めでたしめでたし?
それからセシアの引っ越し手続きを開始します。
「うーん。サイハテで仕事をするのは構わないですけど、母のことが問題ですね。さすがに頻繁にセキバへ訪れる訳にもいきませんし」
ううん、と腕を組んで悩むセシアに、桐羽は提案をしました。
「じゃあセシアのお母さんもサイハテに引っ越しちゃえばいいんじゃない?」
「か、簡単に言わないで下さいよ。母は長時間の旅に耐えられるような体力は保っていませんし、本格的に移転するなら転移術師に依頼しないと……」
確かに馬車に長時間揺られる旅は体力の少ない病人には厳しいかもしれません。
「んーと。よし分かった。じゃあそっちの問題は僕たちが何とかする」
「え? なんとかって出来るんですか? もしかしてご主人様達が転移魔法の使い手だったりするんですか?」
「まあ似たようなものかな」
「……キリ、もしかして」
「アレを使う気?」
「仕方ないだろ。人に見られなきゃ大丈夫だろうし」
旅の鍵による転移を使うつもりのようです。
問題は一度地球世界に転移してしまってからサイハテに再び座標固定して転移するという事になります。
自分たちが異世界の住人だということを知られたくない桐羽達にとって、これは極力避けたい手段のはずです。
「転移の件は必要経費扱いで無料でやってあげる。ただし、一つだけ条件がある」
「条件、ですか? もちろん無料でやっていただけるのでしたら大抵の条件は呑みますが」
「眠っていて貰う」
「え?」
「僕たちが扱う転移魔法は人に知られたくない、いわば機密扱いの代物なんだ。だから見られるわけにはいかない。眠り薬でも使って意識を奪い取ってからサイハテへと送る。大丈夫、眠って目が醒めたら僕たちの家についてるから。お母さんの入院先についてはそのあとに考えればいいだろう。部屋数に余裕があるから入院先が見つかるまで泊めておくことは問題ないし」
「い、いいんですか?」
「構わないよ。その分仕事で返してくれればいいし」
「が、がんばります!」
こうしてメイドさんをゲットしました。
めでたしめでたし?




