『病弱な幼馴染』の真実
「すまない、ルイーゼ。 またエリースから呼び出されたんだ」
月に一度のお茶会の日、来て早々婚約者であるレナード・サレンルチア様は申し訳無さそうに頭を下げた。
「そうですか、仕方がありませんわ。 どうぞエリース様の元へ行ってあげてください」
「ありがとう、ルイーゼ。 君は本当に理解があるよ」
そう言ってレナード様は去っていった。
私はカップに入ったお茶を飲んだ。
(理解のある、ですか……、別に理解がある訳ではないんですよ、レナード様)
内心そんな事を思って苦笑いをした。
それから数日後、私の元にある報告が入った。
レナード様が亡くなったのだ。
(遂にこの日が来てしまったのね……)
私は知っていた、いつかこの日が来る事を。
レナード様は町外れの廃墟で倒れているのを発見された。
その表情は恐ろしい物を見た様な表情で何よりも全身がねじ曲がっていた。
余りにも不自然なその死について国は調査を開始した。
当然だが私にも事情聴取があった。
「王太子様自ら調査をされるなんて熱心ですわね」
「レナードとは学友だからね、まぁ父上から命令されたからでもあるんだけど」
私の元にやって来たのはハースト・グランベル王太子様だ。
私とレナード様とは学院の同級生であり生徒会の一員だ。
「それでルイーゼ嬢、君は何か知っているかい?」
「単刀直入に聞きますわね、一応私は婚約者を亡くしたんですが」
「それにしては随分とあっさりしているじゃないか」
「私を疑いに?」
「いや、レナードの死因は常識外だ、外傷は無いから魔獣に襲われた、という事は考えにくい。 それに何故あの場所にいたかも疑問だ」
「サレンルチア公爵様は何か仰っていましたか?」
「いや、公爵も夫人も話を聞ける状態ではない」
「そうですか……、ところで王太子様、エリース・ハイヤードという方をご存知でしょうか?」
「いや、聞いた事が無いな……」
「レナード様の幼馴染で体が弱く社交の場には出てこられないそうです」
「そうなのか、レナードからそんな話を聞いてないな」
「えぇ、レナード様も1年ぐらい前に連絡をいただいて再会したそうでそれ以降は頻繁にお会いしてるそうですよ」
「頻繁にか」
「えぇ、私との約束をすっぽかす様にもなりまして……、最初の頃は腹が立ちましたわ」
「そうだろう、いくら病弱であっても所詮は幼馴染だ、婚約者を蔑ろにしていい理由にはならない」
「それで、何度目のキャンセルの時に余りにも腹が立ったので1度そのエリース嬢に文句を言ってやろう、と思いまして後をつけていった事があるんです」
「随分と行動的だね、それでエリース嬢には会えたのかい?」
「いいえ、会う事は叶いませんでした。 だってエリース嬢は既に亡くなっていたんですから」
「……え?」
私の発言に王太子様は固まった。
「レナード様が向かったのは例の廃墟でした。 外から見たら誰もいない空間でレナード様は楽しげに1人でお話されていました。 背筋がゾッとしましたわ。 それで私エリース嬢について調べてみたんです」
私は王太子様に1枚の紙を見せた。
「ハイヤード男爵家は確かに実在していてエリース嬢もいました。 ですが10年前にお取り潰しになったそうです。 その直後にあの家で家族全員変わり果てた姿になったそうです」
「取り潰し? 何か良からぬ事をしたのか?」
「なんでも詐欺にかかって全財産を失くしてしまったそうですわ。 国から貴族としての責任を問われての取り潰しだそうです」
「父上ならそう判断するだろうな……」
「ですが、問題はその詐欺が誰の手によって行われたか、という事です。 その当時ハイヤード男爵家の他にも同じ様な詐欺に引っかかりお取り潰しになった家がありました。 その家は全てサレンルチア公爵家と関係がありました」
「……それはつまりサレンルチア公爵が詐欺をしていた、という事か?」
私はコクリと頷いた。
王太子様は固まっていた。
「サレンルチア公爵家は当時財政難だったそうです、それで詐欺に手を出したんだ、と思いますわ」
「なんという事だ……、公爵家自ら犯罪に手を染めるなんて……」
「因みにですがエリース嬢は確かに病弱でした。 ただ薬を飲み続ければ回復されるぐらいの症状だったそうですが、薬を買う金も無くなり症状は悪くなる一方……、男爵家はかなり無念でしょうね、そしてサレンルチア公爵家に対する恨みもどれほどのものか……」
「それがレナードに向いてしまった、という事か……」
「えぇ、ですがそれで終わりとは思えませんわ、多分これからサレンルチア公爵家にはまだ災いが起こるかもしれませんわ」
私のこの予感は的中しサレンルチア公爵家はまもなくして夫人が亡くなり公爵も亡くなった。
公爵に至っては自室から窓から突き破り飛び降りたそうだ。
その時、公爵の体はあらぬ方向にねじ曲がっていたそうだ。




