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第88回 バグ・ナク 虎の名を持つ握り武器

バグ・ナク、バグ・ナウ


 発音の仕方などで微妙に呼び方が違います。「ハク」ではなく、濁点がついた発音に近い「バグ」となります。

 この「バグ」という部分が虎という意味があり、後半の「ナク」という部分が爪という意味を持っています。


 バグ・ナクとは読んでそのまま、虎の爪という意味ですね。

 一本の鉄の棒から、ネコ科の動物の爪を思わせる弧を描いて先端が鋭く尖った刃が複数伸びています。この爪の本数は4~5本が多いのですが、最近になって演出などで作られた物などは3本という小型になっているタイプもあります。


 この爪の根元、鉄の棒の両端には鉄の輪が固定されています。鉄の輪に人差し指と小指を通して、握り込むと、それぞれの指の間から爪が伸びた状態になります。

 結構目立つように思いますが、手を握り込まず、手のひらを見せなければ意外と分からない状態で装着したまま持ち運ぶ事もできます。


 見た目的にインパクトがあり、拳に取り付ける武器なのにも関わらず、打撃ではなく斬撃を目的としているという特殊な武器です。


 使われていたのは16世紀~18世紀のインド周辺、盗賊や暗殺者など物騒な事を仕事とするような連中が扱っていたとされています。


 今回はこの危険な握り武器を見て行きましょう。





~猫の爪~

 虎を始めネコ科の動物の爪というのは一本一本が弧を描いて、尖端が鋭くなっています。この爪の切れ味は、ネコが体全体を使って強い瞬発力を発揮する運動も合わせると、ナイフのような切れ味を発揮します。

 また牙も同じような構造をしており、尖端が鋭く口の奥に向かうように弧を描いて伸びています。


 この形状は引き裂く事に特化しており、刺さった所から引くように力がかかるとザックリ切れます。

 猫に噛まれたり、爪を立てられたりしたとき、痛みにびっくりして勢いよく手を引っ張ってしまうと筋状にザックリ切られてしまいます。


 このときに牙だと2本並んだ傷が、爪だと2~4本並んだ傷が付く事があります。

 家にいる猫さんくらいなら、絆創膏とかガーゼで保護できるくらいの深さですが、大型の虎ともなると骨が見えるほど深々と切れてしまう事も珍しくありません。


 猫さん達は肉食なので、こんな形に爪や牙でお肉をカットして食べやすくしていたんですね。

 当然獲物を獲るときにも、鋭い爪や牙を相手の急所となる首筋などに突き立てて、獲物に致命傷を与えます。

 食事の道具でもあり、狩りのための必殺技でもあるんですね。


 切るという構造ですが、使い方は引き裂くという使い方のため、切られた断面は複雑になります。

 カッターで段ボールを切った時と、手で引き裂いた時では断面の状態が大きく異なりますね。ガムテープで再度つなげようとしても、カッターで切った時の方がキレイに折れにくいような形に復元しやすいですね。

 手で引き裂いた方はなかなかキレイにくっつかないですね。


 人体でも同じことで、切られるより引き裂かれた傷の方が治りが遅くなります。傷つけられる神経や細胞の数も多くなるため、痛みもより強い物になります。

 切られた時というのは、痛みは遅れてきますが、引き裂かれた時の痛みは非常に強いため、そちらに意識が向いてしまうという事にもなります。





~バグ・ナクによる暗殺・闘争~

 猫の爪の恐ろしさは良く分かりました。バグ・ナクも猫の爪、いや虎の爪で引き裂かれたような傷を与える事ができます。

 ですが、これだけで致命傷というのは中々難しいと感じます。人間の筋力と瞬発力では相手の急所を狙おうにも、咄嗟に体を捻ったり、腕や手で急所をかばわれてしまうと、首筋などにハグ・ナクは届かなくなってしまいます。


 バグ・ナクは隠し武器ですので、見せびらかしては使いません。不意打ちこそがその真髄です。

 急に腕を掴まれたと思ったら、すぐに治療が必要な程の深い傷が数本がっつり付けられている。こんな状態になってしまえば、抵抗できません、治療する余裕を与えなければ相手は段々弱っていきます。


 暗殺の場合でも手に隠した状態で相手に近づきます。

 そのまま、親愛の気持ちを行動に込めて、思いっきり抱き着いてみましょう。最近は世界的な感染症が原因でこうしたハグとか握手とかの行動が一気に縮小されていますが、世界的にみれば愛情や親愛の表現に男女問わずハグは珍しくありません。

 大チャンス到来です、背中でも腹でも首でも、バグ・ナクで滅多切りにしてやりましょう。


 バグ・ナクで先制攻撃をした後はナイフや剣などに持ち替えて、致命傷を狙ったり、止めを刺す事を脅しとして情報を聞き出したり、物品を奪ったりするということもできます。


 こうした強盗や暗殺だけでなく、武術の試合としてハグ・ナクを装備した戦士同士の戦いが行われていたという記録も残っています。

 インドの武術も複雑な歴史があり、宗教的・文化的な影響を受けて複雑怪奇な進化を遂げた派閥もあるため、歴史の表舞台に出てこない所でもハグ・ナクが使われていたとしてもおかしくありません。


 宗教的な部分をとりあげると、宗教の対立を切っ掛けに起きた闘争や虐殺があった時にヒンドゥー教徒が武装や護身を目的として、児童たちにバグ・ナクを持たせていた事もあったようです。

引っかき傷!


 猫様最強の技は「キャットドリル」ですね。


 噛みついて、両前足の爪を突き立てる!

 両後ろ脚の爪を立ててターゲットを蹴りつけながら全身を回転!

 その反動を逃さず、牙と爪に全身の瞬発力を集中させて!

 獲物に後ろ足で蹴りつけた傷を残しながら、牙と前足の爪でらせん状に切り裂く!


 キレイに喰らうと、腕の皮膚全体がシュレッダーされたようにギッタギタになります。


 腕を引くと、ズッタズタに引き裂かれますから、押し込むとダメージを軽減できます。

 猫様の牙と爪はサメの歯と同じですぜ。引き抜こうとすると大ダメージ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ◎ ビーターさんが、流行り廃れなどの情報をお持ちならぜひ知りたいです。 「バグ・ナク」の記事で、ふと、とあるプッシュ・ダガーナイフを思い出しました。 『ダドリーの駒鳥』 この仲間…
[良い点] 暗殺にも使えそうな武器ですねー
[一言] 猫様、大きな猫様、なかなかエゲツないですね。 実際、猫様がらみの傷は、化膿しちゃうと結構厄介みたいです。
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