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#19 ノインツェーン=サルー

 ケンは、自身が持つ伝説の剱、”合成シルバーソード”に宝玉を填める。ヤイバも同じように、ライトニングソードに宝玉を填める。ニンは、宝玉を使用せずに防衛の構えで、ハガネとアキラは兵士から”魔法の種”へ攻撃対象をシフト。フロールは、本に書かれた通りに魔法陣を使用して、慣れない詠唱を暗記中。シェイも滅多に使わない杖を準備している。

 外野の熊沢が、直前に魔法陣や詠唱、杖に関してシェイに聞いていた。「見た目とかではなく、そういうのを使うと安定とかするんですか?」

「普段使うものは、便利にするために手順が簡単になるだろ? それと一緒。杖や魔法陣が必須になると、魔法を準備するより、やりたいことを手作業で、さっさとしたほうが早いこともあるからな。それと、先例に倣うため。何かを省くと、失敗することも考えられるし、本に書かれていることを完全に真似るしかない」

 長期戦だったが、ここから短期戦で一気に決着を付ける。フロールが、本に書かれていたとおりに、意味をなさない文字の羅列を読み上げ、魔法陣が光り出し、”魔力救急圧縮魔法”を開始。

 シェイも杖を使って、”一方向連携魔法”を使用する。こちらは詠唱せずに目を瞑って、本に記載されていたことをイメージしながら、杖を振る。

 両者の魔法は、外見上は魔法陣が光っているぐらいしか、エフェクトはない。ブツブツと、詠唱を続けるフロールと、細かく杖を動かすシェイ。シェイは、魔法の種に魔力を吸収されないように、微調整をする。ただ、それが正しいかどうかも不鮮明で、直感を頼りに調整している。

 ケンは、宝玉の力で輝き、パワーが格段に上がった合成シルバーソードを振るい、次々と”魔法の種”の枝を断ち切る。ヤイバも同様に、パワーの上がったライトニングソードを振るって、雷のような力で枝を切る。その断面は、黒く焦げている。

「ケン。枝よりも、幹を集中的に狙っていくぞ」

「ヤイバ、同時に狙おう」

 ケンとヤイバは、一気に”魔法の種”の幹部分へと走り込む。

 すぐさま、フロールとシェイを守るために、アキラとハガネが盾となり、襲いかかる枝を剱で攻撃。多少のダメージは受けながらも、2人を守るために、先ほどまでとは異なり、移動を極力少なくし、抜け道を作らないように注意する。無防備な2人に攻撃が通れば、この作戦が失敗する。

 ケンは、走りながら合成シルバーソードを振り被り、

紫電一閃(しでんいっせん)

 合成シルバーソードから、光の稲妻のようなの攻撃を放ち、幹へ直撃。煙が上がる。透かさず、

雷電大文字(らいでんだいもんじ)

 ヤイバは、ライトニングソードが纏う雷を、大文字のように繰り出し、衝撃の音と煙があがり、幹には衝撃痕ができる。

 かなりのダメージを負ったのか、複数の枝が、今までよりも高速で、様々な方向から襲いかかる。

半輪白雷斬(はんりんはくらいざん)

 合成シルバーソードの先端から、半月状の白い刃が、白い雷を纏って、襲いかかる枝へ振るうと、鋭利な刃物のようにスパッと斬れ、ヤイバがさらなる攻撃のために、ライトニングソードを振り

雷電落弾斬(らいでんらくだんざん)

 ライトニングソードの先端から、雷を纏った弾が上へと放たれ、急降下して雷のように、幹へ直撃する。

 攻撃は通っているようだが、”魔法の種”をどのくらい削っているのか分からない。連発すると、その分戦闘できる時間が減ってしまう。今、さらなる追撃するかどうか躊躇していると、遠くで

火焰翔翺斬(かえんしょうこうざん)

 フェニックスソードに宝玉を一時的に填め込み、ニンが遠方から、長距離攻撃を仕掛け、炎の翼が現れ、まるで鳥のように高く飛んで滑空しながら、”魔法の種”に直撃すると、幹に火がつき燃え始める。

 次第に、炎の範囲が広がり、一部の枝が焼失していく。ヤイバとケンは、これを見逃さず追撃を開始。フロールとシェイを守るアキラが、周囲を見渡し、

「兵士の数が減ってる。見たところ、倒した兵士ぐらいしか見当たらないな」

「アキラ。油断するなよ。カイダ国王の所在が分からない今、何を仕掛けてくるか……」

 カイダ国王の姿を最後に見たのは、シェイ達が最初に突入したときだ。機関室の扉と壁を破壊されて以降、姿を見ていない。

 魔法の種へ攻撃を続けると、兵士が次々と消えていく。このまま決着まで、全力で挑むなか、足場が揺れ始め

「崩壊か!?」

 機関室だと外が見えないため、ヤイバが臆測で叫んだ。アキラがすぐに外を確認し、

「船が動き始めた!」

 巨大な船が浮上し始めたのだ。アキラは次に、入口の方を確認するが、もう見えない。もしやと思ったが、ニンが走ってきて、

「船が動き始めたので、急いで全員、駆け込みました。一応、伝えるために」

「分かった。余計な心配しないように、俺から伝えておくから、防衛は任せたぞ」

 ニンを見送った、アキラは機関室へと戻ろうとしたとき、周囲の風景の変貌を目の当たりにする。ボロボロと、格納庫の壁や天井が崩れて消えていく。異世界を構築する、螢の魔力がかなり減ったということなのだろう。


 崩落する格納庫を見て、悠夏が心配そうに

「格納庫が崩落すると、空気とかってどうなるんですか……?」

 唯一、その回答を知っていた熊沢は、

「心配ないと思いますよ。異世界の範囲を縮めるだけで、船は球体に包まれた状態で保つって、シェイ君が」

「言うのは簡単ですけど……」

 とは言え、信じるしか無い。彼らに託すからこそ、私達が信じなければ。


 船が少しずつ前へと進み始める。4人の剱による攻撃と、フロールの吸収により、”魔法の種”の枝が消えていく。

「あと、もう少し。最後まで、気を抜かずに」

 ケンは、剱を握り直し、幹へ攻撃を一点集中。ヤイバも同様に。そろそろ体力の限界が近づいているけれど、ここで手を抜くわけにはいかない。

 ヤイバは雷撃(らいげき)を繰り出し、ケンは白雷斬(はくらいざん)を連発。他の技だと、もう連発ができなくなっており、コストの低い技を何度も当てる。何度も煙が上がり、視界を遮る。煙が晴れるのを待っている余裕は無いため、手を休めずに果敢に攻める。”果敢に”、とはいったものの、状況的には”無謀に”や”我武者羅に”という方が、合っているのかもしれないが……

 煙の中では攻撃が出来ないため、2人に任せ、後方でハガネは幹を観察していた。丁度、煙の上から僅かながら、幹が見えている。アキラも同じように、煙で2人の姿があまり見えなくなり、それを見ていた。

「枝が無くなって、こっちには攻撃が来なくなったけれど……、攻撃も出来なくなったな……」

 アキラから気の緩みを感じたハガネは、

「まだ終わってないぞ。”もしも”に備えろ」

「ちょっと休憩してただけ」

 アキラはすぐに集中し、視野を広げる。煙のどこから攻撃が来たとしても、フロールとシェイには当たらないように、守らなければ。

「アキラ。上、見ろ」

「幹が消えてる……」

 煙の上で少しだけ見えていた幹が消えていく。ケンとヤイバの攻撃の音が止み、煙が少しずつ晴れていくと、

 そこにはヤイバと、誰かを背負っているケンが、こちらへ歩いてくる。”魔法の種”の魔力を出し切ったようだ。

 それを見て安堵したアキラだが、

「最後まで、油断するなよ」

 ハガネの言うとおり、フロールとシェイの魔法がまだ進行中だ。再び、”魔法の種”が魔力を奪い取ると、暴走しかねない。気を抜くにはまだ早い。

 ケンが螢を連れて戻ってくると、ヤイバとともにその場に座り込む。ヤイバは、

「もう駄目。限界」

「これ以上は、流石に……」

 2人とも、伝説の剱が持つ力を振るったことにより、疲労困憊で、これ以上は動けないようだ。


To be continued…


『MOMENT・STARLIGHT』は次回で最終回。短期戦になると、代償は大きいけれども、集まったメンツが本気を出すと強いですね。とはいえ、そこまでしないと勝てない”魔法の種”による暴走。かなり強い敵でした。

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