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異世界楽園  作者: 羽元樹
12/19

12

『いや、そんなわ……戯言に付き合うつもりはない!』

 今までの戦い。重要なのは間合い。

 薙刀の間合いに見えない線が浮かび上がる。

 仮面もその線が見えるのか、線のギリギリまで足を進めるが、それ以上は踏み込もうとしない。

『どういうことだ?貴様から歴戦の雰囲気を感じる』

「あたし、こう見えて50回は戦ってるからぁ。負けも経験してるもん」

 足が動いた。

 容赦なく境界の侵略者へ薙刀が振られる。

『……これは…戯言ではないということか』

「そうなるねぇ」

『だが、こちらの方が早い。負けることはない』

 カラン、と足元にナイフが落ちた。

 いつの間に投げたの…?

『勝てることも無さそうだけど。心臓を狙ったのにね』

「勝利宣言?あたしにはまだ変身を2回残し……あれ?」

 仮面は、脱兎のごとくあたしに背を向けて走り出した。

『戯言に付き合うつもりはない、と言った。さらばだ』

 その言葉を合図にナイフが再び人の形を作り出した。

「もぉ!もぉぉ!!アスタロトだって、もう少し戦ってくれたのにぃ!」

 かつての敵役と比較した相手はすでに姿はない。

 その代わり、3メートルほどのナイフが化けた黒い怪物が残された。

「セラフィムブレイド!」

 黒い怪物を横に凪ぐ。

 一歩下がった怪物は、薙刀を回避。すぐさま黒い両手をあたしに伸ばしてくる。

 その拳は空気を割く。

 薙刀の柄で弾き、一歩後退。

 強い!?

 薙刀を握りなおすと、怪物の足を狙う。

 意図を察したか、上へ飛躍。

「アスタロトは言ってたよ、上への回避は無策だって!方向転換ができないんだから!」

 怪物の落下位置から上へと薙刀を振り上げる。

 刹那、怪物はナイフに戻り、その隣を薙刀が軌道を描く。

「しまっ!?」

 ナイフが再び怪物に変身。がら空きになった脇腹を衝撃が襲う。

 効かない。効かないけど。

「重力って…動くと重みがわかるねぇ」

 全然戦える魔力はある…けど、体力がもたない。

 怪物の拳を薙刀で受け止める。

 動きがいちいち早い!

 確かにもう一段階変身すればどうってことないけど、変身するほど体力がもたない。

 あぁ、体力づくりしないと。

 怪物の拳が、薙刀をすり抜けてくる。

 体力を奪っていくように思えてくる。

「…使いたくないけどっ!」

 あたしは、言葉と共に後ろへ飛翔。

 薙刀をステッキに戻し、ステッキに魔力を込める。

「レインボーセラフィックレーザー!」

 ステッキから放たれる七色の光が怪物を貫く。

「あなたにも、美しい輝きを」

 怪物は光を帯びると。

 ピンク色の花びらとなって風と共に溶けていった。

「はぁ……」

 変身を解くと大きくため息。

「おなか…すいた……」

 あたしは、そのまま校庭に倒れ込んだ。

「あれだ……あたし、なんかお好み焼き食べたい。この際…関西でも…広島……」

 あたしの意識はそこで途切れた。


side:雪


 私は、ロゼウスと共に『アレン』の隣に立っていた。

 30分ほど意識を失っていた私は、そのまま仮眠室で休み、漆黒のアストレイの元を訪れた。

「なにをする気だい?まさかまた女の子になる?」

「はい、すこしだけ」

 再び魔法少女になった私は、アレンの胸に手を当てる。

 アレンの体が光を帯び、その光が収縮したのを確認すると、私もすぐさま変身を解除した。

「生き返らせることもできるのか?」

「無理です。私がしたのは、千切れた上半身と下半身を繋げ外傷を閉じただけです」

「そうか。すまないね」

 それだけを言って、私たちはしばし、沈黙の中に佇んだ。

 不思議と居心地の良い静寂に感じた。


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