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異世界楽園  作者: 羽元樹
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 言葉以上にテクノロジーに絶望感を覚えながら目の前の画面に四苦八苦する。

 困り果てるあたしに、視線が集まっているのに気づいた。

「え?なになに??」

「いや、困ってるエミリ、可愛いなぁと思って」

 リィレの言葉に、コクコクと頷くフォルミアとエレリア。

「わたくしたちの中で一番身長高いのに、一番幼く感じますね」

「それは、ガキっぽいと!?」

「いえいえ、そういうわけではなく、母性本能が刺激されるタイプだと」

「同い年の母性本能を刺激してるのぉ、あたし!?」

 なんだろう、こんなあたしをあたしは望んでいないよ!?

 あたしとリィレとフォルミアのやり取りに微笑むエレリア。

「でも、バカで可愛いんだけど、エミリ、歌だけは上手いのよ」

「う、その歌『だけ』ってなんなのぉ!?」

 抗議の意志を伝えると、次第に人が集まって来ているのに気づく。

 顔が熱を持っていくのを感じて、「はじめまして。転校生の方ですか?」と言葉をかけてくれたのに「は、はぁ」と愛想笑いで返すことしかできなかった。


 同級生のみんなは穏やかで、あたしたちの転入に大喜びをしていた。クラスメイトの少なさに寂しさを覚えていたのかもしれない。

 ただ、授業のシステムに慣れなかった。学年を区切る敷居が低いのもあって、休憩時間には中々の騒々しさを感じる。そして、授業中では隣の学年の先生の声が聞こえるのも気になる。しかしながら、授業の弊害にはならないシステムになっていた。

 授業は『リジョン』と呼ばれる何もない空間に表示される画面で行われる。先生の声は、そのリジョンが震えて聞こえるようになっている。リジョンの画面内にテキストが表示され、先生の声が解説してくれる。時折、問題が出題され、答えを書くよう促される。全員書き終えると、みんなの回答が表示される。まるでクイズ番組のように、その回答に〇が付く。

 慣れない。

 眠気が容赦なくあたしを襲う。

 言葉が拙いあたしを気遣ってか、エレリアが頻繁に声をかけてくれるのだが、あたしの睡眠の邪魔をしたくて仕方ないんじゃないかと勘繰りたくなる。

 せめてもの救いは、40分授業をし、15分休憩というタイムテーブル。15分は、あたしが睡魔に支配される時間となる。

「わたくし、食堂に行く前に寄り道をしてまいりますね」

 昼食の時間、突如フォルミアが立ち上がった。

「え?フォルちゃん?」

 みんなの間で付けられたあだ名でフォルミアを読んだが、すでにホールの入り口に立っていた。

 あたし、リィレ、フォルの三人で楽しいお食事と洒落こもうと思っていたので、食堂で待っている旨を伝えようと、フォルの後を追う。

「エミリ!?」

「食堂で待っててぇ」

 廊下に出ると、すでにフォルの姿はない。

 急いで食堂に向かうことはしない貴族のご令嬢がた。おかげで、あたしは人とぶつかることを気にせず、廊下を走ることができた。

 ふいに、廊下から見える景色に視線が動く。

 それは、朝、刃を交えた白銀の仮面がそこにあったからだ。

 周囲に人の気配がないことを確認し、あたしは魔法少女へと変身した。


「変身!マジカル・ミカエル!」


 光の粒子を散らし、あたしは白銀の仮面が立つ校庭へ体を躍らせる。

 仮面は周囲を警戒していたのか、すぐさまあたしの気配を察知。再びナイフを抜く。

 男性だと思い込んでいたけど、体のラインが少し丸みを帯びている。

『………』

 うん、女性だ。雪くんとは違う。

「女性にしては大きいけど……ううん、魔法かなぁ?見せる尺度を変えてるんでしょ?」

『…貴様はなんだ?』

 相変わらず機械を通した聞き取り辛い声。

「あたしは、魔法少女マジカル・ミカエル!天使の力で白く染まりなさい!」

『貴様を赤く染めることになるかも知れぬが、恨むなよ』

「恨みます!」

 即答。

 一瞬動きが止まったが、素早い動作でナイフがあたしを貫く。

 わけがない。

『くっ』

「魔法少女は徒手空拳で戦うものだとメタトロンは言ってた。あたしもそう思う!」

 魔法のステッキに魔力を込めると薙刀に変形。

「セラフィム・ブレイブ!」

『徒手空拳の意味を知っているのか!?』

「肩たたき券みたいなモノでしょ!?」

『肩たたき券で戦えると思うのか!』

「思うよ!ストレス社会と戦うお父さんへの回復魔法!それが肩たたき券!!」


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