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#18 アハツェーン=ルポ

 魔力を奪う魔法。過去に、魔力の吸収を特性とする相手と戦ったことはあっても、実際にそんな魔法が記載されているかは、分からない。記載されていても、理解できなければ使えないし、必要なモノが揃う保証も無い。手分けして探して、似たものをいくつか見つけては、副作用などのリスクも考え、保留にするか没にするか。ケン達が戦っているなか、早く見つけて短期戦に持ち込みたい。

 かなりの時間を費やし、悠夏が

「これはどうですか? ”魔力吸引”と、書いてますが」

 と、シェイに確認すると

「詠唱者が相手の魔力を吸い取る。リスクは、詠唱者の魔力が増幅し、許容量を超えると……」

 シェイはそこで読むのをやめた。

「超えるとどうなるんですか?」

 鐃警がなんとなく察しながらも、恐る恐る聞いてみると

「最悪、死ぬ。そう書いてある」

 シェイは、ストレートにそう言った。説明文は、かなり細かく表現されているが、読み上げたくは無い。目から出血とか、そういうレベルでもなさそうだ……。さらに、

「条件が第漆(だいなな)……」

「魔法によっては、条件が明記されていますが、”だいなな”とは、どのような条件ですか?」

 マックスが問うと、シェイが少し悩み

「”第七”なんちゃらっていう、長い名称があって、血縁によって階級が決まり、それを満たさないと使用できない……」

 “第七”の正式名称は、長くて憶えていない。過去に、そういう長い名称を覚えるような物好きがいたこともあったけれど、基本的に”第七”で伝わる。

「俺は使えない。フロールは使えるが……」

 正直、心配だ。でも、それくらいしか策が無い。

「これはどう?」

 そう言ったのは、志乃である。エナによる治療は終えており、エナも魔法の捜索を手伝っていた。志乃は、本のあるページを指差すと、エナが読み上げる。

「”魔力救急圧縮”。医療目的としており、魔力をコントロールできなくなった患者に対して、この魔法を詠唱すると、詠唱者(括弧)この場合は医者、または看護師を想定(括弧閉じ)が患者の魔力を吸収する。ただし、魔力をそのまま吸収すると、詠唱者の魔力が溢れる恐れがあるため、圧縮を行う。魔力圧縮魔法と救急系魔法を同時に行う」

「医療魔法って、安易に使えるんですか?」

 熊沢がシェイに確認すると

「俺も分からない……」

「えっ……? シェイ君が分からないんですか?」

 熊沢が驚くようなリアクションをするが、シェイは何も言わなかった。医療魔法の話になってすぐ、マックスが医療魔法に関して、索引から調べ

「医療魔法に関して、こちらに記載がありました。”対象患者の生命の危機を救うことを目的としており、緊急時の使用においては、階級を考慮しない。また、緊急性を重視し、処置による結果がいかなる場合であっても、詠唱者を処罰することはできない”」

「最後の一文は、詠唱者が処罰を恐れて動けない、ってことにならないように……ですかね?」

 おそらく、鐃警の推測通りだろう。懸命に救出しようとしたが、結果を伴わなかった場合、遺族や関係者から処罰を要求されたのでは、有事の際に見て見ぬ振りが増えてしまう。

 エナは、魔力救急圧縮魔法に関する説明の続きを読み上げ

「”詠唱には、補佐を推奨。相手の魔力がゼロになるため、一方向連携魔法を使用する必要がある”」

 悠夏がそれを聞いて、ページをパラパラと戻し

「”一方向連携魔法”の説明は、こっちの本にありました。”魔力を双方向連携ではなく、詠唱者の魔力を対象者へ指定の配分で譲与する。詠唱者の魔力が3分の1以下になると、この魔法は使用できなくなる”」

「龍淵島で、螢が俺にかけた魔法が、それだろう。そうなると……」

 シェイがフロールの方を見る。フロールはそれに気付いて

「シェイ君。何をすればいい?」

「”魔力救急圧縮魔法”を螢に対して。俺は、螢の魔力がゼロにならないように、かつ魔法の種に奪われないように……」

 口で言うのは簡単だ。本当にできるかはぶっつけ本番で頑張るしか無い。幸いなことに、2人とも魔力を節約しており、ある程度乱雑になっても立ち直るまでの余裕がある。それに、ケンとヤイバが宝玉の力での短期戦に移行し、さらにアキラとハガネも相手を兵士から魔法の種に変更し、今よりも、時間に対して魔力を削る量が増える。当然ながら、失敗は許されない。失敗すれば、この世界が崩壊するか、異世界侵攻が現実になる。

 フロールとシェイは、魔法の本を見てイメージする。少しずつ、2人の緊張が周囲にも伝わる。声をかけるべきだが、何と言えば良いだろうか。集中している2人にマイナスになっては、意味が無い。黙っていると、

「お待たせ。甘い物でも食べて、緊張の緩和にどう?」

 ミケロラがデザートの入った箱を持って、現れた。今までどこにいたのかと思えば、どうやら厨房のようだ。

「モンブランとショートケーキと、イチゴパフェ。あんまり種類は作れなかったけれど」

 箱の中には、食べやすい一口サイズで1人2個ぐらいは食べられる数があった。声をかけられたフロールとシェイは躊躇していると、戦闘中のヤイバがダッシュで

「俺は、モンブランを貰う」

 と言い、剱を右手で持ち、左手で小さなモンブランを()(さら)い、頬張りながら持ち場へ戻る。さらに、アキラも兵士を倒し、数を減ったのを確認して

「じゃあ、ケーキを」

 と、1つ食べて持ち場へ。シェイとフロールは、互いに顔を見合わせる。あともう一押しかなと感じたエナが、

「志乃ちゃんは、どれがいい?」

「ケーキかな」

 エナはイチゴケーキを志乃に渡すと、ミケロラがエナに

「お茶もあるから配ってもらえる?」

「わかった。そうしたら……、佐倉さん、手伝ってください」

 何やらケーキとお茶会が始まりそうだ。呼ばれた悠夏は、パフェを受けとり、お茶を出す準備へ。紅茶、緑茶、麦茶など……。一体どこから入手したのだろうか……

「はい。2人も食べて。頭を使うには、甘い物が良いから」

 ミケロラにそう言われ、フロールが先に笑顔でパフェを受けとる。シェイもそのあとに続き、同じ物を受けとる。

 当然ながら、兵士がお茶会を狙わない訳がなく、アキラ、ハガネが兵士の動きを見極め、上手く捌く。待機しているニンが戦うまでもなく、アキラとハガネだけで何とかなっているようだ。


To be continued…


良い感じに、それぞれのキャラにスポットが当たり、ストーリーも進みつつ、……次回で終わりそうにないですね。甘い物が欲しくなってきた……

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