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セキバ道中皮算用

 二人の幼女にボディーガードされながら、桐羽はセキバの国へと向かいます。

 幼女と旅する異世界道中再びですね。

 ようやくお家に落ち着いたかと思ったのに、メイドをゲットするために再び旅立つのが水無月桐羽という男の中の男的な行動なのです。

 芽久琉が様子を見に行ったときは地理把握も兼ねて徒歩で移動していましたが、今回は乗合馬車での移動になります。

 馬車の中には桐羽、芽久琉、正宗の三人と、老夫婦が乗っていました。

「お嬢ちゃん達はセキバの国に何の用があるんだい?」

 世間話ついでにお爺さんが聞いてきました。

「んー。ちょっと行ってみたいっていうのと、家で働いてくれるお手伝いさんを探しに行くんだよ~」

「おやまあ。サイハテの街で依頼すればそれぐらいすぐに見つけられそうなものなのに、どうしてセキバまでいくのかしら?」

 今度はお婆さんが聞いてきました。

 わざわざセキバまでお手伝いさんを探しに行く理由が非常に気になるようです。

「セキバの国の料理が故郷の味によく似てるんだ。だから料理を担当して貰う予定のお手伝いさんにはセキバの料理を作って欲しいってところかな」

 今度は芽久琉が答えました。

「だったらセキバに移住すればいいのに」

「そうしたい所だが、僕もこいつらも混沌荒野が近くにある場所に本拠地を構えてしまったからな。高い金を払ってゲットしたマイホームだし、それに素材アイテムを気軽に調達できるあの場所から簡単に移動するのも勿体ないと思って」

 お爺さんの言葉に今度は桐羽が答えます。

「ということはお前さんたちは冒険者なのかい?」

「一応チームで冒険者ギルドに登録してるけどな。それでもバトル担当はこいつらだから僕は冒険者とは言い難いかも」

「って、お嬢ちゃんたちが!?」

 お爺さんが驚いて芽久琉達を見ます。

 とても戦えるようには見えなかったのでしょう。

 見た目だけで判断すれば当然ですが。

「おう。すでにバジリスクやフレアドラゴンなんかも退治してきたぜ」

「ゴルゴンは結構いいお金になったよね~」

「………………」

「………………」

 混沌荒野でも特に厄介とされている魔物達の退治エピソードを気軽に話されてしまって絶句する老夫婦でした。

 嘘だと断じるのは簡単ですが、二人の表情や言葉の雰囲気はとても嘘をついているもののそれではありませんでした。

 自分の力を誇張するために敢えて自慢するようなエピソードとして語るのではなく、単なる日常の一場面を思い出すように語る二人は、ごくごく自然な様子だったのです。

「世の中にはすごい子供がいるんだなぁ」

「ですねぇ。常識を覆された気分かも」

 しみじみとそんなことを呟きます。

 気持ちは分かりますけどね。

 九世芽久琉と捧正宗は異世界においてもやはり特殊なようです。


 馬車は順調に進みます。

 あと五時間ほど走ればセキバの国にたどり着くことでしょう。

 幼女ツインズは暇になったらしく、桐羽の膝でおねむです。

 すやすやと眠っています。

 お陰で桐羽の両膝は幼女の頭に占領されてしまい、ちょっぴり重たいです。

「随分と懐かれてますな」

 お爺さんが微笑ましそうに言います。

「あはは。まあ、それなりに……」

 懐かれているどころではなくエロい方面も含めてバリバリ求愛されてるんだけどね~……とはさすがに言えません。

 間違いなく変態呼ばわりされてしまいます。

 芽久琉達も余計なことは言っていないので、ここは黙っておくのが吉でしょう。

 桐羽としても二人のことは憎からず思っているのですが、しかし幼女に手を出すのは避けたいところです。

 そこを踏み越えたら間違いなく自分は堕ちるところまで落ちてしまう確信があります。

「そうやっているととても強そうなお嬢さんには見えないわねぇ」

 すやすや眠る二人の頭を撫でてあげながら、お婆さんが言います。

「ん~」

「みゅ~」

 身を捩った二人は桐羽の太ももを撫で回します。

 寝惚けていてもセクハラを欠かしません。

 ちょうど二人の身体にかけられた毛布で隠れているので、内ももを撫で回されていることに、老夫婦は気付きません。

「………………」

 じわじわと二つの手が股間付近に近づいてきています。

 本当に寝惚けているのか疑いたくなります。

 ヤバい位置に到達したら反撃に出ようと決意しました。

「っ!」

 突かれました。

 どことは言いませんがヤバい位置を突かれました。

 老夫婦は気付いていません。

 微笑ましそうにこちらを見守るだけです。

「ふ……」

 桐羽は口元を歪めました。

 反撃準備の決意です。

 そろそろと幼女ツインズのお尻に手を伸ばして……

「きゃうっ!」

「あふんっ!」

 ……何をしたのかは敢えて語りません。

 というかさすがに書けません。

 書けないようなことをしたとだけ書いておきましょう。

 幼女のお尻に……げふんげふん。

「酷い目に遭った……」

「お兄ちゃん酷いよ~」

「酷い目に遭いかけたのはこっちだっつーの」

 毛布の中でお尻をさすりながら恨みがましい眼で見上げてくる幼女ツインズですが、それ以上に恨みがましい眼を彼女たちに向けているのが桐羽でした。

 毛布で隠されているとはいえ、老夫婦の前でセクハラをされようとしていたのですから、一体どんなプレイだよと訴えたいところです。

 この幼女ツインズは見た目に反してエロすぎます。

 目的地まではあと一時間といったところでしょう。

 セクハラを諦めた幼女ツインズは大人しく桐羽の膝ですやすやしています。

 ずっとこうなら楽なのにとうんざりしつつも、桐羽は二人の頭を撫でてやります。

 なでなでしたいのではなく、ちょうどいい位置に頭があったので手を置いて動かしているだけですが。

「………………」

「………………」

 芽久琉と正宗が同時に起き上がります。

 荷物の中からハートレスと各種武器を取り出してから険しい視線で馬車の外を睨みます。

「お嬢ちゃん?」

「どうかしたのかい?」

 老夫婦が怪訝そうに二人を眺めます。

 そして、

「ひっ! 地熊が出た! に、逃げないと!」

 馬車の外から、つまり馬車を操っている人間の声が聞こえてきました。

 声というよりは悲鳴ですが。

 馬車が激しく揺れます。

 地熊に追いつかれないように必死で逃げているようです。

「きゃっ!」

「しっかり掴まっておれ!」

 老夫婦が振り落とされないようにしっかりと縁を掴みます。

 そんな中、桐羽達三人は冷静でした。

「地熊だってさ」

「初めてだね~」

「分捕れる素材アイテムは毛皮と爪だったかな?」

 図書館で仕入れた知識を頭の中で照合します。

 地熊は山間の地域で出没するモンスターで、一般的な熊よりも凶悪だといわれています。

 地熊の名の通り、大地の力を味方につけているので地系の魔法も使いますし、中途半端な傷なら大地から力を吸い取ってすぐに回復してしまいます。

 モンスターというよりは精霊に近い存在ですが、ここまで凶悪化しているのならカテゴリーとしてはモンスターで十分でしょう。

「じゃあ行こうか」

「頑張る~」

 芽久琉と正宗はのんびりとした足取りで馬車の幌をめくります。

「いってら~」

 桐羽はそんな二人を当然のように見送ります。

「ちょっと危ないよ!」

「戻って来なさい!」

 老夫婦が慌てて二人を止めようとしますが、その時にはもう馬車の外に飛び出してしまいました。

「………………」

「………………」

 唖然とする老夫婦ですが、桐羽は落ち着いたものです。

「そんなに慌てなくてもあの二人なら大丈夫ですよ」

「だ、大丈夫って言われても……」

「ねえ……」

 芽久琉と正宗の戦闘能力を知らない老夫婦は不安そうに顔を見合わせます。

 自分たちが危険に晒されることもそうですが、何よりも飛び出していった二人の事が心配なようです。

 桐羽はのんびりと二人の帰りを待ちます。

 馬車は地熊から逃げるために走り続けています。


 一時間後……

「ただいま~」

「大量大漁♪」

 地熊の毛皮と大きな爪を抱えた芽久琉達が馬車に戻ってきました。

 地熊を秒殺してから、皮を剥いで爪を折ってと色々やっていたらちょっと時間がかかってしまったようです。

 馬車は地熊が殺された時点で止まっていたので置いて行かれることはありませんでした。

「セキバのギルドで高く売れるといいな~」

「そうそう。せっかく重たい荷物を抱えていくんだから高値で売らないとな」

 さっそく広げた毛皮に寝転がりながら幼女ツインズが皮算用を始めます。

「爪は少し残しておいてくれよ。ちょっと使ってみたい」

「オッケーオッケー。じゃあ爪は五本ほど残しておこうか。ただし帰りの荷物持ちはキリだけど」

「いや、あっちに保管すればいいだけだし」

 ここでは言えないゲートの向こうの話をしながら、桐羽も毛皮に寝転がります。

 剥いだばかりなので少々臭いが残っていますが、もふもふして大変気持ちがいいようです。

「………………」

「………………」

 そんな三人を唖然とした表情で見つめる老夫婦ですが、もちろん本人たちはそんなこと気にしません。

 芽久琉も正宗も桐羽の腕枕でご満悦です。

 

 セキバ道中は三人にとってとても平和な道のりなのでした。


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