第十二話~彼女とキメラと修行中~
「フフフ、今日がタイムリミットだよ?水帝さんたち!」
{朝からご機嫌ですね、カルテ。}
うん、だって帝就任に加えて賭けの勝敗が決まる日だしね。
{ああ、あの事件の。カルテ、実はあの時途中からわざと英語を使ってバトルモードを演出してましたね?で、実はほとんど怒っていないと。}
まあね。だって、私が許してはい!しゅーりょーって、つまんないでしょ?
{まあ、刺激はありませんね。心躍るような刺激は。}
でしょう?ウフフ。
あ、そう言えば何だかさ、カルテリカに来てから面白いことが大好きになったんだよね。
あと、人を傷つけても何も感じないし、泣かせても「ざまあ」としか感じなかった。
なんでだろう?神様が何かしてくれたのかな?
{さあ?私にもさっぱり。}
ま、午後の5時まで時間があるし、のんびりしますか。
「『偽りの部屋』」
この魔法は幻影を出して戦うことができる部屋を出す。
幻影といっても実態があるから切ることも切られることもある。
この部屋を作ってからミディアやら、神様たちやらと修行した。
神様たちは勝手に来て私に修行させて勝手に帰って行った。
修行中は容赦なくコテンパンにされた。………………ブルッ!
なんか本能がこれ以上思い出すなって言ってる気がする。
「ん~、ミディア。小手調べに刃出して!」
{了解しました。}シュンッ
「おお、来た来た。さ、やるか。鈍ってないといいけど……鈍ってるだろうなあ~。」
{それでは、準備はいいですか?}
「うん。」
{試合開始!}
その合図と同時に走り出す!
腰を低くし、空気抵抗を少しでも無くすように。
早く、速く、疾く。
刀が迫ろうとギリギリまで引き付けて………かわす!
足を捉え、膝を砕く!
刀を持っている右手を切り捨てて、首をはねる!
{You Winner!}
「ふう、やっぱり体が訛ってた。やばい。次、出して!}
{了解しました。}シュンッ
一番速い神が次の相手か。見切れるかな?いまの私に…。
{準備はいいですか?}
やってみなくちゃ分かんないよね!
「うん!」
「試合開始!」
ガキン!
はは、合図と同時に目の前にきたよ。
ガガガガガガ
次々と繰り出される剣技。
縦、横、斜め、横、横、縦、斜め、斜め、視界がぶれる、捉えられない。
でも、受け止められる!
剣筋を見て、観て、視て!
すぐ先の未来も見て、観て、視て!
全てが捨て技で、全てが次の技へ繋げる鍵で、全てが必殺技!
もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと!
疾風のように、音を超えて、光を超えて、すべてを置き去りにして…。
斬るっっっっ!!!
{You Winner}
「次!」
シュンッ{試合開始!}
次は力が一番強い神。
ドンッ スッ
力一杯振り下ろされた剣を受け流す!
受け止めたら即エンド。だから、
流れるように、流水のように掴ませない。
踊るようになだらかで、それでいて力強く。
動け、動け、動け、動け!
軽やかに、飛ぶように、相手の剣をかわしながら。
滑らかに、最小限の動きで、相手の剣を受け流す。
相手のペースにはまるな!自分のペースに持ち込め!
相手が慣れないうちに素早く、翻弄する!
相手が疲れて一番の隙が出来たら、そのまま………
「突きィィィ!!!!」
{You Winner}
シュンッ{試合開始!}
次は暗殺特化の神。
スッ
瞬きした瞬間消えた。
感じろ。
気配を、殺気を、敵意を、存在を。
感じろ。
目で、鼻で、耳で、舌で、肌で、五感すべてで。
感じろ。
風の動きで、大地の動きで、木々の動きで、自然全てで。
感じろ、感じろ、感じろ!
どこだ、どこだ、どこだ!
「………………。そこだっ!!」スパッ
{You Winner}
シュンッ{試合開始!}
次は魔法の神。
詠唱せずとも打ち続け、魔力枯渇など起こらない魔法特化の神。
炎の矢が降り注ぎ、大海の波が押し寄せる。
暴風が吹き荒れ、地が割れ、雷が無数に落ちる。
いくつもの幻が現れ、常闇の世界へ導こうとする。
向かってくる魔法を斬る!切る!きる!キル!
魔法の神に向かって走る!奔る!はしる!ハシル!
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る!
素早く、次へ繋げて、繋げて、繋げて、繋げて、繋げて、繋げて、繋げて
次から次へと来るだろう魔法を見ずに斬る!
神の手前まできたら目の前の結界ごと神をぶった斬る!
ガシャーーーン!
{You Winner}
シュンッ{試合開始!}
武神『スサノオ』の幻影か。
シュンッガキンッ
早い!重い!
ドガガガガガガガ
くっ、やっぱり強い!
ドゴッ
「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
いったあ!蹴りがまともに入った。
あばら骨が何本かいったみたい。
タッ ガッ ガキンッ
「ぐぅぅ!!!」
すぐにスサノオも追いつき剣に手をかける。
私は腕に力を入れ、受け止める!
バッ ドカッ
スサノオはつばせりあいの状態から一旦身を引き、蹴り上げた。
「きゃああ!!」
バンッ ドサッ
「カハッ!!!」
っつう!
息が………苦しい!
生きるためだ、生きるため何だから…。痛みを忘れろ!!!
「おりゃあああ!!」
ドカッ!
足をすくい、手を壊し、首をはね………られない!?
じゃあ、これで…………どうだ!
「シィッ!!!」
手を地につき足で首をからめとる!
ゴキィッ
{You Winner}
{回復させますね。}ぱあ
「ありがとう。今日はもうやめとくよ。」
{分かりました。}
ん~、あ、そうだ。
「ミディア、的出して!弓の練習する!」
この間やった時はダメダメだったし。
{はい、……シュンッ これでどうでしょうか?}
「うん、ばっちり!…………………ふう。」
ザッ
足は肩幅にしっかりと開く。
スッ
弓を構え、矢をつがえる。
キリキリキリキリキリ
矢を引き、ギリギリまで引く。的をしっかりと見て………狙って………
バッ
放つ!!!!
{おお!丁度、ど真ん中ですよ!}
う~ん、でもな~、おっそいし……。
{魔法で時間をコントロールすればいいと思いますよ?}
でも、神ズには通用しないじゃん。
{弓は人間用にすればいいと思います。}
う~ん、そうするかな。
……暇だな。あ、魔法を作ろう!
{いいですね。私もそちらに行きます。}
OK!バッチコーイ!
ん?いつの間に実体化できるようになったのかって?
幻影の中に入って操ってんの。ミディアが。
ま、幻影ができることは限られてるから、この部屋限定だけどね。
「よし、じゃあ作りましょうか?」
え?ミディアの容姿?……………ヤバかったと言っておこう。
「ん~、面白魔法作る?手品の魔法を作りたいし。」
「手品の魔法って、まあ、いいですが。で?具体的には?」
「あ~、ハトを飛ばしたり……トランプを使ったり、あ!コイン使ったり!」
「ん、全部出来ますね。でも、ホントにそれだけですか?」
確かに、つまんないよなあ。
「んじゃあ、攻撃にしよう!お馴染みのハット帽は縁に刃を隠して投げた時に切れるように!」
「同じくお馴染みのステッキはいつもの杖でいいですね、隠し銃や隠し刀とか。」
「いいね!それ!じゃあ杖は刀にして、ハトを鉄砲にしよう!『豆鉄砲』っていうので!」
「フフフ、トランプは出た数字の数だけ攻撃する人形が出るようにしましょう。『トランプの兵隊』って名前で。」
「おお!じゃあ、コインは偵察用にしよう!手足が生えてステルスも使えるの!名付けて『義賊』!」
「全部合わせて、どうします?」
「ん~、全部合わせて『種も仕掛もありません』かな。」
「おお!いいですね!」
そうして時間は迫ってくる。
約束の時間まであと1時間。




