異世界IN宿屋INN
空腹を満たした三人は宿屋を探すことにしました。
「お兄ちゃんとベッドINN~」
「いかがわしい言い方をするな」
「いかがわしくないもん~。幼女二人に囲まれて眠れるなんてお兄ちゃんったらロリコン冥利に尽きるでしょ~?」
「僕はロリコンじゃない」
「説得力ねえし」
両手に幼女を侍らせておいてさすがにそれはないでしょう、みたいな?
大体幼女二人に好意を寄せられておいて何が不満なんでしょうねこの男は。
●●爆発しろと世のロリコンから呪いを浴びせられればいいと思います。
ギルド会館のお姉さんに教えて貰った宿屋に到着した桐羽達は、さっそくその扉を開くことにしました。
「いらっしゃいませご主人様!」
そして開いた瞬間、メイド服を着たお姉さん達が揃いも揃ってそんな事をのたまってくれたのです。
「おおう! め、メイドがいる! 異世界にメイドがいる!」
それは光り輝く女神像を見つけたときのような感動でした。
もちろん桐羽も萌えを愛する成人男性の一人としてメイド喫茶にはよく足を運びますが、まさか異世界の宿屋にてその幸せにありつけるとは夢にも思っていなかったのです。
異世界万歳! ビバ異世界!
「お兄ちゃん、よだれよだれ~」
「おっと、いけないいけない」
正宗に白い眼で注意されながら、慌てて口元を拭うのでした。
「三人でお泊まりですか?」
「はい」
「「ベッドは一つで!」」
「………………」
桐羽がトリプルの部屋を頼む前に芽久琉達が先手必勝で手を上げました。
「……ええと、三人で一つのベッド、ですか?」
メイドさん、顔が引きつっています。
保護者を見る眼ではなく、変態を見る眼になっています。
幼女も大好きですが、お姉さんもメイドさんも大好きな桐羽にとって、この視線を向けられることは耐えがたい苦痛を伴ってしまいます。
「うぅ……これには色々と事情がありまして……」
「事情なんてないもん~。お兄ちゃんはわたしとめぐちゃんのものなんだから~」
「そうだそうだ。あたしたちのさくらんぼに手出しをさせてたまるか」
「だからさくらんぼじゃねえっ!」
人聞きの悪過ぎることを一般の宿屋のカウンターで、しかも美人なメイドお姉さんが揃っている中でいわないでくださいと切実に訴える桐羽でした。
「他にもメイドサービスプランというのがありますが」
一応商売なのでサービスプランなどを提示してくれるお姉さんですが、
「ど、どどどどどんなサービスでしょうか!?」
「………………」
食いつきがよすぎる桐羽の反応にドン引きしてしまいました。
一体どんなサービスを期待しているのでしょう?
「……まずはお部屋にメイドが一名待機して、常にご主人様の命令を待っています。更にはお食事やお風呂の世話など、さまざまなご奉仕が受けられます」
「……夜のサービスは無いんですか?」
「そ、それは別のお店で探してください」
「がく……」
「………………」
目に見えて落ち込んでしまった桐羽を前にして、対応に困ってしまうお姉さんです。
「あれ? でもお風呂の世話ってエロくない? 『お背中流します~』とかタオル巻いて来ちゃったり? い、いいかも……」
「……水着着用ですが」
「がーん!」
「そ、そこまで落ち込まなくても……」
宿屋のサービスに一体何を求めているのでしょう?
「でも水着は水着で萌えるかも……? スクール水着とかだったら……」
いや。メイドにスクール水着はありませんから。
無しですから。
「あと『あーんしてくださいご主人様』とか言われたら……」
「ご、ご希望であれば……」
元々そういうお客に対応したサービスなので、メイドのお姉さんもそっちの方は了承してくれるようです。
「じゃあメイドサービスプランでお願いしま……くぴぽ!?」
お願いします……と最後まで言うことは出来ず、桐羽は両サイドから幼女ラリアットを食らってしまいました。
幼女は幼女でも戦闘能力抜群なハイパー幼女ですから、ダブルラリアットはかなり強烈なダメージを桐羽に与えてくれました。
「「ベッドの大きい部屋を一つお願いします!!」」
「め、めいど……ぐはっ!」
ぴくぴくと身体を震わせながらメイドサービスプランを要請しようとしていますが、今度は芽久琉の肘鉄を食らって黙ることになります。
暴力の雨あられですが、桐羽は基本的に頑丈なので後遺症は残らないでしょう。
残るのは精神的ダメージですが、そこは自業自得ということで。
「か、かしこまりましたご主人様っ♪」
なんだかこの三人には深く関わらない方がいい気がするということを本能的に悟ったメイドお姉さんは、ひきつった笑顔と共に大きなベッドが一つの三人部屋を確保して鍵を渡すのでした。
とても賢明な判断だったと思います。
鍵を受け取った芽久琉と正宗は動けなくなってしまった桐羽をずるずると引き摺りながら部屋に移動するのでした。
「お兄ちゃんったら気絶しちゃって大変だね~。わたしたちが介抱してあげなくっちゃね~」
「そうだな。二度と戯けたことを言えないようにしっかりみっちり教育してやらないとな」
「………………」
介抱なのか拷問なのか分からない物言いに背筋が寒くなる桐羽でした。
この二人を抱えている限り、女の子にデレデレすることも難しいという悲惨な事態になってしまったと気付いたのは、夜も深まった頃、両腕を使って幼女に腕枕をしてあげてしまった頃でした。
両腕ですやすやと眠る幼女二人組。
ロリコンにとっては実に素晴らしいお時間なのですが、桐羽は幼女マニアではなく女の子大好きなので、たまにはおっきなおっぱいも恋しくなるのです。
「巨乳もみもみしたい……」
手の先をわきわきさせながら切なげに呟いてしまいました。
この二人のいないところで、何とか美女のおっぱいを揉むチャンスをものにしてみせると意気込むのでした。
……趣旨が変わっています。
異世界移住計画はおっぱい妄想の彼方にいってしまいました。
「ま、とりあえずこれで我慢するか……」
ともあれ、幼女も嫌いではないのでそれはそれで愛でる桐羽なのでした。
色々爆発すればちょっとは改心するかもしれません。




