戦果報告
しばらくの静かな時間があった、
意識を失ったセレスティアル姫が俺のロイヤルスイートで発見され、一時は賞金首にもなったが、即時取り下げられた。
俺の身になにかあれば、こんどこそ自動糞便製造機に成り下がるのだから妥当な判断だ。
灯台下暗し、俺はセレスティアル姫が運び出された後はロイヤルスイートの部屋の中に戻っていたのだが、誰も探しには来なかった。
犯人は犯行現場に戻るという言葉はこの異世界に無かったようだ。
そうしてしばらくロイヤルスイートで時を過ごした後、初めて淑女らしいアポイントメントがあり、初めて客人としてセレスティアル姫が部屋に招かれた。
今までは慮外者への対応だったのでずっと寝転んでいたが、今回は客人の応対なので俺も久しぶりにソファに腰掛けて座っている。
「不思議な、部屋の作りになりましたわね?」
突貫作業で細工を施した我がロイヤルスイートをセレスティアル姫はそう評価した。
テーブル越しに見えるセレスティアル姫は、少し、やつれたか?
魂を打ち砕く呪いの激痛と、感情の折り合いはついたようだ。
今は落ち着いた表情を俺に向けている。
「今でも、時折、激痛が私を苛みますが、心の折り合いはつきました。今日、ここに来たのは罪の告解のためです」
「……この国でも教会の門はいつでも開いているはずだが?」
「お尻の方もいつも開いている殿方に私の罪を聞いて欲しいなどとは思いません」
うむ、その通りだ。じつに良い判断だ。
「私は、姉に嫉妬しました。産まれた順番が違った、ただそれだけで姉が王位につく、その理不尽が許せませんでした。ドラゴンにさらわれて、私が王位に着ける機会が訪れたと知った時には喜びを覚えました。頑張れば国威も民意も立て直せます。ですが、姉がドラゴンへの情と甘い言葉にほだされて城下の人々や城の者を殺したことを忘れたことが許せませんでした。えぇ、愛し合う二人に嫉妬したことは認めます。私も、乙女、ですから、城の騎士のなかに淡い憧れを抱いた殿方もおりました。そして、その殿方は城を襲ったドラゴンと戦い雄々しく散りました。ですが、姉はそのことを忘れ、ドラゴンとの毎夜の夢物語に耽溺しました。愛する者を奪われて、ドラゴンを未だに憎む者は城内城下に沢山おります。ですから、姉が幸せのなかでドラゴンの妻として連れ去られること、これだけはどうしても許せませんでした。愛する者を奪われた多くの者の代弁者として、私は、ただ、姉の心に深い傷を残したかったのです。山岳要塞二万の兵士の犠牲を目に焼き付けさせて、苦しみと共に去れば良いと……より多くの憎しみを生む本末転倒の行いですが、そう考えておりました。これが私の罪です。私も、嫉妬と憎しみという一時の情に流されて国を売りました。これが私の罪です」
最初の出会い、ドラゴンの本能、カルチャーギャップ、全ての掛け違いから始まった悲劇。
英雄の物語は『めでたしめでたし』の一言で終わりを告げるが、犠牲となった者、そして愛する者を奪われた者の物語にそんな終わりの言葉は無い。
ボッタクリバー『サキュバスの園』の被害男性は今も、冷たい現実の中で針の筵に座っていることだろう。
俺は腰をソファーの端にずらして、ポンポンと膝を叩いてみせた。
聡明な彼女は、それに数瞬悩み、そして、おずおずと挟んだテーブルという名の境界線を越え、俺の太ももを枕にして顔を埋めた。
そして、若き騎士への淡い恋心を相手の死と言う形で失くした、年頃の少女の姿で、泣きじゃくった。
『ゲイ』ボルグよ、たまには役に立つな。ここでお前が反応していたら全てが台無しだ。
ただ泣きじゃくるお姫様の頭を優しく撫でて、赤ん坊が泣き止むのを待つように、ただ、俺は優しく頭を撫で続けた。
昼過ぎに訪れた彼女が部屋を去ったのは、夕暮れ時を過ぎた頃であった……。
◆ ◆ ◆
さて、お姫様の相手が終ったあとは……楽しい楽しい軍事法廷の時間だ!!
被告、ワンワン=シャウラ!! 罪状、軍需物資の横領および軍資金の不正使用!!
判決、極刑x4.5倍!!
主文、被告ワンワン=シャウラは軍需物資の横領ならびに軍資金を不正に使用し、ボッタクリバー『サキュバスの園』の被害者に対して人道的な援助を行なった。通常の軍であれば情状酌量の余地もあるが、我が軍では『弱き者は死ね、そして軍曹殿の下に送られて性根から鍛えなおしてもらえ!!』が基本原則であるので、情状酌量の余地無し! よってここに、判決!! 極刑4.5倍の刑を宣告する!!
「さぁ、コレを着けるんだ」
渡したものは鉄のブラ、そして鉄のパンツ。
貞操帯、それも上下おそろいだからお洒落度もアップだ。
やはり女性たるもの、上と下は揃えておいて欲しい、この親切な男心。
もちろん、超の付く一級品だ。
「は、はい。これで、良いですか?」
今迄の恥辱系の服とは違うため、油断したのか迂闊にもシャウラは部屋の影で簡単に身に付けた。
なのでガチャリと鍵を閉めた。
これで自らの手で外すことは適わない。コマンドー以外には。
「では、これから罪人シャウラにサキュバス被害者に対する多数の軍需物資の横流し、および、軍資金の不正使用に対する刑罰の執行を開始する!!」
ん? バレていないと思ったいたのか? 俺は『守銭奴』だぞ?
おお、顔が青ざめて、赤くなり、青ざめて、赤くなり、信号機か貴様は。
この楽しい極刑のために、防犯装置の設置がてら部屋の改装を行なったのだ。
部屋の改装がてらに防犯装置の設置をした? まぁ、どちらが主でも構わない。
作りは簡単、部屋を左右対称に二部屋作っただけだ。
一方の部屋には、シャウラ。
一方の部屋には、俺とスピカ。
部屋の仕切りとなるものは空気しか存在しない。
「では、これから、刑罰の詳細を述べる! 罪人シャウラには72時間の懲罰房入りを命じる、懲罰房内での生活にはトイレもお風呂も用意されて居るが、その内部に閉じこもり続けることは許さん。ちゃんと、懲罰房に入っているんだぞ?」
首を傾げるワンワン乙女シャウラ。
これから行なわれるオゾマシキ行いに想像が追いついてないらしい。
「その懲罰房から一歩でも外に出た場合、懲罰の時間は24時間追加される旨、忘れることなきように! 以上!!」
ただ普通の、いや、とても豪華な部屋で三日間暮らすだけ。
確かに多少は不自由ではあるが、その何が刑になるのか未だ解らないのだろう。
なので、初日の夜から教えてやった。
具体的にはニャンニャンとニャンニャンした。
『女殺し』の称号は素晴らしいな、スピカが二倍ニャンニャンしている。
ニャンニャンがニャンニャンニャンニャンだ!!
その甘ったるい声を一晩に渡り聞かせ続けられるシャウラであった。
「ほら、スピカ、あ~ん♪」
「あ~ん♪ ナナシ様もぉ、あ~んしてぇ?」
「仕方がないなぁ。美味しく食べさせてくれよ? あ~ん♪ スピカはスプーンを運ぶのが上手だなぁ」
ことあるごとに、甘えあい、そして、いたるところにキスを交し合う。
ふふふ、リア充リア充。
リア充爆死しろと言う言葉が生まれるくらい、人の不幸は蜜の味で、人の幸福はニガヨモギらしいな。
全く同じ食事が提供されているはずなのに、シャウラの箸……じゃなくて、スプーンは進んでいない。
「ほら、スピカ、あ~ん♪」
「あ~ん♪ ナナシ様もぉ、あ~んしてぇ?」
「仕方がないなぁ。美味しく食べさせてくれよ? あ~ん♪ スピカはスプーンを運ぶのが上手だなぁ」
シャウラの手の中で金属製のスプーンがひしゃげる音がした。
もちろん、夜のお勤めも忘れない。
ニャンニャンをニャンニャンし続ける。
途中『ゴールデンフィンガー』、そして、『コンドルofカトゥ』のスキルを手に入れた。
MPを多少消費するが、これでニャンニャン倍率が更にアップだ!!
スピカの体力が少々心配だが「まだ、大丈夫だよぉ、ナナシさまぁ~♪」と、答えたのでまだ大丈夫なようだ。
大丈夫だ、スピカの方は。
シャウラの方? うん、もう昭和ロボットを通りこして、カラクリ人形にまで退化した。
「スピカの好きなものって、なんだ?」
「え~? それは~、ナナシ様!! ナナシ様が大好き!!」
「はっはっはっはっは、俺もスピカが好きだぞ! 大好きだ!!」
そうして交わされる唇と唇。
「じゃあ、俺の好きなスピカにあ~んをしてもらおうかな?」
「はい、あ~ん♪」
「うむ、美味い!! スピカに食べさせてもらえるととても美味しく感じるな!! じゃあ、お返しのあ~ん、だ」
「あ~ん♪ えへへ~、美味しいね。ナナシ様に食べさせてもらうと美味しく感じるね♪」
シャウラは何もないところで口を開けたり閉めたり、こちらの『あ~ん♪』に合せてエア行動を行なっていた。
どうした? 口をパクパクさせて肺呼吸を忘れた魚にまで退化したのか?
四足歩行を超えた退化ぶりだな、肺魚シャウラよ。
さ~て、夜は楽しいニャンニャンタイムだ。
シャウラの方には、あえて目を向けていない。
罵詈雑言よりも無視の方が世の中には堪える場合があるのだ。
スピカの好感度もMAXを軽く振り切って、ラブラブフィーバーモードに突入だ!!
MAX? 限界? そんなものは何処かの凡人が勝手に決めただけのものだ!!
さぁ~て、今日もニャンニャンとニャンニャンx2倍xExスキルのラブラブチュッチュだ!!
今日も今日とて、甘い声がロイヤルなスイートに相応しい嬌声が響き渡る。
ロイヤルで! スイートな! 甘い喘ぎ声だ!!
それが何度も、何度も、繰り返し部屋の中に響き渡る。
……ちょっとやりすぎた、スピカが気を失ってしまった。
そして一晩中、なんだかカリカリと爪で鉄を削るような音がし続けたが、それは無視しておいた。
安心しろ、鋼鉄製だ、シャウラの爪でどうにかなる一品では無いぞ。
昼間はラブラブ、夜はもっとラブラブ。
テレビの向こうで見る分には問題がないのに、どうして傍で見せ付けられると人の心は乱れるのだろう?
シャウラ人形が能面を超えてトーテムポールになっていた。
喜怒哀楽、その全てが交じり合った、混沌と狂気の邪神像。
スピカもちょっと流石に可哀想になってきたようだ。
可哀想と言うよりも、明確に引いていた。
悪戯心の強いスピカであるが、このアマイチャ攻撃がシャウラをここまで追い詰めるとは思わなかったのだろう。
そう、俺の精神攻撃に4.5倍のボーナス効果があるとは知らないからな。
「ほら、口を開けろ、あ~ん♪ だ」
「う、うん。あ~ん……ねぇ、ナナシ様? シャウラのこと、許してあげて?」
「ははは、スピカは優しいなぁ。軍需物資と軍資金の横領の罪を許してやれとは。しかし、その優しい心もスピカの素敵なところだ。いいだろう、優しい言葉を掛けて励ましてやれ、優し~い、言葉をな」
スピカの頭を撫でて、面会の許可を出した。
意図的に無視するように最初に言い含めておいたのだ。
テテテと音を立てるように二つの部屋を仕切る空気という見えざる壁に近寄って、スピカが優しい言葉を送る。
「あのね、シャウラ。ごめんね。こんなに酷いことになるなんて思わなかったの。ごめんね、シャウラ……」
トーテムポールが能面に、そしてカラクリ人形から昭和ロボットに進化した。
流石はわんわん、立ち直りが早いな。
「ごめんね、シャウラ……」
ポロポロと涙を溢すスピカは本当に優しい銀色猫さんだ。
なんて残酷な真似をしてしまうんだろう。
そしてシャウラは涙をポロポロと溢すスピカの小さな身体をギュッと抱き締めた。
「ううん、良いの。私が犯した罪だもの。ナナシ様の物やお金を勝手に使った罰だもの。私は、ちゃんと、受け止めてみせるから、大丈夫!! あともう少しだもの、安心して! ちゃんと乗り越えてみせるから!!」
お互いに抱擁しあう二人の少女。
その美しき友情の姿に俺は涙した。
おお、なんと、なんと、うつくしいゆうじょうだ!!
「スピカ、お前は優しいな。その優しさを大事にするんだぞ?」
「はい、ナナシ様」
「シャウラ、お前も優しいな。その優しさを大事にするんだぞ?」
「はっ、ナナシ様」
そして、涙が止まらない俺は、こう続けた。
「では、シャウラ!! 懲罰房より脱走を試みた罪により24時間の刑の追加を申し渡す!!」
優しさは優しさ、罪は罪。
なんて非情な世界なのだろう?
優しさが罪を生んでしまうなんて。
スピカを抱き締めたシャウラの身体は『懲罰房』から確かにはみ出していた。
「い、いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!」
おぉ、一瞬にしてトーテムポールにまで退化しおったわ。
ははは、あと24時間余りでどこまで退化するかな?
HAHAHAHAHAHAHAHAHA!!
以上、戦果報告終了であります!! サー!!
シャウラ……可哀想……。
でも、主人公は軍曹殿より、もっとえげつなき行為を幾万単位で行なわれているので気にしないのです!! サー!!