愚人
空の青さに見とれていると、猫が道を横切った。遠くから眺めているように見えて頭は猫を捕まえるシミュレーションをしている。後ろから人の足音がする。何事もなかったかのように、再び歩き出す。
次の瞬間には猫と対峙していた時のことなど頭にはない。そして空の青さも忘れてしまっている。ただ恥ずかしさのあまり、あてもなしにうろうろ彷徨っているのだ。のどが渇いたな、と思う。自動販売機へと歩いていく。すると先ほどの足音の主が追い越した。小学生くらいの女の子。その姿を見た瞬間、微笑ましいような気持になって、先ほどまでの恥ずかしい気持ちは忘れてしまう。もう少し猫を観察してればよかったなと思う。すると道のわきに猫じゃらしが生えているのが目に入る。まだあそこに猫がいるかもしれない。ちょっとこれでからかってやろう。猫じゃらしを引き抜き、道を引き返す。すると向かい側から自転車が走ってくる。猫じゃらしを大事そうに持っているのが恥ずかしくなる。猫じゃらしの穂をちぎってしまう。自転車は見向きもしないで通り過ぎていく。猫じゃらしの柄を人差し指にくるくる巻きつけながら空の青さに気付く。今日もいい日だな、と思う。