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おいでませ異世界

 異世界へと転移した三人は、お約束の如く空から地上へと真っ逆さま……とはなりませんでした。

 深い森の中に立っていました。

「ここが異世界か?」

 桐羽の腕から離れた芽久琉は興味深そうに眺めます。

「一応、ある程度街から離れた場所に転移するよう調整しておいた。この世界に転移手段があるかどうかも分からないし、下手をすると大騒ぎになりかねないからね」

「そりゃ賢明な判断だ。ただのおっぱいマニアじゃねえな」

「当たり前だよ。僕はおっぱいだけじゃなくて下着も大好きだ!」

「……威張って言う事じゃねえし」

「っていうか女の子全般好きだ!」

「赤ん坊からご老体まで~?」

「……せめて幼女から熟女あたりで」

「それでも十分にストライクゾーン広いわな……」

 芽久琉は心底呆れ返りながら溜め息をつきました。気苦労の多い幼女です。

「お兄ちゃんは下着だけじゃなくてスクール水着とブルマーも萌えるんだよね~」

「当然だ!」

「今度着てあげるね~」

「マジか!?」

「まじまじ~」

 そして駄目な引率を更に駄目にしてしまう変態トークを繰り広げる忍者幼女なのでした。

 桐羽も変態ですが、正宗と二人揃うと更に加速してしまいます。

 悪循環なようで相性の良い二人です。

「好きにしてくれ……」

 そんな二人を呆れ混じりに見守るのが芽久琉の役割です。

 十一歳にして余計な苦労を背負い込みすぎな気がしますが、周りが特殊なので仕方がありません。

「ちょっと待ってね~。上に昇って確かめてみるから~」

 正宗がひょいひょいと樹の天辺まで登って周りの地理を確認します。

 懐から望遠鏡を取り出して、ぐるっと辺りを見渡しました。

「えっとね~、東の方角におっきな街があって~、西の方角には小さな村があって~、北の方角にはお城が見える~」

 望遠鏡で眺めながら逐一報告をしてくれます。

 一通り確認が終わると樹から飛び降りてきました。……樹を伝って降りるのではなく、そのまんま飛び降りています。

 足の骨が折れてしまいそうな行動ですが、もちろん怪我一つしていません。これも忍者スキルです。

「どこに向かう~?」

「そうだなぁ。城は論外として、情報を手に入れるなら村よりも街だよな。手持ちのアイテムを換金するにしてもやっぱり街の方が便利だろうし」

「じゃあ街で決定だな」

「そうと決まればれっつらご~」

 芽久琉は桐羽の右手を、正宗は左手を繋ぎながらいざ東へと旅立ちます。

 幼女と旅する異世界道中はそれなりに順調な始まりを迎えているのでした。


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