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第四話 内なる敵との戦い

 俺は、絶望した……。

 死にたい。でも、死んだら軍曹殿が待っている。サー!!

 つまり生きるも地獄、死んだら地獄以上の再訓練!! サー!!

 いや、今、再訓練を受けるのは、以前よりももっと不味い状態で御座います!! サー!!


『鑑定対象:男色家(称号)

 男性・雄の貞操を奪った男性に与えられる称号。

 男性・雄に対する魅力度10%アップ。

 女性・雌による性的魅了遮断効果。

 サキュバスやニュクスなど男性魅了系モンスターを相手にした場合に効果絶大の素晴らしき称号』


 はっはっは、あまり乳が豊富な方で無いとは言え、年頃の美少女とお風呂で裸のキャッキャウフフしても『俺の俺』が反応しないわけだ。

 はっはっはっはっはっはっはっはっ、はぁ……。

 何が『素晴らしき称号』だっ!!

 性欲を持て余しても、対象が……くっ、ギルド受付のジェロームおじさんの三角筋、上腕二頭筋が美しく……。

 SAN値がこんなことで削られるなんてっ!!

「……えーと、聞いてるか? アンタをご指名のモンスター退治や迷宮探索の依頼がわんさかと来ているんだが?」

 俺はジェロームを極力視界から外しながら、依頼内容を聞く。

 右を見る。強面の筋肉質な冒険者達が居る。

 左を見る。優面の筋肉質な冒険者達が居る。

 ここは……パラダイス? ムキムキ筋肉パラダイスなの?


 いやっ!! 違うっ!!

 俺のパラダイスはここじゃないっ!!

 俺のパラダイスには既にワンワンとニャンニャンの金と銀の美少女が完備されてるんだっ!!


「あー、片っ端から依頼書を寄越してくれ。Lvも功績値も腐るほど余ってるだろう?」

 Lvはこのギルド最高の87、功績値は十万を軽く越えて、これもこのギルドの最高値。

 俺が受けられないなら他の誰にも受けられない仕事だろう。

 俺とパーティーを組まないか? と、誘ってきたイケメン強面筋肉兄貴も居たが、俺のギルドカードを見せるとスゴスゴと去っていった。

 残念だ……。

 え? 何が!? 俺は今何をっ!?

「まぁ、確かにな、アンタに紹介できない仕事は無いが、アンタに紹介するのを躊躇うような仕事の依頼状も一杯だぜ?」

 パラパラと依頼書の束を捲る。


 えーっと、村の付近にダンジョンが発生した、これを探索してダンジョンの中枢を破壊して欲しい。

 報酬はダンジョン内の宝物類、モンスターがドロップする素材の全て……ビリビリっとな。

 これ、依頼じゃないだろ?

 ただ、ダンジョンに入って自分で宝探しするだけの話だろ。


 えーっと、村の付近で大蛇が発見された。被害が出る前にこれの退治をお願いしたい。

 報酬は討伐した大蛇から得られた素材の全て……ビリビリっとな。

 これも依頼じゃないっと。


 えーっと、村の付近でゴブリンの集落が発見された。被害が出る前。

 報酬はゴブリンが溜め込んだ財宝の……ビリビリっとな。

 この世界の人間は仕事の依頼という契約の基本を理解していないのか?

 全部、自分の懐を痛めることのない名ばかりの報酬だ。


『パパパパーパーパーパッパパー♪』

 うん? 今度は何の用だステータス。

『守銭奴の称号を入手しました』

 ……守銭奴ちゃうわ!!

 経済の原則わかっとんのかっ!?

 依頼をするなら身銭を切れっ!! 当たり前のことを言ってるだけじゃ!!


「あー、さっきから破いてる依頼状だけどな。依頼というよりも危険なモンスターの発見報告なんだわ。一応、依頼という形を取っているけど経験値稼ぎとか、功績値稼ぎとか、素材集めとかの情報としてギルドに入ってきたものだから破らないで欲しいな。まず、アンタに回して、興味が無いならやりたいやつに回すだけだからさ。それでも興味が持たれなければゴミ箱行きだ」

 あ~、なるほど、そういうことだったのか。

 すまん、村人よ。

 モンスターの発見情報網の草の根活動の成果だったのか。

 じゃあ、それを心がけて次を読み進めていこうか……。


 えーっと、村の近くの遺跡にサキュバスが住み着いた。

 村の男達が腰砕けの骨抜きになって仕事にならない。コレの退治を……よし、退治しよう。

 俺がこんなに苦しんでいるというのに毎晩毎夜、美女のサキュバスとイチャイチャしている村の男達が憎い……のではなく、世の為、人のために働くことは良い事だ!!

 モンスターとはいえ美女との甘美なる一夜を経験しまくった挙句、現実の女房の顔を見て絶望するが良い!!

 甘美な夢から冷めたとき、お前の嫁さんがサキュバスなみの美人だと良いな!!

 HAHAHAHAHAHAHAっ!!


 ◆  ◆  ◆


 高価な剣を二本持って、いざ、古代の遺跡に突入。

 サキュバスが住み着いたというわりに、なぜだか羽の生えた痩せ型のデーモン的なモンスターで一杯だ。

 剣を二本持つ理由は単純、両刀使いの称号を得る為だ。

 称号の『男色家』が忌々しくも消せない現状、両方いけちゃうようにすることが最善手だろう。

 えぇ、『剣士』の副業と『二刀流』の称号を得られましたよ?

 これ、ステータスの野郎は絶対に私怨で動いてるよね?

 いつか殺す……。

 コマンドーを敵に回したことを後悔させてやる……。


『鑑定対象:二刀流(称号)

 二本の片手剣や片手斧を持ちながら、左右ともに武器の性能を100%で発揮できる。

 また、二本の武器を重ねた特殊な武器の使い方も会得できるようになる』


 遺跡と言うのは古代文明の遺物であるらしく、古代文明とは何なのかといえば古代にあった文明だ。

 久しぶりに構造体から文明進歩の度合いを分析してみよう。

 建築様式はパルテノンな白い石造り。

 はい、もう大したことが無いことが判明した。

 だって、折れた柱の中に鉄筋すら入って無いんだもの。

 とりあえず、TNT火薬の製造すら行なわれていない文明の産物だろう?

 魔法の空飛ぶ船はあったとしても、音速を超える戦闘攻撃機は開発されてはいないのだろう?

 最低限、突撃小銃の一つも用意してから古代文明を名乗るがいい!!


「ナナシ様は相変わらずお凄いですね。さきほどからサキュバスの群をこともなげに切り伏せて、それでいて手傷ひとつ負わないなんて」

 金色ワンコ乙女騎士シャウラが語った。

 サキュバス? そんなもの倒した覚えは……あれ? さっきから倒してきた痩せ型のデーモンがそれ?

 悪魔の羽根があって、腰周りはやけに細く、胸部には無駄な膨らみが……。

 あぁ、よく見れば美人っぽい生き物だわ。

 ……本格的に不味いな、完全に性的魅了効果を遮断した結果、女性として認識すら出来ていなかった。


『鑑定対象:サキュバス

 人間の女性と同等の大きさをした夜魔モンスター。

 男性や雄の発情を促す分泌液線を口中に持ち、これをガス状に噴霧することで異性を発情させて虜にする。

 魅了の魔法でも毒物でもないため、これを解除する手立ては自然に排出されるのを待つか特殊な手段を用いる他無い。

 虜にしたうえで、性的な交渉を楽しむ、あるいは、無抵抗な異性を捕食する特殊なモンスター。

 または、虜にした異性に対して装飾品や金銭、美食を求めることもある。

 その特殊な捕食行為に特化したために総じて戦闘能力は低い。

 敵対対象が女性である場合には逃亡、あるいは極めて低レベルの魔法攻撃を仕掛けてくる。

 だが、称号・男色家を持つ者にはとってはただのか弱い女型モンスターでしかなく、聖職者の男性にとっては脅威では無い存在』


 あぁ、サキュバスを鑑定したのに、この世界の男性聖職者の標準的な性的嗜好についてまで理解できてしまった。

 修道士達は日々、衆道の道に励んでいるのですね?

 生殖行為ではないのに生殖者とはこれいかに!?


 もう何もかもが嫌になったので、ためしにワンコ乙女騎士シャウラを先頭にして遺跡を進んでみた。

 ワンコなのにサキュバスとのキャットファイトが始まった。

 複数のサキュバスに距離を取られながら包囲されて、極めて低級の魔法攻撃をこれでもかと喰らいつつ、サキュバスの円陣の中央で防御状態で固まり、イジメのような言葉と魔法の集中砲火を受けて半泣きになったので、スニーク状態のままグルリと一周のテイクダウン&チェインキルで赤いネックレスを量産して廻った。

 こういう時は長剣よりもホブナイフの方が便利だな。

 ワンコは根が真面目すぎるのか、敵との接触時に足を止めて一度構えてしまう癖がある。

 これは相手にとって観察の機会と距離をとるための隙を与える行為なのであまりよろしくない。

 結果として、円陣の中央で「バーカバーカ、色気無しの青春乾燥女~♪」と魔法以外の精神攻撃までをも受ける羽目になるのだ。

 精神攻撃……いや、正しい言動なのでサキュバスなりの忠告だったのかもしれない。

 そして、俺は新しい称号『外道』を得た。


『鑑定対象:外道(称号)

 仲間を生贄にして自己の利益取得を謀った者に与えられる称号。

 MEN値の減少を10%抑える効果がある。

 称号、鬼畜を持つ場合、鬼畜外道に統合されてより高い効果を得られる』


『鑑定対象:鬼畜(称号)

 他者を生贄にして自己の利益取得を謀った者に与えられる称号。

 SAN値の減少を10%抑える効果がある。

 称号、外道を持つ場合、鬼畜外道に統合されてより高い効果を得られる』


『鑑定対象:鬼畜外道(称号)

 鬼畜にして外道。人としての道を踏み外した者に与えられる称号。

 SAN値の減少を30%抑える効果がある。

 MEN値の減少を30%抑える効果がある。

 また、意識的に良心の呵責を感じなくすることが出来るようになる』


 はっはっは、新しい称号を得たことで統合進化しおったわコイツ。

 ステータスよ、貴様は俺をいったいどんな戦闘生命体にしたいのだね?

 まぁ、コマンドーとは正しくキリングマシーンなのだけどね?


 テイクバックからのチェインキルで惨殺した中から、ギーコギーコと体の上にある新鮮なトロフィーを一つ調達。

 それを後ろ手に隠し持って、サキュバスの集団との出会い頭に、胸元へパス。

 パスされたトロフィーを受け取った集団の視線がトロフィーに集中し、そのおぞましさに意識の空白を作ったサキュバス集団の首筋を左右からの連続したアバンなストラッシュで首を狩る。

 この逆さ持ち手の剣の振り方、通常の剣士の腕力では刃筋を精妙にコントロール出来ない失敗技と判明したが、Lv87ともなると簡単なことだった。

 自分は軍曹殿にまた一歩近づけたような気がします! サー!


 ワンコ乙女騎士とニャンコ魔法少女はその鬼畜にして外道な所業に対して俺の後ろでガタガタ震えておりました。

 そうやって新しいトロフィーを追加し続けるとまた新たな称号を獲得した。


『鑑定対象:グリムリーパー(称号)

 即死攻撃を一定数以上成功させ命を刈り取った無慈悲な者に与えられる称号。

 生命の息吹を感じられるようになり、より効率よく命の刈り取りが行なえるようになる。

 そして、生きとし生ける者に『死』を想像させる恐怖の『殺気』を浴びせることが可能となる』


 MPを使用しないパッシブスキル『ライフフォースセンサー』を身に付けて、さらなる効率的な命の刈り取りが可能になりました。

 な~んとな~く、そちらの方向に生き物が存在することを感じられるのです。

 新感覚野取得。これでセブンセンシズに一つ加えてエイトセンシズの使い手に。俺の小宇宙が高まりすぎ。

 それからはもう農夫の鎌が麦藁を優しく刈り取るようにサクサクと、楽しい命の収穫祭の始まりだぁ!!

 途中からは刃を傷つけることなく骨の隙間を狙って首を跳ね飛ばして新しいトロフィーの補充も簡単になりましたな。

 そもそも、『殺気』を飛ばすだけで敵は恐怖によって瞬間的に動けなくなるので、もう新しいトロフィーも必要では無くなったのだが、そこはもはや趣味。首狩りは芸術だ。

 俺にとって、『殺気』によって生じたコンマ秒もの意識の空白があるなら、それは刈り取り完了と同意なのだ。

 しかし、無慈悲な者に与えられる称号って……即死させることなく苦痛を与える死に様の方が無慈悲じゃないか?

 俺の俺とのさよならバイバイさせられた経験上、痛めつけ苦しめて殺す方がよほど無慈悲だと思います! サー!


 それから子一時間のハーベストなトロフィーの収穫タイムが終了。

 ラストスタンドしていたのは俺一人だった。

 ワンコとニャンコは最終的に四足歩行に退化していたので、二本の足で立っていたのは俺一人だった。

 古代文明遺跡内部のサキュバスを皆殺しにしても、たった2レベルアップのLv89か、流石に上がり辛くなってきたな。

 あいるはサキュバスが弱すぎたのか。


 さて、命の波動を失った遺跡内部からお宝探しの時間です。

 まず最初のお宝は、サキュバスさんの『性フェロモン』。

 どんな枯れ果てた男性をもハッスルさせる希少な体液を頭蓋の内部から採取採取。

 副業のオゾマシキモノ(仮)から仮免許が取れました。あと捕食者(仮)の仮免許も。

 何も喰ってないのに……喰ってないのに……。

「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 でも、トロフィーは大好きです。自宅に集めないけどね?


 あとの適当な貴金属や古代の魔法の品の回収は四足歩行のワンコとニャンコに任せました。

 遺跡内部は敵……いや、生命体がいないのだからもう安全だろう。

 人間になって戻ってこいよ……。

 さすがはサキュバスも女、キラキラしたものやピカピカしたものが大層お好きだそうで、村の男達から色んなものを色んな形で絞りに搾り取ったようだ。

 うん、魔物と言うより凄腕キャバ嬢だな。枕営業付きの。

 キラキラ好きは女の業か……ホブゴブリンよ、お前も苦労したのだな……。

 愛用だけれど、いつでも使い捨てる気は満々のナイフ、ホブ丸の柄をそっと撫でた。

 もちろん、回収した全ての貴重品は俺のものだ。

 それが結婚指輪だろうが親の形見だろうが、サキュバスに捧げられた時点で村人に所有権は無い。

 心神喪失状態での契約? それだけ美味しい思いをしたんだろうが、貴様等はっ!!


 しかし、ここに来てレベル上げの無意味さに気が付いた。

 例えば、レベルが1上がるごとに1割のパワーアップが単利計算で行なわれるとする。

 ではレベル90になれば、常人の90割、つまり九倍の力を持てるようになる。

 それはオリンピック選手よりも凄い身体能力だけれども、大型トラックが九人の人間に向かって突っ込んできた図を想像してみよう。

 結果はもちろん皆殺しだ。全滅轢殺間違いなしだ。

 どれだけ人としてレベルを上げてもブラックドラゴンに身体能力が及ぶことは無いだろう。

 あのジャイアントブラックベアに対してもだ。

 アイアンアントの一匹が相手ですら怪しいものだ。人の拳は鉄より柔らかい。

 強化する素体として人体は弱すぎるし脆すぎる。

 あるいは職業が勇者ならば結果は違ったのかもしれないが、あいにくと勇者は副業中だ。

 まいったな、ある一定以上の膂力や背丈を持つ敵となれば正面切って戦うことすらおぼつかない。

 ……いや、そもそも、どんな敵でも正面切って戦う気がないのだから、俺は一切まいっていないのか?

 絶対必滅兵器『エイナルプラッガー』は形状やサイズを問わずいくらでも用意出来る。

 だが、多用することによって称号を進化させられる恐れがある。

 いや、恐れではなく、確実にその隙をついて奴は新たな称号を与えてくるだろう。

 俺の最大の敵は俺のステータス表示だっ!! 俺を一番困らせて居るのは貴様だっ!! ステータス!!


 内なる敵との未来の一戦に戦意を高揚させていると、金色ワンコ乙女騎士シャウラがボロボロの姿で戻ってきた。

 それも、ろくな探索の成果も見せず、つまり手ぶらで戻ってきた。

 銀色ニャンコ魔法少女スピカはホクホク顔の無傷な姿で戻ってきた。

 少女とはいえ女、キラキラやピカピカは大好きなのだろう。

 祭りの縁日の屋台に一個100円のピカピカのアクセサリーが売られていた理由が、今、この異世界にて理解できた。

 悲しい……本能なのだ……。


 ◆  ◆  ◆


「ワンコ騎士……ではなかった、シャウラよ。どうしてそんなにボロボロなんだ?」

「ナナシ様、この遺跡は罠が多すぎです……。少し進むたびに矢が飛び出してきたり、床に穴が開いたり、槍が突き出してきたりで、全然、探索できませんでした……」

「え? 罠なんてあった? キラキラした宝物と古代魔法の遺産で一杯だったよ?」

 ここは正直村と嘘つき村への分かれ道なのだろうか?

 二人の所見がまったく正反対に食い違う。

 確かにトラップ……というのも口にするのはおこがましいほどの稚拙な罠は敷設されていた。

 だが、よほどの迂闊さが無ければ引っ掛かる事もあるまい?


 ためしにワンワン騎士シャウラを先頭にして歩かせてみた。

 まずは、道の真ん中を歩く、そして、道端になにかを見つけ、テテテと近寄り、ポチリとボタンを踏み抜いて、槍衾に串刺しにされるところだった。

 槍の穂先が経年劣化でボロボロになっていなければ、即死か、即死以上の酷い目にあったことだろう。

 俺の知る限り、即死は一番優しい死に方だっ!!

 ジャイアントブラックベアの死に様を思い出せ!!

 シャウラは持ち前の勘の鋭さと、鋭敏な動きでそれを避けるが、無傷とはいかないようで、鎧に傷がついていた。

 なるほど、罠の発見率は100%、そして踏み抜く確率も100%。

 ある意味、罠解除のスペシャリストだ。

 全ての罠を漢解除とは乙女騎士の風上においてやっても良いかもしれない。


 次に、ニャンニャン魔法少女スピカを先頭にして歩かせてみた。

 まずは道の真ん中を歩く。ぴょんとトラップ起動の床板を跳んで避けた。

 次に、俺もぴょんと跳んで避けた。

 最後に、シャウラが床板を踏み抜いて、落とし穴に落ちた。

 気合で穴の中の壁面を蹴り、側面の壁に剣を突き立てて止る雑技団も裸足で逃げる曲芸を見せてくれた。

 下には錆びた槍のデストラップ。

 俺は思わず拍手した。

 凄いな、うちのワンワン乙女騎士の罠の漢解除能力。


 ともに、トラップの発見率は100%。

 ただし、引っ掛かる確率は0と100。

 好奇心は猫を殺すというが、実際に好奇心が強いのは子犬の方だ。

 なんにでも興味を引かれ、なんにでも簡単に轢殺される。

 猫の首輪にチェーンがつけられないのは自らの知恵で生きる能力をもつ証明でもあったのだろう。

 犬は、自ら、死にに行く。まさしく犬死だ。


「スピカ。探索の戦果は宝飾品に貴金属に宝石がたくさん。それに魔法のアイテムもいっぱい。なので、今回もご褒美だ」

「えへへ~、またお風呂が良いなぁ。あ、でも、ナナシ様とデートもしたいかも~」

 スピカは猫なのに行水が好きなようだ。

 最初は「んっ」としか言わなかった子猫も、最近は馴れてきたのか多様なコミュニケーションが取れるようになった。

 ……性的なコミュニケーションを除いて。


「次にシャウラ! 探索の戦果は皆無かつ、与えられた防具に武器の破損。その他もろもろの迂闊な行動を含めて罰ゲームだ」

「えぇぇぇぇぇ!! わ、私、頑張りましたよ!?」

「頑張ったことと成果が出たことは違うっ!! この世は成果主義だ!! その認識の甘さから罰ゲーム追加だ! 期待しておけ!!」

 そう、軍曹殿は決して努力を認めなかった。努力、全力に務めることは軍人として当然の話であり、戦果、リザルトだけが評価の対象であった。サー!


 ◆  ◆  ◆


 サキュバス退治が終ったことを村人達に伝えた。

 依頼人に対して仕事の完了を伝える事も任務の一部だからだ。

 男達は一斉に肩を落とした。妻帯者は妻の顔を見て、蒼褪めた。

 うむ、素晴らしき光景かな。

 人助けはやはり気持ちが良いな!!


「うちの村から『盗まれた』装飾品や金銭の類を返して欲しいんじゃが……?」

 いけしゃあしゃあと村の村長である長老が申し出てきた。

 枯れた男でさえ虜にする発情ホルモン。

 貴様も回春させて貰った口だろうが?

「盗まれたのではなく自ら捧げたものだろう? 自ら捧げた以上、貴様等に所有権は無い。返却を求めるなら出るべきところに出るんだな。サキュバスに騙されて貢がされたなんて大恥を何処に出て訴えれば良いのか解らんだろうがな。ふはははははは!!」

 ぐぅの音もでない回春村長殿。

 何回だ? お前は何回、相手をしてもらった?

 俺が呪いに苦しんでいる間に、いったい何回、相手をして貰ったんだ? ん~?


 とりあえず、一泊だけ、村のはずれの小屋を借りて宿泊していくことになった。

 親の形見を買い取りたいと言う人々も居るだろう。

 お家に十分な金銭が残っていると良いな。

 小屋の中にはスピカとシャウラ。

 俺は、小屋の外の木の上でゴロ寝をしていた。

 何かを勘違いして暴力でカタがつけられると思い込んだ強盗が徒党を組んだ際の対策だ。

 弓によるサイレントなキルで片っ端から永遠に眠って貰おうじゃないか。

「いいな? ちゃ~~~~~~~~~~んと、正当な対価は取るんだぞ? シャウラ」

 シャウラは乙女だが騎士、金勘定が出来ないほど無学では無いだろう。

 なにしろ一国の姫の護衛を務めた逸材、数字の計算も基礎教養として学んで居るはずだ。

 と、いうわけでもはやそれが自然状態のスニークに身を任せて小屋を一晩見張る。

 自分は連続162時間までは眠らずに活動できることを訓練で証明済みです! サー!


 まず、若い男性が来た。

 シャウラを若い女と思って舐めてかかり、剣で浅く四肢を切り裂かれて逃亡した。

 次に、中年男性が来た。

 シャウラを若い女と思って舐めてかかり、剣で浅く四肢を切り裂かれて逃亡した。

 それから、年老いた男性……村の長老が来た。

 シャウラを若い女と思って舐めてかかり、剣で浅く四肢を切り裂かれて逃亡した。


 なぜ、その有能性をダンジョン内で発揮できない?


 それから、年老いた老婆がやってきた。

 『代々家に伝わる家宝』と風の音に聞こえた。

 シャウラとの交渉は成立したのか、何度も何度も頭を下げて去っていった。

 次に、中年のオバサンがやってきた。

 『家族が冬が越せない』と風の音に聞こえた。

 シャウラとの交渉は成立したのか、何度も何度も頭を下げて去っていった。

 次に、若い女性がやってきた。

 『母親の唯一の形見』と風の音に聞こえた。

 シャウラとの交渉は成立したのか、何度も何度も頭を下げて去っていった。


 うんうん、乙女騎士シャウラには十分な商才もあったようだ。

 ちなみにシャウラくん、軍需物資の横領は極刑だから覚悟しておくように。

 極刑に極刑が重加算された場合は、死ぬより辛い目にあうことを覚悟しておくように。

 それが軍曹殿より賜ったコマンドーの掟なのだ! サー!


 ◆  ◆  ◆


 王都に戻ってきた一行は、大きなお風呂でお馴染みのロイヤルスイートな部屋に宿泊を決めた。

 ここはいい、下手に擦り寄ってくる連中を自動的に排除してくれるサービスつきだ。

 最低限のドレスコードすら守れない、あるいは、用意できない人間は入店自身を物理的にお断りされる。

 なので、一部屋を年間貸切で借りておいた。金持ちになると見知らぬ友達と親戚が増えるものだ……。

 異世界に俺の親戚が居るとは思わなかったよ。


 金色の髪が湯のなかでゆらゆらと揺れて、大きめの脂肪の塊がプカプカと浮かんでいた。

 本人は顔を真っ赤にしながら、見られていることを恥ずかしがっているし、触れられるたびに、身体を硬くした。

 銀色の髪も湯のなかでゆらゆらと揺れて、小さめの脂肪の塊はお湯の中に沈んでいた。

 本人は何の気なしのようでありながら、それでいて、ちょっと恥ずかしがりながら、触れられるたびに、くすぐったそうに身もだえした。

 ふにゃふにゃの棒がゆらゆらと揺れて、お湯のなかで所在なさげに沈んでいた。

 肌と肌を触れ合わせるのは心地が良い。

 唇と唇を触れ合わせるのも心地が良い。

 手の平のなかで、柔らかく、形を変える四つの膨らみもとても触り心地の良いものだった。

 肌や唇が触れ、膨らみを撫でる度に艶やかな声が浴室内に響いた。

 何度も何度も触れ合わせ、そして、室内に甘い声を響かせ続けた。

 二人は俺の指先の動きにあわせて踊りを踊るように腰をくねらせて敏感に反応を見せた。

 甘い吐息が甲高い喘ぎにかわり、そしてガクガクとした一際大きな身震いと後ひく甘く大きな嬌声のあと……ひくひくと二人が身体を震わせてお湯のなかで、俺にその身を預けてきた。

 甘くて熱い二人の吐息が俺の首筋を優しく撫でていた……。

 そして、ふにゃふにゃの棒がゆらゆらと揺れて、お湯のなかで所在なさげに沈んでいた。


 俺は……泣いた……。


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