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#1 アインス=ルーイン・エンパイア

『紅頭巾』『エトワール・メディシン』『黒雲の剱』『メイズ・ラビリンス』のキャラが登場するクロスオーバー作品。昨年連載した『龍淵島の財宝』の続編です。

今作もよろしくお願いします。

 北暦1996年。ルーイン・エンパイア、つまり破滅の帝国と呼ばれる国があったそうだ。国王の名は、カイダ・ルクシオン。この国は、その国名通り、破滅への道を歩んでいた……。

 広い宮殿内にて、潜入した少年たちは、カイダ国王の側近を尾行して、扉越しに会話を盗聴していた。

 扉越しに聞こえるカイダ国王声は、国王とは思えぬ発言を繰り返し、

「国民なんぞ、ただの駒に過ぎぬ。最後まで搾り取れ」

 その言葉を聞いて、思わず扉を開けそうになると

「ケン、やめろ。今は状況確認が優先だ」

「アキラ、でも……」

「後だ。まず、ここが何処なのか知る必要がある。それに、何故ここにいるのかを探らないと」

 かっとなったケンを、アキラは冷静に落ち着かせ、隠密に宮殿を脱出した。2人とも(つるぎ)使いではあるが、こちらに来てからは、まだ使用していない。

 城下町は繁盛しており、肉や魚が新鮮な状態で売られている。流通網は発達しており、付近に港でもあるのだろうか。気になったのは、ヒト以外に獣の人々もいる。コスプレではあるまい。”獣人(じゅうじん)”と呼ばれるヒトであり、この国ではヒトも獣人も協力し合って暮らしている。

 ケンとアキラが城下町を歩いていると、遠くの店先で揉めているような声が聞こえた。

 店主は呆れたように

「駄目だ。駄目だ。そんな妙な硬貨や紙幣なんぞ、ウチはお金だと認めないね」

「何故ですか? 歴とした、金銭ですよ。日本円」

「円? 知らんな。ここの通貨は、ヘル。それ以外は無理だ」

 どうやらお客は、日本円で購入しようとしたところ、ここの通貨では無いため、支払いが出来ないようだ。店主はさらに

「あんた、異国の者だろ。そんな変な鎧なんかつけて」

「失敬な。僕は、純粋なロボットですよ。しかも、日本の警察ですからね」

 警察手帳を見せるが、店主は首を横に振った。客は、警視庁特課(とっか)所属の鐃警(どらけい)である。

「どうしたんですか?」

 ケンは、困っている人を見かけたら、声をかけずにはいられないため、店主と鐃警へ話を聞きに行った。アキラもケンの性格は知っているので、ついて行く。

「この客が、パンを1ヘル単位で値切りしてくるんだぜ。お金がないからって」

「ヘル?」

 ケンも知らない単位だ。推測でアキラが、

「まぁ、この国の通貨単位だろうな……」

「ヘル以外は知らねぇ」

 店主がパンを元の棚に戻そうとすると、ケンが何を思ったのか

「なら、僕が払います」

「おっ、おい!?」

 アキラがケンの肩を持ち、耳元で

「お前、持ってないだろ」

すると、ケンは

「後払いで」

すると店主はため息をついて、

「駄目だ。先払いも後払いもこの店ではやってない」

 このままでは(らち)があかないと感じたアキラは

「これで足りるか?」

 2枚の紙幣を差し出した。店主は、受け取って確認し、

「足りるが、いいのか?」

「やむを得ない」

 と、アキラが肩代わりする形になった。代金を支払い、ケンとアキラは、鐃警の先導で城下町の路地裏へ移動する。路地裏には、建物の裏口があり、そこへ案内された。鐃警は扉を開けながら、

「この建物について、話せば長くなるんですが……」

 鐃警に続いて、ケンとアキラが建物の中に入ると、

「ケンさん! アキラさん!」

 聞いたことのある声がして、呼ばれた方を見ると

「ニン。どうしてここに!?」

 ケンとアキラの仲間であるニンが、そこにいた。鐃警は、パンが入った紙袋をテーブルの上に置いて

「お仲間ですか。再会できて良かったですね」

 会話に気が付き、部屋の奥から青年が現れ

「警部。お疲れ様です。またメンバーが増えましたか」

「マックスさん、城下町でこう何回も芝居するのも、疲れてきたんですが……」

「芝居?」

 反応したのはアキラだ。先ほどのやりとりが芝居ってことだろうか。マックス探偵の発案で、異国の人だとアピールするように大袈裟に振る舞えば、同じようにこの世界に来た人が集まるのではないかという作戦である。すでにこの作戦で、3回成功している。

「3回って事は、俺たちとニンと?」

「2階にいるシェイ君という少年です。君たちより年は下ですね」

「シェイ君……?」

 と、ケンには思い当たる節があるようだ。ケンはさらに、

「あれ? じゃあ、マックスさんと鐃警さんは、知り合いってことですか?」

 回数的にそう考えて確認すると、マックス探偵は「以前、母国で会ったことがあります」と答えた。

 次の質問に入る前に、階段の方から「騒がしいけど、誰か増えたのか?」と、話にあったシェイが下りてきた。すると、ケンと目が合い、両方が「あっ」と声を出した。



 軽食を取った後、全員が席に座り、情報交換が始まった。まずは、マックス探偵から。

「この国”ルーイン・エンパイア”は、正直、聞いたことのない国です。それに、この国にかかわらず、不思議なことはいろいろとありますね。で、先に聞きたいんですが、シェイ君とケン君は、お互いを知ってるんですね?」

 ケンは頷いて、

「以前……、何年か前か忘れたけれど、ヤイバと一緒に島に迷い込んで、そのときに一緒に行動したのが、シェイ君でした。彼は、僕らと現地の人との会話を翻訳してもらって、非常に助かりました」

「俺の場合は、半年前だけどな……。おそらく、そっちの移動手段は、時間を遡行したってことか。当時は、互いの言語が違ったけれど、どっちも俺の知ってる言語だったから翻訳できただけで、全く知らない言語だとそう簡単にはいかなかったな」

 当時、”館の扉”を利用したシェイと、”時空間の狭間”を利用したケンで、時間の進み方が異なるようだ。

「当時は翻訳が必要だったけど、ここは違うみたいだな」

 シェイは、言語の違うメンバー同士で話が通じている点に関して指摘したが、誰もその現象の答えは知らないので、受け入れるしか無かった。ちなみ、シェイが魔法を使えることに関して、ケンは知っているが、シェイが魔法に関して言及しないので、言わずにいた。

 アキラが手を挙げ、「先にこれだけは話しておきたい」と言い、宮殿で聞いた話として、

「カイダ国王が、国民を5日後に殲滅するらしい。耳を疑ったが、側近にそう話していた」

「えっ、ってことは、この国にいると5日後に死ぬってこと……?」

 ニンは続けて、「みんながもしこの国にいたら……、探さないと」と、焦るが、アキラがニンを落ち着かせ

「だいたいのメンバーは、こっちにもいるから心配するな」

「そうなの?」

「だから、心配するな」

 殲滅という情報を聞いたマックス探偵は、深刻そうな表情で

「殲滅というタイムリミットですか……。こちらも、調べた情報をひとつお伝えします。この世界は、この国しかありません」


To be continued…


『龍淵島の財宝』とは異なり、第一話はブログ掲載時の第一話とほぼ一緒です。ただ、登場キャラなども変更しているため、第二話以降は全て書き直しています。当時は、4作品以外のキャラも登場していたので。螢と志乃の登場は、かなりあとになるかと。

『龍淵島の財宝』は19話と長くなったので、今年は短くしたい。(この後書き記入時は、4話目に着手中です)何話になるかな。

さて、12月1日は全作品の最新話が本作に合わせて、朝8時に同時更新されています。各作品についてもよろしくお願いします。

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