第四十七話～彼女とキメラとマーキング～
………これからも、こんなことが起こらないようにアラームでもつけておくかな。
いわゆる、マーキングってやつ。
もう、こんな思いなんてしたくない。こんなのこりごりだ。
でも、魔法が効かない呪術なんて、しかも私レベルの魔法も効かないなんて、どんなチートの塊だよ。
クソッ。犯人誰だよ。
とりあえず、あいつ等にアラームもどき付けよう。
そうすれば、万が一襲われた時も何とかなる。
よし、そうとなれば善は急げだ！！！と、言いたいんだけど…。
これがまだ作ってないんだな～！！！
｛じゃあ、さっさと作りなさいよ。キャラ崩壊少女、カルテット｝
その呼び方やめてくれる！？なんかどっかのアニメのキャラクターみたいじゃん！！！
あと、キャラ崩壊って言わないで！！！自分でもわかってるから！！！
｛………ハッ。｝
普通に笑われるよりむかついたんだけど！！！鼻で笑うなああああ！！！
｛……もーしわけございません。｝
棒読みで言ったって意味ねえし！！！
｛こら！！！女の子がそんな口調で喋るなんて！！！ダメでしょ！！！｝
う、ごめんなさい。って、あんたは私のお母さんかよ！！！
｛うふふ、お母さんだと思って結構ですよ？｝
結構ですぅ！！！私の母親は向こうにいるので！！！………でも、ちょっと明るくなれたよ。ありがとう。
｛ま、まさか…！？こ、これがうわさに聞くデレ期というやつですか！！！感動です！！！｝
誰に教えてもらったんだよって、ああ、ニジ・ゲンか。
｛いえ、恋愛神に聞きました。｝
……………さいですか。
さ、気を取り直して………作りました。
え？速い？パパッと作ったし。臨時だし。おーきゅーしょちってやつだし？
えっと、襲われたら場所と人が分かるようにしただけだし。転移はつけなかった。いちいち転移とか面倒だし。
何がって？だって、襲われたら分かるってだけで何に襲われてるかはしっかり確認しようとしないとわかんないし。あと、お風呂とかで襲われたら？流石にねえ？変身する時間が欲しいのですよ。
男同士だったらオッケーっしょ！！！……たぶん。
せ、精神も男に近くなるし？というか男になるし？せ、セクハラにならないよね？
……なんで私、こんなことを心配しなくちゃいけないんだろう。
なんか虚しくなってきた。……よし、立ち直った！！！付けに行こうか。
転移っと。
シュンッ
「あ、凛華。どこに行ってたんだ？」
「あ、刃。丁度いいところに！！！はい、ちょっとじっとしててね。……『我が守りし者に風の報告を』…風の便りっと。」
これでよし。きちんと詠唱もしたから、呪術なんかに負けない出来だよ！！！
「い、いきなりどうした？」
「ううん、ただ、またあんな風になった仲間を見たくないから。襲われたら分かるようにしたの。……急いで作ったから、無差別で、だけど……。魔物なんかに襲われるたびに、念話をかけるかもしれないから……ごめんね？」
「いや、ありがとう。襲われたら、凛華の声が聞けるんだな？」
……なんかニュアンスが違うような気がする…。
「う、うん？」
「ふふん、なるほどなるほど。バトルのたびに凛華の声が聞けるなんて……最高。」
………………。
「刃、わざと襲われたりしないでよ？わざと襲われたら嫌いになるから。」
「な！！！……………くぅ………！！！…………分かった…。」
やっぱりわざと襲われるつもりだったのか…。全く、油断も隙もない。
こっちは本気で心配するんだから！！！あんな苦しい思いをもうしたくないっていう、私の気持ちも考えてよね！！！全く！！！
さ、次は…マリル先生にっと。
「マーリールーせんせーい！！！どこですか～！！！」
「どうかしましたか？カルテ先生。」
あ、いた。案外近くにいたな。まあ、遠くまで探す手間が省けたと思っておこう。
「ちょっと魔法をかけるのでじっとしててくださいね。『我が守りし者に風の報告を。』風の便り………これでよし！！！これで襲われたとき、私がわかるようになりました！！！急いで作ったので、襲われたら無差別なので、魔物とかに襲われたら毎回、念話をかけると思うので…。すみません。無差別で…。」
やっぱり作り直すか？でも、とりあえずはね…。
「いえいえ、ありがとうございます。これで、襲われたらカルテ先生の声が聞けるんですね。」
…………デジャヴだ。デジャヴ。
「え、ええ。」
「ふふ、そうですか。戦いのたびにカルテ先生の声を聞けるなんて、……最高です。」
…………………………。
「……マリル先生、わざと襲われたりしないでくださいね。わざと襲われたりしたら嫌いになりますから。」
「な！！！……………むぅ、………わかりました。」
うん、やっぱりあんたらは似てるよ。反応もそっくりだ。
全く、どいつもこいつもアラームを電話手段もどきとして使おうとしやがって…。
敵察知魔法？なのに。
えっと、あ、蒼汰君のとこの行かなきゃ。
いるかな……？いたらいいな～。
「……わっ！！！」
「ひゃんっ！！！な、なに！？って、蒼汰君！！！もう、悪戯はやめてよ。」
「ごめんごめん、カルテ先生。ついね。」
でも、いいところに来た！！！これで『風の便り』をつけれる！！！
よし！運がいい！！！今日は………そんなについてないな…。今までの出来事合わせると…。
むしろかんっぜんについてない日だわ。プラマイゼロどころかプラマイマイだわ。
まあ、そんなことどうでもいいや。さっさと魔法かけよう。
「魔法かけるからじっとしててね。『我が守りし者に風の報告を。』風の便りっと。これでよし。」
「え！？なになに！？怖い怖い！？いきなりどうしたの？」
「刃か、マリル先生に聞いてくれ。」
「分かった。」
いや、別に説明すんのが面倒になったっていうわけじゃないし。飽きたってわけでもないよ！！！………ただちょっと、やる気がなくなっただけだし…。
「それじゃあね！！！」
次は……イヴァンとリョクナかな？どこにいるんだ？あいつらの居場所なんて知らねえし……呼んだら来ないかな？
「イヴァン、リョクナ、来い。」
………無理があったか…。
タッタッタッタッタ
う～ん、流石の二人でもこれは無理だよな。
ダッダッダッダッダッダ
魔力も何も込めてない、普通の言葉だし…。
ダダダダダダダダダ
さっきから気になってたけど…この音なんだ？
ドドドドドドドドド
だんだん大きくなってるな…。う～ん、なんだろう？闘技用の魔物が逃げ出したとか？
ガラッ！！！
「我らをお呼びですか！！！カルテ様！！！」
「何でも言ってくれていいぜェ！！！」
きちゃったよ。どんな聴覚してんだよ…。耳か？耳が大きいからなのか？
う～ん、エルフの聴覚は普通だったと思うんだけど…。
「カルテ様のお言葉なら、一字一句聞き逃しません！！！」
心を読まれた！？
「いや、カルテ様の心を読むなんてそんな恐れ多いことできるわけないだろう？」
うーん、私としてはクールに決めてるはずなんだけれど…。結構、顔に出るのかも…。
「いえ、顔は鋼で出来てるのかっていうくらい無ですよ？眼にうつるんですよ。カルテ様は嘘をつくとよく目が泳いだり、目を合わせないようにするので…。」
うぐっ、否定できない…。
ってか、あれ？なんでこんなくっだらない話になったんだっけ？
『風の便り』をかけに来ただけなのに……。
どうしてこうなった！！！
