり、絡めとったりという致命傷を与えるには弱い効果です。

 この引っかけるという動きは剣や槍にはできず、相手を捕らえる時にはその本領が発揮されます。


 特に戦場では相手が構築した防護壁を引き倒すか、上に引っかけて乗り越える足場にすることができました。

 もちろん袖溺とも同様に馬上の兵を引きずり降ろしたり、武将を捕らえたりする事もできました。


 剣や槍が相手の体に突き刺されば致命傷ですが、熊手の鋭い鈎爪なら突き刺さっても怪我にはなりますが、致命傷にはいたりません。


 海の上では袖溺と同じように活躍します。

 相手の船のへりにかけて引き寄せて飛び移れるようにしたり、相手の服や体に引っかけて水面に叩き落す、落とされた味方は引き上げるなど、攻防どちらでもオッケーの働きをします。


 街中では捕り物の道具として扱われており、これも相手の衣類や体に鈎爪をひっかけて引き倒して捕らえるという事はもちろん。鎖を活用して、相手の武器や体を絡めとったりすることもできました。


 熊手の柄が3メートル、鎖も3メートル。大きく振る事が出来れば鎖は6メートルまで届くので、離れた相手も捕らえる事ができます。


 先端が金属の鈎爪、鎖もついているということで、相手が剣や短刀をもっていても十分に対応することができました。





~捕り物の捕具ほぐ

 悪人や抵抗する人を取り押さえるための道具を捕具と言い、刺股さすまた突棒つくぼう袖溺そでがらみが江戸時代の捕具の代表格として三つ道具と呼ばれたりしています。


 熊手はこの三つ道具に並ぶほどの道具として名前が挙がっています。

 三つ道具同様に相手が刃物などの凶器を持っていても、それを無力化することができます。


 三つ道具との大きな違いは、熊手は鎖を持っているということです。


 この鎖があることで、鎖武器と同じようにも使うことができます。

 鎖は以前にもご紹介した微塵や鎖鎌のように、熟達することによって様々な扱い方ができるようになります。


 簡易的に縛り上げる事も出来ますし、積極的に武器を奪いに行く事もできます。

 例え、こちらの方が人数が少なくとも、本体以外に鎖があるということは、振り回して間合いをとることも、鎖と鈎爪で1人連携攻撃を仕掛ける事もできます。


 捕り物道具としては、三つ道具よりも優秀な印象も受けますが……

 前述したように、鎖というのは非常に扱いが難しく、熟達するまでにかなりの時間を要します。

 そして、鎖を振って使う時にはかなり広い空間が無いとあちこちにぶつかってしまいますね。


 狭い街中で走り回るとき、人混みの中で使う時、鎖がかえって邪魔になる瞬間はあったはずです。


 使えるようになるまでに訓練が三つ道具と比べてずっと大変、かつ街中では使う事に向かない場所が多いとなると、捕具としては活用できる場所が限定されてきてしまいます。


 鎖で相手の武器を吹き飛ばして、鈎爪を引っかけて引き倒す。鎖を足に絡みつかせて逃げられないようにする。

 カッコいいシーンに見えてきます。


 時代劇に取り入れられてもいいような印象がありますが、鈎爪が体に食い込む痛々しいシーンになっていますから、映像にするにはちょっと怖いですね。


 実践で相手に回すと鎖と鈎爪が遠距離から襲ってくるわけですから、攻略は非常に難しい。しかも負けたとしたら、そのまま拘束されて処遇はお上の方々次第となってしまいます。

 自分が使おうとすると、鎖を本体に巻き付けている時以外は、あちこちに鎖が引っかかるので扱いが難しい。


 1000年に渡るほど使われているので、その強さは確かですが、前線に出てくるイメージがあまりないのは、扱いの難しさに加えて、効果的に扱う場所が限定されているからかもしれません。

熊さん!


 致命傷を与える武器じゃないですからね、戦場には道具として持って行かれる事が多かったと思います。


 鈎爪部分は全長と比べると意外と小さいので、鎖がついているにも関わらず比較的軽量です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 地味だけど便利な武器ですね。 農村から駆り立てられた兵士が持ってそう。そのまますぐ農作業に戻れる感じ。
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