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#11 エルフ=ソルダート

 龍淵島の灯台。上空の大きな船は、首長竜を捕獲し、灯台へ攻撃を仕掛けてきた。すでに、ケンが(つるぎ)で戦闘を開始している。相手は、白い仮面を付けた長身の男達。持っているのは、細く先端の尖ったレイピアである。周辺には、空間をまるでファスナーのようなもので開いた、ゲートが存在する。先ほどまでは、そんなものはなかった。次々と現れる仮面を付けた男達を、ケンとヤイバが相手する。刹那の歯車が使えるようになれば、螢とフロールは別の世界へ離脱でき、それぞれの世界へ帰還することができる。船からの攻撃は、フロールと螢が魔法で防ぐ。


 シェイはその場に居合わせたケン、ヤイバ、フロール、熊沢に対して、即伝達魔法を使用していた。龍淵島の灯台での出来事をシェイが見たままの映像を、それぞれ見ている。伝達は一瞬で、龍淵島の時の記憶を思い出すかどうかは、それぞれの問題である。フロールたちは、しばらく黙ったまま、頭の中を整理している。最初にヤイバが呟くように、

「龍淵島での記憶が無いのは、あの音のせいか……?」

「確か、光もあったよね?」

 ケンとヤイバの言う”音”と”光”。龍淵島から離脱する直前、鐘の音とそれと同時に耳鳴りのような高い音がした。白いフラッシュのような現象もあった。やはり、あれは攻撃だったのか。それまでは、憶えていた。もしも、もとの世界に戻ったときに、記憶が無くなったのであれば、龍淵島のことさえ憶えていないのではないか。

 フロールと熊沢も、当時のことを思い出したみたいだ。どうやら、キッカケを作ることに成功し、記憶が戻ったみたいだ。

 静まりかえると、外から騒がしい声が聞こえてきた。まだ朝早い時間なのだが……

 ハガネが黙って、扉を少し開き、外の様子を見ると、すぐに扉を閉じる。扉を施錠し、

「窓を全部閉めとけ! 早く!」

 ハガネが強く言い、それぞれ近くの窓を確認する。カーテンも鍵もされており、新たに施錠する必要はなかった。戸締まりの確認中、ヤイバはハガネに対して

「何が見えたんだ……?」

「兵士が出歩いていた。それも、列をなして。明らかに普通じゃなかった」

 それだけだと、ヤイバは納得しない。首を傾げて、扉の方へ近づこうとすると、ハガネが腕を掴み

「俺に、全部言わせる気か?」

 鋭く睨まれ、ようやくハガネが見た光景がどういったものか、感じ取った。おそらく、始まったのだろう……。殲滅が。ハガネが言葉を暈かし、曖昧にしているのは、ケンや他のメンバーの中に他人思いの人物がいた場合、助けようと外に飛び出す恐れがあるからだ。ハガネは、足手纏いになることはリスクに直結し、なるべく除外したい。助けることができず、見て見ぬ振りは、本人も苦渋ではあるだろうが、今は行動すべきでは無いと考えていた。それが正しいかどうかは分からない……。悪者になるのは、少なくとも自分だけでいい。他の人に責任はない。

「アキラ達を起こして、城に乗り込むぞ」

 ハガネがヤイバの背中を叩き、起こしてこいと指示して、ヤイバは何も言わずに起こしに行く。

「ケン。城内への潜入ルートは?」

 ハガネはケンを呼んで、城内の地図から侵入ルートを聞く。シェイも混ざり、

「相手に100%バレるけど、どこに何人いるかは分かる。それで、警備状況は明確に出来ると思う」

「それを使ったときに、相手へ漏洩する情報量は?」

 ハガネは魔法に関して詳細は聞かず、懸念事項だけを拾って確認する。

「使った本人の位置が、分かる人には分かるかと……」

 探索魔法を使えば、発動者から円形に広がり、その時間差や勘の良い人物は、方角が分かる。特に、兵士ならその辺りの勘や気配に敏感で、鋭い可能性が高い。場合によっては、細かな位置まで特定するかもしれない。それに、ここは異世界であり、常識がどこまで通用するか分からない。すでに螢の暴走した魔力により、物語が歪み始めている。

「絶対に相手に漏洩するのであれば、確実で詳細な情報がいい。誰がどこにいるかまで、調べることは?」

「知っている人物であれば……、おそらく。全く知らない人に関しては、判別することができない……。あくまでも、俺らの魔法は、自分自身の持つ記憶や経験を基にするから……」

「それで十分だ。螢と志乃の位置が分かれば、あとはこっちで兵士を引き取るから、残りを」

 ハガネの考えは、知っている人物の螢と志乃の位置を探り、勘づいた兵士達を、剱チームが何カ所かに散けて、騒動を起こす。混乱に生じて、志乃と螢の奪還を開始。

 ケンもハガネの作戦に賛同し、

「螢に関しては、シェイに任せるよ。もし、螢と志乃が全然違う場所にいた場合は」

「そのときは、志乃のところにフロールと熊沢が向かう。ただ、螢と国王が同じところにいた場合、側近がいるだろうし、俺ひとりだと対処できないから……」

「それなら、ケンが同行すればいい。他のメンバーとの兼ね合いにもよるが……。もうひとり同行するなら、ヤイバだろうな。2人は螢のことを知っているし……」

 ケンは必要以上のことを口出しせずに、ハガネが中心で作戦を立てる。この光景は、かなり珍しい。普段なら、ケンとアキラが中心になることが多い。理由としては、ハガネは単独行動が多く、足手纏いだと言って、あまり参加しないからだ。

 ヤイバと寝起きのアキラが合流し、組み分けを詳細に決める。

「城内の大広間付近は、アキラ。中庭をハガネ。回廊をニンとエナ。回廊は中庭が近いから、状況によってはハガネが2人を援護してくれよ。メインとなる螢の奪還チームは、シェイ、ケン、それと俺」

「志乃の奪還チームは、フロールと熊沢。2人だけだと、人手が足りないだろうから……」

 シェイは、名前の出ていないマックス達の方を見ると、

「戦闘はできないので、私と特課チームはそちらに」

 マックスは、鐃警と悠夏に「いいですよね?」と確認を取り、OKを貰った。特課としても、戦闘などできるはずがない。犯人との死闘があったとしても、兵士とか軍隊といった戦闘のプロを相手に、戦えるだろうか。しかも、相手は武装しており、こちらは武器がない。武器屋で購入したとしても、扱えるかどうかは、また別の話である。

 宮殿への突入に備え、各自が準備していると、ミケロラがサンドイッチとスクランブルエッグやサラダなどを用意し、

「はい。朝ご飯食べてから、ね」

 テーブルに並べられた朝食を、それぞれ自由に食し、少なくなると追加で、ホテルの朝食みたいに同じ物が出てくる。一体、どのくらい作ったのだろうか。洋食だけかと思いきや、焼き魚やご飯、海苔や梅干しも出てきた。

 おそらく、パンドラの筺に関して、あれこれやっている最中も、ミケロラは朝食を作っていたのだろう。


To be continued…


ついに次回、城内突入か。先週も今週もストックがなく、なんとか毎週更新に間に合った感じですね。

結末までの流れが見えてきたけれど、あと何話かかるのかな。なんとなく、去年の『龍淵島の財宝』の話数とかわらない気がしてきたな……

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