第一次日朝戦争-3 東京湾の戦
出すのが遅れて申し訳ありません。思ったよりも暇がなくて書いている暇がありませんでした。
なお、コメントがありません。コメントに対してできるだけ返信したいのでコメントお願いします。
イージス艦 『みはら』
「アメリカ艦隊、対艦ミサイルの発射を確認“LRASM”(ハープーン対艦ミサイルの後継)、“スピア”(日本で開発された超音速対艦ミサイルの派生型の米国名称)、そのほか巡航ミサイル多数。」
「海堡防空陣地、発射時迎撃を開始しました。」
水兵たちが叫ぶ。
「いい判断だ。ミサイルの発射数そのものを減らす気だな。」
艦長が言う
「ミサイル迎撃開始します。」
砲術長が叫ぶ。射程の長いミサイルでの迎撃を開始する。
「米艦隊の数を考えろ。発射数が減ったといっても誤差だ!!ミサイルの出し惜しみはするな。砲弾もだ。」
艦長はさらに叫ぶ。
「了解。ケチらずありったけの弾ぁぶち込みます!!」
旗艦 『ブルーブリッジ』
「『フレッチャー』大破、戦闘不能」
発射中の対艦ミサイル“LRASM”が突如爆発した。
「『マハン』『シムズ』『ベンハム』も同様に大破、戦闘不能」
艦橋前のVLSから発射されていた対艦ミサイルは発射直後ともいえるタイミングで爆発。熱線と衝撃波が艦橋を襲う破片がレーダーを破壊し、艦橋の窓ガラスを破壊し、凶器となってブリッジを襲う。
「なれど、いずれも死傷者なし!!」
すぐに来る報告は艦に関する技術の発展を象徴するものだ。艦橋といっても戦闘時そこには人がいない。すべて外部カメラで視界情報を収集し、艦の中央区画でそれを利用して操艦をしている。人がいないところに凶器が降り注いでも人的被害はない。
だが、被弾した艦の対艦ミサイル発射は中止され、艦には何十発もの対艦ミサイルが残された状態で戦闘不能になる。
「『スプールアンス』『ヒューズ』『ベンソン』戦闘不能!!」
そして被弾するのは最前列。最も敵に近い…とはいっても彼我の艦隊の距離を考えたら誤差の範囲ではある。
(後方からの攻撃ではないだったら後衛が真っ先に狙われる。後列の艦をに被弾がないということは狙えないから…。)
司令のトム・ジェファーソン中将は何が攻撃してきたか大体の想像はできていた。だがどこからの攻撃かさっぱり想像がつかなかった。
「被弾した艦は航行ができるなら後方に下がれ“LRASM”なら打てるはずだ。発射を継続せよ。」
彼は命じる。“LRASM”はGPS等の支援するシステムがない状態でもそれなりに使える。ミサイルである。そのような状態でも使えるように開発が行われたためである。だが“スピア”はそのようなシステムではないので発射しても命中率しないなら意味がない。さらに、このミサイルは日本との共同生産なので補充が期待できない。無駄うちはこの時点ではできないのだ。このシステム上の問題は“スピア”が超音速対艦ミサイルという迎撃困難な対艦ミサイルという性質が生み出した結果だった。
「前衛が壊滅!!しかし、航行不能艦はいません。」
オペレーターがそう報告する。
「ミサイルの消耗率!!」
「第一陣の同時弾着に使用できないもの10%。現在さらに迎撃を受けています。」
「敵に艦対空ミサイルが原因ではありません。」
「…光学兵器の位置の特定を急げ。」
jk
海堡遠隔操作司令部
「光学兵器第一作戦成功。光学兵器は第2作戦“スピア”迎撃開始。」
「レールガン対空榴散弾頭。攻撃開始。」
海堡とは東京湾を守るために建設された人工海上要塞島である。合計3か所が作られたが関東大震災で被害を受け1か所が放棄され太平洋戦争の敗戦で残りの2か所も軍事目的での使用はできなくなった。しかし、その要塞はこのとき再度軍事目的で使用されている。
「いい感じだ。できるだけ削り取ってやれ。」
司令はそう叫んだ。
日本艦隊 旗艦 『いせ』
「各艦が発射した迎撃ミサイル対艦ミサイルと接触します。」
この時点で多くのミサイルが海堡陣地に迎撃されている。それでも残るミサイルは多い。さらに問題なのはその残っているミサイルの一部に迎撃しきれなかった“スピア”が混じっていることだ。
「ミサイル抜かれました!!」
「第二陣の迎撃ミサイル接触」
第一陣のミサイルはスタンダード艦対空ミサイル。第2陣はそれよりも小型、射程が短いが多数詰めるESSM発展型シースパローだ。
「第二陣も抜かれました!!」
「護衛艦、主砲、レーザー砲迎撃開始本艦もレーザー砲での迎撃開始。」
「RAM、ファランクス用意」
外の見えないCIC。その迎撃はどうなっているかわからない。だが外に出ればかえって危険なので見ることはできない。モニターもあるが、それを見ている暇のない船員は弾着について乗員は艦の激震でわかることになる。
「アーセナルシップに被弾が集中します。」
「まずい!!」
アーセナルシップは日本では主に民間船と転用した艦隊決戦用の弾薬輸送船である。そのためステルス性は皆無、弾薬誘爆の危険も高い。役目はイージス艦等の指令に基づき、ミサイルを発射することだけ。発射したミサイルは軍艦が誘導してくれることになっている。
ただし、日本でも特殊作戦用の試作艦としてステルス性を考慮に入れた艦の建造がされている。さらに揚陸艦等も特殊な改造を受けておりコンテナを積むことでそれなりのステルス性を有するアーセナルシップに変貌する。ただ、この船は転用アーセナルシップと呼ばれ民間船改造型とは区別されている。
「『アラビア丸』被弾。炎上!!」
『アラビア丸』はもともとタンカーこの時もアーセナルシップとタンカーを兼任していた。長期の洋上停泊に備え大量の燃料を積載し、その甲板にVLS数千発分を強引に乗せたこの船に装甲はなかった。トップヘビーになるという理由から装甲も張られていなかった『アラビア丸』はタンクから油を流出させた。それに引火し、あたり一面は火の海になった。
さらに搭載してあったVLSが誘爆を始める。
「『報国丸』『靖国丸』被弾!!」
この2隻は建造中だったコンテナ船を改造したもので艦隊に食料を補給するのと同時にアーセナルシップとして活動をしている。そのため被害は少ない。それでもVLSはすべて吹き飛んで上部構造物は跡形もなく飛び散り、浮いているだけのスクラップに成り下がる。
「『サジタリウス号』轟沈」
『サジタリウス号』は自動車運搬船を改造したもので揚陸作戦の支援にも使える船である。だがこの作戦、艦内に砲弾や補充用のミサイル、魚雷等を積載していたため誘爆した。しかも命中したのが“スピア”だったのが壊滅的である。超音速まで加速されたミサイルが薄い外壁をぶち破り、内部で壊滅的な爆発を起こした。
海面が波立ち『サジタリウス』は見えなくなる。そしてそれが晴れるとそこには海面に漂うがれきしかない。轟沈だ!!
「中破、2隻が戦列を離脱します!!」
「艦名は!!」
「『オリオン』『ハヤブサ』の2隻です。」
「VLSを投棄しろ!!『オリオン!!』」
『オリオン号』は『サジタリウス号』と同型艦だが内部には燃えやすい弾薬が積まれていなかったこと、命中したのが“スピア”ではなく“LRASM”だったことも被害を中破に収めた原因だった。
この船は構造の関係で被弾時の損害を抑えるためにVLSを搭載し上部構造物の一部を爆破、投棄することができた。それで被害を最小に抑える。『サジタリウス号』は装甲内部に“スピア”に突入され内部弾薬に誘爆したためそれを使う余裕がなく轟沈した。
「『ハヤブサ』の心配はしないのですね。」
「あの船なら大丈夫だ」
『ハヤブサ』は完全にアーセナルシップとして建造された初めての船であり、ステルス性を備えている。そのため軍艦としての構造を持つ。
「VLSに注水しているだろうから問題ない。」
とも付け加える。
商船改造型のアーセナルシップの弱点は 非装甲、トップヘビー、弾薬庫の引火性の3点である。特にVLSを喫水線下におけない構造は被弾時の誘爆の危険性を増大させている。その弱点を解消した試作艦が『ハヤブサ』なのだ。
「ほかの船に被弾はあるか」
「ありません。電波妨害で護衛艦が発見されず、さらに対空火器の不足からアーセナルシップに被害が集中したものと考えられます。」
「そうなると問題なのは…」
司令の沖田 洋一一等海将はアラビア丸の炎上している方向を見るしかなかった。
アメリカ艦隊旗艦 ブルーブリッジ
「敵艦隊に着弾。しかし、アーセナルシップに命中したものと思われます。」
砲術士官が報告する
「反撃が来るぞ。迎撃。機関全速。近接戦に移行する。」
「レーダーに反応敵艦隊から対艦ミサイルです。」
「迎撃開始!!」
対空ミサイルは次々と発射される。
「敵ミサイルは“スピア”繰り返す敵は“スピア”。」
レーダー士官の悲鳴が聞こえるようだった。
日本も“スピア”を24式艦対艦誘導弾という名称で採用している。つまり迎撃困難な対艦ミサイルがやってくる。しかも日本側ができるだけ多くの“スピア”を発射できなくしたり、加速途上の低速領域で撃墜したりと“スピア”が本来の性能を出せない状態で”スピア“を迎撃していたのに足してアメリカ艦隊は”スピア“が最も迎撃しにくい状態で迎撃しなくてはならない。さらに被弾したらアメリカ海軍の駆逐艦クラスならば轟沈するほどの威力がある。
迎撃しなくてはならない。VLSからスタンダード対空ミサイルが発射される。搭載数のすべてが射出され、敵ミサイルに向かって飛翔する。
「艦砲、レーザー砲打ち方用意。」
「スタンダード接敵します。」
「全弾消費後ESSM発射。さらに削り取れ」
ハードキルと呼ばれる敵ミサイルの物理的破壊が続く。同時にソフトキルといわれる電子妨害も続けている。だが双方ともに手の内を知られた中であると同時にその対策も十分とられているため有効な効果が出せていない。
「ESSM発射。」
スタンダード対空ミサイルが対艦ミサイル群に命中すると直後、ESSMと呼ばれるスタンダードよりも小型、短射程のミサイルが放たれる。
「まだ残っている。最終防衛レーザー、艦砲、シリウス、RAM!!」
最終防衛。マッハ3で飛来するミサイルに対する最後の抵抗が始まる。
「ぜ、全弾撃破成功!!」
いくら音速を超えるミサイルもレーザーには勝てない。光のスピードだ。
「やった!!」
乗員に歓声が走る。
しかし、直後、最前衛の駆逐艦の艦首が吹き飛んだ。
「なんだ!!」
そう叫んでいるうちに数隻に被害が出る。
「何が起きている!!」
「攻撃です!!」
「スモーク散布!!」
米艦隊はスモーク弾を発射。姿を隠す。それまでに数10隻の喫水線付近に亀裂が走って、浸水が起きている。亀裂は何か砲弾のようなものが命中したような形か、何か刃物で切り裂かれたような亀裂の2種類があった。浸水のひどい艦は浅瀬に向かうように進路をゆっくり変えてゆく。
「こ、光学兵器!?」
スモークを張るとその煙にレーザー光線が映し出される。スモークには光学兵器を阻害する物質が仕込まれている。それによって多少なりとも光学兵器の威力が減少すると同時に本来見えにくいはずのレーザー光線そのものを可視化することができる。しかしレーダーを妨害する物質も含んでいるためにレーダーの効力も低下する。
「方位計算。どこからだ!!」
レーザーの角度を計算。あり得る施設をようやく導き出す。
「海堡です。海堡に敵の陣地があります。」
「か、海堡!?そんなところに」
「各艦砲撃開始。」
海堡陣地を見つけた敵は艦砲射撃を始めた。
「か、海中に推進音多数!!魚、魚雷です!!」
それは突然だった。
「回避!!」
「推進音無数おそらく100発越え!!」
アメリカ艦隊は魚雷に対する回避運動と同時に艦砲射撃を続ける。
「回避しきれない!!」
「人員退避!!隔壁閉鎖!!」
被弾に備えた動きを各艦が続ける。
が、魚雷は敵に近い艦艇から命中した。
「被雷艦艇多数!!」
士官が叫ぶ。
「被害は!!」
「いずれも航行は可能。しかし、艦隊から脱落します!!威力から見て短魚雷!!」
短魚雷というのは対潜水艦攻撃のための魚雷で対艦攻撃には威力の観点から不向きである。しかし、一応対艦攻撃には転用できる。
「残存艦艇は!!」
「日本艦隊とほぼ同数。」
その報告は自軍の優位がかなり薄れたことを意味する。
「戦闘を中止すべきです。このままではじり貧です。」
参謀が叫ぶ。
「今ここにいても弾薬は尽きたただの箱だ。日本艦隊はまだ洋上で弾薬補給の可能性が残されている。我々の備蓄量よりもはるかに多いな。その一方こっちは補給あのあてはない。敵に補給の暇を与えてはならない。」
司令はそう叫んだ。
「では!!」
「ああ…。」
「突撃する。艦砲射撃戦だ。ズムヴォルト頼むぞ!!」
日本艦隊旗艦 『いせ』
「アスロック成功です。しかし、海堡陣地壊滅です。」
アメリカ艦隊を襲った魚雷はアスロックと呼ばれる潜水艦戦闘に使われる兵器である。しかし、今回対艦攻撃にこれを流用した。
「アメリカ艦隊突入してきます。」
「やはり艦砲射撃戦か。」
「何十年ぶりでしょうか軍艦同士の艦砲射撃戦なんて。」
「問題は敵潜水艦を潜水艦部隊が抑えられるかだけですね。」
「ああ…。」
アスロックは前記のように対潜水艦戦闘用の兵器である。その兵器を対艦攻撃に転用するというのならば対潜攻撃能力の低下を意味する。この作戦に参加している潜水艦隊がアメリカの潜水艦隊を確実に抑えるか撃破してくれると信じているからできる作戦である。さらに魚雷の火力も低いので有効なダメージを与えにくい。システムの関係上迎撃されやすいといった弱点がある。だが、レーダー妨害物質の含まれたスモークの中では迎撃されにくくなる。だからその瞬間を狙って使われた。
「問題なのは…ズムヴォルト級だ。」
そう沖田司令はつぶやくしかなかった。
少し時間をさかのぼり、海中。 中国潜水艦
こういった大規模海戦ではたいてい他国の潜水艦が偵察行動を行っていることが多い。今回もその選に漏れず、中国、統一朝鮮、ロシアがそれぞれ3隻ずつを派遣していた。それ以外の国家はいない。あらかじめ誤認攻撃のリスクを警告していたからだ。
「上の艦隊は艦砲射撃戦に移る模様です。」
副艦長が艦長に状況を説明する。
「対艦ミサイルを無力化された挙句、アスロックによる対艦攻撃か。」
「戦力比が大きいのに潜水艦部隊を相当信用しているみたいですね。日本艦隊は。」
潜水艦の艦長たちはそううわさ話でもするかの如く安心しきっている。
「米艦の推進音探知。音源多数・遠距離につき艦種・艦名特定不能」
「日本の潜水艦、回頭。」
ソナー員がそう報告する。
「どっちに向こうとしている?」
艦長と副長は同時に口を開く。
「回頭中です。」
潜水艦は遅い。方向転換にも時間がかかる。回頭が始まってもどちらに向かおうとしているか判明はしない。
「だがなんでこのタイミングで回頭するんだ。」
米潜水艦隊との決戦のため後ろの艦にかまっている暇はないはずである。
「は、はあ…。」
隣で副長がそう呟いている。
「回頭終わりました。」
「敵はどっちを向いている?」
「えーと…」
ソナー員が言っている直後、
「に、日本艦、魚雷発射!!目標本艦」
「な、なんだって!!」
「ほ、ほかの潜水艦に対しても魚雷を確認。」
ソナー員は恐怖に支配されている。
「機関始動!!回避!!」
潜水艦を動かそうとする。しかし、中国海軍の潜水艦が搭載するのは燃料電池。燃料電池の性質として急激な出力の増減に弱い。そのためなかなか船のスピードは上がらない。
「う、動け…」
「こ、後方からも魚雷確認!!」
「なんだと!!」
ソナーから出る探針音が響く。少し音が小さくなる。マスカーが展開されたためである。
「頼む…。」
しかし、魚雷が命中。時間をおいてほかの8隻も沈降を始める。海域を考えると救助の可能性のない海の底に引きずり込まれていった。
アメリカ潜水艦隊。
「9隻すべての撃沈を確認しました。うち1隻圧壊音確認。」
ソナー員が言う。
「さすがだな。あっという間に9隻を撃沈か。」
「海流を読み一部を後ろに回り込ませ、一気に包囲殲滅する。ここら辺の海流を熟知している彼らだからこそできる戦い方ですね。」
副長が艦長にこたえる。
「さらには深深度での戦闘能力」
「やりたくないですね。伊達に通常動力潜水艦で空母の撃沈判定もぎ取った連中じゃない。」
「そうだな。では作戦に従って日本艦に続いて海域を離脱。」
「了解。」
日本艦隊
「『むらくも』『しののめ』大破!!戦線を離脱。」
「『きそ』『とね』主砲喪失!!」
日本艦隊は劣勢に立っている。米艦隊のズムヴォルト級の長射程155㎜砲がさく裂しているからだ。日本側の艦砲が届かないような遠距離から降り注ぐ砲弾は次々と日本間の戦闘能力を奪う。
接近してたたこうにも他の米艦が邪魔をし、ミサイルは弾切れ。打つ手はない。
「もう少しだ!!耐えろ!!」
沖田叫ぶ。
「レーダーに反応!!ミサイル艇です!!」
レーダー員が叫ぶ。
「味方が来たぞ!!隙ができる。全艦突撃。ズムウォルトの艦砲を破壊しろ!!」
米艦隊
「ズムウォルト級を守れ!!」
司令が命じる。だが前方の艦列と比べ、後方は密度が高く、艦の動きが制約されている。さらに空母といった大型艦もいるので動きにくい。
「損傷艦が反転します!!」
艦砲射撃戦では撃沈される艦船よりも戦闘能力を奪われる艦船のほうが多い。そういった艦船は後方に下げられる。その船が反転を始める。
「やめさせろ!!その船では無理だ!!」
ミサイルがあってもレーダーを破壊された船はミサイルによる迎撃は困難。となると艦砲による撃墜とレーザー砲、ファランクス、RAMといわれる小型のミサイルによる迎撃しかできない。さらに艦砲射撃戦で主砲を破壊された船は多い。
「艦砲射撃確認!!」
少ないが艦砲の生き残っている船は艦砲射撃を開始する。だがその多くは当たらない。
「馬鹿者!!レーダーを破壊されているんじゃ当たるもんも当たらん。無駄弾打ちおって補給を考えろ!!」
「いいやあれはあれで正しい。」
司令は老練な参謀にそういう。
「敵の船は小さい。一部はあの砲撃で対艦ミサイルの発射タイミングをそらされている。一度に飛んでくるミサイルの数が少し減った。それにレーダーが死んでいる以上対空砲撃でミサイルを落とせる可能性は皆無。対艦攻撃のほうがましだ。」
「対艦ミサイルきます!!おそらく比較的小型です。」
日本がこのとき投入したのは沿岸作戦用の超小型高速ミサイル艇。そのためミサイルの大きさに制限がある。
「損傷艦レーザー砲で迎撃を開始します。」
損傷艦艇といえどもレーザー砲ぐらいは生きている。小さなレーザー砲クラスの物体を生き残っているレーダーだけで撃破することは完全な状態よりは難しいができないことではない。
「ファランクス、RAM迎撃開始。」
ファランクス対空機銃も補給が終わっているため攻撃を開始する。
だがファランクス威力不足が指摘されているほど威力は低い。時間に命中するまでに落とせるミサイルは多くて2・3発。しかもミサイルを破壊できても破片が飛来し、艦を損傷する始末。特にレーダーの破損による影響はでかったといわれる。
RAMはその弱点を解消するために開発された小型のミサイルで同時に多数発射することで命中性を補っている。最大の特徴として通常の艦対空ミサイルのように高性能レーダーを必要としない。という点があげられこのときもその特徴が十分に生かされている。
「全弾は迎撃できません着弾します。」
後方から飛来した小型対艦ミサイルはほとんどが命中した。
「被弾!!」
そのミサイルの一部は旗艦『ブルーブリッジ』にも命中した。
「本艦の被害と各艦の被害を知らせよ!!」
「旗艦通信施設破損。レーザー通信は使用可能。戦闘に影響なし。ただし、モールスを除く遠距離通信手段喪失。」
「ズムウォルト級被弾ステルス性大幅に低下。」
「迎撃に出た損傷艦隊被害甚大。航行不能艦あり。ただし、沈没艦なし。浸水のひどい艦は陸地に向かいます。」
被害はそれなりにある。だが戦闘に影響は出にくい。
「ミサイル艇反転します。」
ミサイルを打ち尽くしたミサイル艇は後退する。
「ようやく引きましたね。ミサイルが比較的小型だったため被害は少ないです。」
参謀が安心したように言う。
「いいや。奴らの狙いは精神戦だ。まさかここまでやるとはな。」
「は?」
「後方からの脅威。それが彼らの役割だ。急がねば再度の攻撃を仕掛けてくる。」
後方に退いた敵自体に損害はない。後方に数百隻の伏兵をおかれるということはそれだけの数の予備弾薬もあることを考慮に入れなければならない。つまり脅威は残っている。
「…とっとと突破するに限るな。」
司令は独り言を言う。
「敵艦隊をこじ開ける。全艦アスロック用意。残弾すべてだ!!」
「了解。アスロックを使用します。目標日本艦隊。」
「多数が迎撃されるでしょうが大丈夫でしょうか!!」
「だから典型的な飽和攻撃だ。Mk.54魚雷も使用。一気にけりをつける。同時弾着。」
「前衛の全艦に対して魚雷発射を命じます。」
後方に配置されている艦艇は魚雷の進路の関係で味方を誤認射撃させかねない。なので後方の船は魚雷を発射しない。
「司令。何十年ぶりですか!!水雷戦が命じられたのは」
「…よく知らんがWW2終結から考えると85年ほどだな。」
「そりゃすごいもんですね。」
「集中させろ。そこの艦列を一気に突き抜ける。」
日本艦隊旗艦 『いせ』
「『あたご』の監視員が敵艦隊からの魚雷発射を確認しました。」
「全力回避!!」
艦隊は動き出す。
「どこに集中されるか計測。そのポイントから回避。」
「推測地点算出各艦に送ります。」
「アメリカ艦隊ミサイル発射を確認。残弾の関係からアスロックと思われます。」
「迎撃!!」
「我々の戦術を倍返しされた。」
「魚雷が着水される前に数を減らす。残弾を考えるな。打ちまくれ。」
「ドローン砲台も動かせ!!前進。至近距離から落とせ。」
このとき、日本は小型のドローンに武器を積んだ機体を運用している。当然無人で生産コストも安い。対空火器の搭載スペースの不足に対抗する手段として運用している。
将来的にレーザー砲を搭載する研究もあるが、小型化、生産コストの関係で現状大きいものでも20㎜機関砲(バルカン砲の銃身を流用している)が限界である。
さらに搭載される小型レーダーも性能が低く命中率も低い。
「主砲、レーザー砲、ファランクス、RAM目標アスロック!!」
急に砲声が増加。これまで主砲と主砲弾の迎撃を行っていたレーザー以外にファランクスとRAMが発射されているからである。
「高度が高いものはパラシュートを狙え。」
アスロックは素早く遠くに魚雷を飛翔させるための装備である。そのため航続距離の短い魚雷を遠くに飛ばし、潜水艦を攻撃することを主目的とする。対艦攻撃は本来分野外である。
対艦攻撃に使用する際の最大の弱点が撃墜率の高さである。
アスロックは魚雷を海中に着水させる際、衝撃で魚雷が破損しないようにパラシュート降下する。このとき現代のレーダーにとって静止目標を打つのと同等であり、たやすく撃墜される。
このとき、艦対空ミサイルの不足から撃墜能力は低下していたがそれでも撃墜されやすいことは事実。
さらに高度が高い状態でパラシュートが破壊されると着水の衝撃で魚雷が破壊されることもある。
「回避行動のため火砲の射線が限定されます。」
「ドローン。移動速度の不足から間に合いません。」
しかし阻害する要素も多い。そのため迎撃率が落ちる。
「アスロック着水成功。魚雷きます。進路ほか魚雷と違います。データーを送ります。」
「回避に専念。」
「米艦隊突っ込んできます。艦列を突破されます。」
「…」
「アメリカ艦隊を逃がしてしまいます。」
「艦隊の損傷はどうだ。」
沖田はそう聞く。参謀はそれを聞いて気が付いた。
「…3分の1が戦列を離脱・浅瀬に着底。3分の1が戦線にとどまるも被害甚大…」
とても戦える状態ではない。
「艦列を開けてやれ。」
「沖田提督。」
「責任は俺がとる。」
「了解。全艦中央を開けるように展開。アメリカ艦隊を通過させろ。そして後背の艦隊を削り取ってやれ。」
「了解。」
春休み中に一つ出せるといいなーーー