異世界モンスター登場!
三人は歩きます。
森の中を歩き続けます。
しりとりにも飽きてきたので本格的に暇になりました。
「いやいや。暇じゃなくなったみたいだぞ」
「みたいだね~」
「へっ。ようやく面白くなってきやがった」
芽久琉はぺろりと舌なめずりをしました。太もものホルスターに仕舞ってあるハートレスを取り出しながらじゃきんと構えます。
「えっへっへ~。めぐちゃん楽しそう~」
そう言いつつ、正宗もコートの内ポケットから手裏剣を取り出しています。
「おうよ。こっちは下ネタしりとりに付き合わされていい加減腐ってきてたところだからな。ここいらでストレス発散しとかねえと」
「めぐちゃんも下ネタ言ってたのに~」
「あの状況であたしだけまともなこと言い続けてたら疎外感バリバリじゃねえかっ!」
「素直じゃないんだから~」
「あたしはいつでも素直だ!」
そんなやりとりをしながらも、三人の周りをモンスターが囲んでいきます。
大きな蜂型モンスターでした。
芽久琉と正宗の身長の半分ぐらいあります。蜂にしては論外なサイズですね。さすが異世界モンスターです。
目の部分が綺麗な藍色をしています。
「じゃ、頑張ってね」
そして桐羽はそんな二人の後ろで応援しています。戦う気ゼロです。
幼女に守って貰ってもらいながら、自分はのほほんとカロリーメ●トを囓る最低野郎です。
「仕方ないじゃん。僕、戦闘能力ないんだし」
誰に言っているのでしょうね。
しかし心配は無用です。
芽久琉は両手にハートレスを構えながら、
「おらおらおらーっ!」
ぱっきゅんぱっきゅん乱れ撃ちです。その全てが正確に蜂モンスターの胴体を撃ち抜いていきます。ばたばたと地面に落下する蜂モンスターはその中身を遠慮容赦なくぶちまけてしまいます。綺麗な羽根も穴あきにされてしまってちょっぴり惨めな死に姿です。
十体の蜂モンスターのうち、五体をあっという間に片づけてしまいました。
そして正宗の方も、
「えへへへ~。それっ! えいやっ! てやや~!」
両手の手裏剣を投げつけては手元に回収しながら、蜂モンスターの羽根を的確に切り落としていきます。
所詮どれだけ大きくても蜂です。羽根をもぎ取ってしまえばのろのろと地面を這うことしかできません。
あっという間に残り五体の羽根をもぎ取ってしまいました。
「えへへ~。蜂なんて所詮羽根を取ってしまえばみみずと大差ないよね~」
ぐりぐりと蜂を踏みつけながら言います。ドSです。
取り出した忍者刀で、ざっくんざっくんと中心部を刺していきます。
「ざっくざっくざっく」
とても楽しそうです。
という感じで二人ともあっという間に片づけてしまいました。異世界においても戦闘能力チートっぷりは健在のようで何よりです。
「お兄ちゃん終わったよ~」
「ん。ご苦労さん」
褒めて褒めてと擦り寄ってくる正宗の頭をなでなでしてあげます。
「………………」
そして何か訴えるような視線を桐羽に向けてくる芽久琉に対してもなでなでしてあげます。
「芽久琉もご苦労さん。偉い偉い」
「……ふん。別に褒めて欲しくてやった訳じゃねー」
ちょっとだけ紅くなりながらそっぽ向きます。
ツンデレっぽい反応です。
勘違いしないでよねとか言って欲しいです。
蜂モンスターの死体を確認した桐羽は、ナイフを使って大きな眼球を抉り取っていきます。
とっても残酷な行為ですが、これにはもちろん理由があります。
「何やってるんだ?」
「んー。異世界ライトノベルとかだと、モンスターの素材アイテムが高く売れちゃったりするから」
「その目玉が売れると思うのか?」
「確証はないけど、多分。ほら、見てみな」
「どれどれ?」
桐羽が指さした眼球に芽久琉がそっと触れます。
「お?」
すると柔らかいはずの眼球が石のように固まっているのが分かりました。
「な? ちょっとした宝石みたいだろ? 死後硬直なのか、元々こうなのかは分からないけど、見た目が結構綺麗だし、うまくすれば素材アイテムとして売れるんじゃないかと思って」
「なるほど。異世界だしな。色々試してみるってわけか」
「そゆこと」
「はいは~い。わたしもお兄ちゃんを手伝う~」
正宗がくないを取り出して眼球えぐり出し作業を手伝い始めます。
「傷つけないように気を付けてな」
「らじゃ~」
二人でやればあっという間に終わりそうなので、芽久琉は手伝うよりも周辺警戒を担当することにしました。不意打ちで襲われないようにするのも大切な仕事です。