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十五年後にウェルカム

 諸々の面倒的な手続きを終えて桐羽達がサイハテの家に戻って来たのはそれから三日後の事でした。

 住み着いてから日が浅いので不在中に誰かが訪れたということもなく、郵便受けも空っぽでした。

「ただいま我が家!」

「そしてウェルカムメイド!」

「お兄ちゃんに手を出さない限りは歓迎するよ~」

「大丈夫です。私、おじさん趣味ですから」

 それぞれの歓迎台詞と共に漏れたのは、セシアの意外な性癖でした。

「んなっ!」

 二十歳という青年にとってショックな事実を告げられた桐羽はあんぐりと口を開いたまま固まってしまいました。

 アテが外れたどころの話ではありません。

 セシアが家に来た折には、あんなことやこんなことやそんなことをして貰おうと思っていた計画が台無しじゃないですか。

「セシアってそういう趣味なんだ。ちょっと安心した」

「そうだね~」

 芽久琉と正宗もほっとしたようで、心の底からセシアを歓迎する気になりました。

 めでたいことです。

「ええ。中年男性の放つあの独特な体臭がたまらなく好きでして……」

「……いや、詳しいことは言わなくていいから」

「ってゆーか聞きたくない~」

 ウットリ顔でおじさまの魅力を語るセシアは危険人物以外の何者でもありません。

 教育上よろしくないどころか、精神衛生上間違いなく害悪なトークを始めてしまいそうな確信があった幼女ツインズは速攻でストップをかけました。

 賢明な判断です。

「あ、でもご主人様が伽を望むのでしたら頑張りますけど」

「マジですか!?」

「ええ。仕事ですから」

「んな」

「え~!」

 ベッドインすらも仕事と割り切れるセシアさんはきっと必殺仕事人になれることでしょう。

「……仕事でベッドインって、ちょっぴり切ないかも」

 愛無きプレイは苦手な桐羽でした。

 愛と言うほど大袈裟なものではありませんが、それでも完全割り切りでお相手されていると思うとどこかのソープ嬢に弄ばれている気分になってよろしくありません。

「諦めな、キリ」

「そうだよ~。わたし達がいるよ~」

 落ち込む桐羽を健気に慰める幼女ツインズです。

 これで物足りないとか言っていたら世界中のロリコンから鉄拳制裁を喰らわされるべきだと思います。

「うぅ~……」

 手を出すことに躊躇いのある幼女がいてくれても何の慰めにもならない桐羽でした。

「うん。諦める。さすがに割り切りお仕事ジョブ気分でお相手されるのは悲しすぎるし……」

「うふふ。十五年後なら喜んで本気でお相手しますよ~。ご主人様は素敵な中年になりそうですし」

「いやだぁぁぁぁぁぁーーっ!」

 それはもう桐羽自身ではなく中年という属性にしか興味がないと断言されたようなものです。

 人選ミスだったかもしれないと激しく後悔してしまう桐羽なのでした。


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