第六話
「えーと、それじゃ大雑把に説明するね」
リナさんはパチンッ!と指を鳴らした。すると、空中に地図(この世界のものだろう)の画面が映し出された。
「この世界は八つの大陸によって出来ているんだ。ファルナ大陸、ベイル大陸、ガヴェイン大陸の三つが一番大きい大陸で、次にサーファス大陸、ヴェーナ大陸、ファン大陸、ラース大陸、マイラ大陸となってる。まあ、地形はあまり覚えなくてよかったんだけど、予備知識として覚えておいてね!で、ここからが重要なんだけど――」
真剣な顔つきになり、リナさんは言った。
「この世界で死ぬと現実世界でも命を落とす」
「――え?」
ここで死ねば現実世界でも死んでしまうってことなのか?
理不尽だ。俺は怒りを覚えた。なぜ勝手に連れて来られた世界で死ななければいけないのか。
そんな俺の様子を見てから、リナさんは言った。
「けど、さっき私はこの世界で死ねば現実世界でも死ぬといったけど、この世界に来た時点で彼方君の体の中の魂が五つに増えているの。だから、もしこの世界で一度死んでしまっても、後四回死ぬまで、本質的には死なないということなの」
「……てことはつまり俺は四回までなら死んでも蘇るってことなのか?」
「その通り。じゃ、次に説明に行くわね」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。そんなこと……できるはずない……。一人の人間の魂を五つに増やすなんて、どうやったらできるんだ……?」
「そんなのはこの世界を作り出した創造主にでも聞いて頂戴。私はその件についてほとんどの情報を開示されてないからね。次の説明いくよ?」
……これ以上、押し問答をつづけても無駄か。本当はかなり気になるが、知らないのならここで聞いていても埒が明かない。そう判断した俺は、彼女に説明を先に進めるよう、促した。
「といってもなぁ……」
「どうしたんですか?」
「実は今ので説明終わりなんだよね~。てへ♪」
「……は?」
「というわけで、いってらっしゃ~い!またどこかでね~!」
リナさんはそう言って、手を振った。
「いやいやいや!もっと説明……して……もらわなければ……。あれ……頭がぼやけ……。」
瞬間頭の中が真っ白になり、またしても闇の中に意識が落ちていった―――――。
彼がいなくなった後、リナはため息をついた。
「……いるんだったら出てきてください、《観察者》さん」
「おやおや、気付かれていたのか。これは一枚取られたよ、《案内役》クン」
いつの間にか、リナの横に白衣を着た男が立っていた。
「名前で呼んでください。そのほうが落ち着きますから」
「わかったよ、リナ君。それはそうと彼のことだが、彼は不思議な力を持っているね。かれならもしかすると《創造主》をも凌駕するかもしれないなぁ」
「確かにそう……。まずいですね。JOKERがこの場所に気付いたようです」
「そうか。じゃあまたどこかで」
「ええ。またどこかでお会いしましょう」