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#17 ズィープツェーン=マジー

 戦闘は激化。ハガネとアキラが兵士を確実に倒し、双方ともに数を増やしていく。ヤイバは、ケンと共に”魔法の種”への攻撃を継続する。エナは、意識が朦朧としている志乃の手当を行い、悠夏と鐃警、マックス、熊沢がそばに付き添う。ニンはもしものときに備えて、志乃の近くで待機。いつでも戦える状況で、周りを警戒する。

 フロールは、シェイと合流。伝言で魔力をセーブすることについて、理由を聞いていた。

「シェイ君。どうして、魔法を節約しないといけないの……?」

「帰り道」

「……あっ、そっか」

 フロールは、言われて気付いたようだ。

「この世界は、螢の魔力が暴走して出来た空間……。だから、呼び込みは螢の魔法によるものだけど、帰りは螢の魔力が残ってないから……、俺たちの魔力が必要になる」

「でも、どんな魔法で?」

「螢に聞くしかないだろうな……。俺も何の魔法かは……」

 シェイも知らない魔法のようだ。空間を作るといった魔法なら知っているけれど、異世界を創造する魔法は知らない。

「もしかすると、新しい魔法の創造かもしれない。そうなると、余計に太刀打ちできないな……」

「魔法って、新しく作れるの?」

 フロールが驚いて、シェイはたとえとして

「呪詛石が、ある意味そうだった。細かい話はさておいて」

 呪われた魔力が染みついて生成された、呪詛石。その効果は、本人の意思とは無関係に、思った願いを強制的に叶えるまたは補佐するという、ありがた迷惑というか、もはや傍迷惑な代物だった。それまでには無かった効果の魔法であり、作ることはできるようだ。ただし、

「条件さえ揃えば、新しい魔法を生成できる。魔法は何かを変換させる力であり……」

 シェイの説明に、フロールが首を傾げる。シェイは説明の仕方を変え

「例えば、必要な具材を集めて、それを調理して、美味しい料理を作るのに似てるかな。調理が魔法で、美味しい料理が発動効果。材料は魔力とか諸々。レシピさえ分かれば、料理は作れるだろ? 魔法でも同じ。あと、得意不得意も」

「ってことは、新しい魔法は、新しい料理を作るレシピを考えるってこと?」

「そういうことだな。当然、失敗することもある。量を間違えたり、手順を間違えたり。一度完成しても、毎回レシピ通りにしないと使えない」

 異世界への召喚は、螢しか分からない。どれぐらいの魔力を消費し、どのように発動するのか。

「魔法の種を潰した後、螢の魔力はなくなる。そうなると、この異世界は完全に崩壊する」

「じゃあ、どうするの?」

「龍淵島で、螢がやった逆のことをする。魔力が底を尽きる前に、俺が螢に魔力を分けて、螢の魔法を持続させる。言うのは簡単なんだけどな……」

 シェイの考えによると、魔力がゼロになる前に、シェイが螢に魔力を支えるという。そうなると、フロールは疑問として

「ゼロになる前ということは、魔法の種は壊さないの?」

「魔法の種は壊す。だけど、魔力がゼロにならないといけない。矛盾してるけど、やるしかない。俺の魔法を魔法の種が使えないようにすれば、いいだけだからな……」

 シェイの言葉が、段々と重みが無くなってゆくように聞こえてきた。すると、戦闘中のヤイバが、黙っていられず、

「それ……無茶だろ?」

 こっちを見て言う余裕は無いが……。ケンも同じく、

「シェイ、代替案(だいたいあん)はないの?」 

 と気にかける。2人とも、長引く戦闘で、かなり汗でびしょびしょになっている。腕で拭っても、拭いきれない。目に入らないようにだけ気をつけつつ、攻撃を躱しては枝を切り落とす。

「代替案は……、この船だけでも維持できれば、なんとかなるかもしれない。たぶんだけど……」

 この状況で、確実なことは言えないし、分からない。希望的観測かもしれない。

「シェイ君。それって、どうやればいいの?」

「いや……、分からない。螢の魔力で作られた船だと思うから、他の人が維持するには、どうすればいいのか……」

 答えに困っていると、フロールが考えて思ってもみないことを発言する。

「うーん。盗むってのはどう?」

 シェイは、フロールの口から”盗む”という単語が出てきて、しばし困惑した。瞬きだけで、表情が硬直し言葉も出ず。

「だめ?」

 というフロールの言葉で、我に返り、

「いや……、考えもしなかった。消費することばかりで……。魔力を奪う方法があれば、長期戦にもならないし……」

 長期戦を前提とし、ケンやヤイバを始め、全員が全力ではなくある程度絞って戦っている。とはいえ、疲労の蓄積が徐々にあらわれ、最後まで戦い抜けるか不透明だ。短期戦で決められるのであれば、宝玉の力を使い、兵士への攻撃するよりも魔法の種への攻撃を集中し、魔力を一気に削ることが出来れば、結果的に兵士の数も減り、終熄まで早い。上手くいけばの話だが。

「魔力を奪う魔法は、ありそうだけど……」

「これで調べようよ」

 と、フロールが魔法で、呪文が記載された本を出した。分厚い本で、索引からの逆引きも骨が折れる。

「盗みの魔法で、対象は魔力……。本の数が多いな」

 すると、ケンが提案として

「それなら、待機組で手分けして探すのはどう? この世界なら、異なる言語でも理解できるから、もしかすれば力になれるかも。僕らは、このまま戦闘を継続するから」

 シェイとフロールは、ケンの案に賛同し、急いでみんなのいる場所へ走る。途中の兵士は、アキラとハガネが道をつくるように戦い、フロールとシェイは走るのみ。


「どうしたんですか? 急いで?」

 熊沢がふたりに気付き、そう言うと、フロールがすぐに12巻の魔法の呪文が記載された本を出し、

「手伝って」

「私達に出来ることであれば、お手伝いします」

 悠夏が本を一冊手に取り、開くと

「魔法の本……」

「みんな、読める?」

 マックス探偵も興味をもち、一冊手に取り

「話す言葉だけでは無く、どうやら文字も読めるみたいですね」

「なんて、便利で都合の良い世界だこと」

 鐃警がそんなふうに言うと、シェイが

「螢の語学力には感謝しないとな……」

「どういうことですか?」

 熊沢が理解できずに、意味を聞くと

「魔法による翻訳について、前に話したよな……。あれ、もしかして、そのときに熊沢はいなかった……?」

「聞いていれば、憶えてると思いますよ。もしかしたら、忘れてるかもしれませんが……」

 シェイも熊沢も、言ったのか言われたのか曖昧のようだ。シェイは、再度説明として、

「翻訳の魔法は、魔法をかける本人が知っている言葉同士であることが前提」

「なるほど。つまり……」

 マックスが試しに、螢の知らなさそうな言語で話すと、全員が聞き取れず

「なるほど。中国語やスペイン語、ロシア語とかは翻訳されないみたいですね」

「むしろ、何カ国語も分かる螢君って、何者?」

 鐃警が、螢の代わりにシェイへ問うと

「多分、日本語と英語と、俺らの言語と、ドイツ語とフランス語ができる少年」

「それ、所謂”天才少年”とか言われるやつじゃないですか……」

 鐃警が螢のことを羨ましそうに言うと、シェイは

「……普通なら、羨ましいよな」

 ぼそっと呟き、聞き取れなかった鐃警は「何か言いました?」と聞くが、シェイは「なんでもない」と答えた。


To be continued…


いろんな言語を理解出来る螢君は、本当に何者なんでしょう。

さて、魔力を削るのでは無く、奪う方向で考えることに。フロールが笑顔で簡単に言うので、シェイが硬直しましたけど。何気に、フロールが、解錠とか乱用とか、悪いことをいろいろとしてません?

それと、ミケロラの姿が見えないのですが……

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