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「体内の魔力と繋がっていく感覚がわかりますか?」
「…これが、そうなのでしょうか」
「違和感があるなら、それでいいと思います」
四肢を通して脳と繋がる感覚。視野が霞む。その視野はアリムレイが見下ろす景色が被る。
私がロボットに乗っている。
アニメの世界だと思っていた。
少年は、ロボットのパイロットに憧れるモノだが、私もその例に漏れない。
私がロボットのパイロット!!
脈打つ心臓の鼓動が私の全身が震わせる。
これが高揚というものか。
「……これがアリムレイの視線…」
ロボットとの一体感に衝撃を受ける。
「アリムレイが人型の理由がコレです。自分の体のように動かすことがで…」
アリューが途中で説明を止めたのは、アリムレイの起動が終了したためだ。
「あっれー?」
私の膝の上に鎮座したアリューが慌てて、画面を展開させる。
「私が壊してしまったのですか?」
「ん~?この『リジョン』を見て貰えますか?」
「この画面『リジョン』っていうのですか」
言われるがまま、リジョンを覗き込む。
そこには『強制終了』と書かれていた。
「これはリンクが切れたときに表示されます。気を失ったとき、命を失ったときにリンクが切れます」
「慣れてないからかな?」
「いや、初心者でも一度リンクしてしまえば、あまり途切れることはないのですけど」
この世界の住人ではないからだろうか。
「ちょっと失礼しますね」
チョークのようなモノを私の額に当てる。
「魔力296…普通の人より1.5倍近いのに…これは……」
「これは?」
「ただ単にセンスがないですね」
「泣いていいですか?」
「はい、いいと思います。ちょっと設定をいじれば動かすことはできると思いますけど…」
しげしげと沢山のリジョンを眺めながら。
「センスないなぁ、ほんと」
容赦なく、私にとどめを刺した。
よろよろとアリムレイから出てくると苦笑いでロゼウスが迎えてくれた。
「見てたよ。すぐリンクが切れたね」
「私が見たアニメだと、こういう場合だんだんと強くなって…」
「だといいね…うん、そういう希望に縋るのも大事だと思うよ」
憐れんでいるな、これは。
右の人差し指でポンポンと唇に触れる。
「イライラしてるね」
「え?」
「エミリちゃんが言っていたよ。人差し指で唇に触れたときはイライラしてる時だって」
「…知りませんでした」
ロゼウスは、アリムレイがよく見える地面に腰を下ろした。
そして、私に手招きをし、ロゼウスの隣に座るよう促された。
「実はね、僕もアリムレイの適正が悪くてねぇ」
私が座るのを確認し、ロゼウスはアリムレイを眺めながら、口を開いた。
「いや、起動しただけ君の方が優秀かもしれないなぁ。僕はうんともすんとも反応しなかった」
自分より下がいるという安心感、そして、そんな考えが齎す自分への嫌悪感がせめぎ合う。
「今は?」
「センスはないがね、動かせるようになったよ。君も動かせるようになるさ」
「動かせたのですね」
「あぁ。そんな僕からのアドバイスは」
一旦言葉を切って、アリムレイから私へと視線を移す。
「アリムレイに愛情をもって接するべきかな」
「機械に愛情?」
「確かに機械ではあるさ。でも、昔からこの世界では万物には魂が宿ってるって」
全てのモノに魂、か。
「私の世界にもありましたよ。付喪神っていうらしいです」
「要するにモノを大事にするようにという戒めなんだろうけど…意外に僕は魂が宿ってると思うよ」
「なぜです?」
「そう思ったほうがアリムレイが可愛く感じるだろ?」




