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2話 惑星改造は手際良く


 地球の上空。


 青い星は静かに回っている。

 雲が流れ、海がきらめき、まだ魔法の“ま”の字も知らない文明が光を放っていた。


「……さて」


 俺は足を組み、虚空に腰掛ける。


「やるか。惑星改造」

「言い方が物騒なんだよね」


 ミロが隣で指先を上げる。


 その動きに呼応するように、空間そのものが薄く発光した。


「まずは器だね」


 ミロが呟く。


 地球全体を覆うように、巨大な魔法陣が展開される。


 それは幾何学模様でもあり、演算式でもあり、契約書でもあった。


 光の線が人類一人ひとりの魂へと伸びる。

 赤ん坊の魂にも、戦場の兵士の魂にも、等しく光は触れた。


「個体識別完了」

「早くね?」

「たった七十八億だし、こんなもんでしょ」

「怖」


 光が“枠”を刻む。


 魂の奥に、透明なウィンドウが生成される。


 まだ誰も気づかない。だが確実にそこにある。


「種族:人間」

「固定か?」

「うん、今はね。でも進化枠は残すよ」


「レベル制?」

「当然」


「HPMPある?」

「ある。あとSTR、DEX、INT…… 身体情報画面を追加」


「お、わかりやすい」

「地球人向けだからね」


 ミロが淡々と数式を組み上げる。


 俺は横から口を出す。


「スキルは?」

「条件達成型。努力が反映される仕様」


「なぁ、ガチャ要素入れね?」

「炎上するでしょうが」

「炎上もエンタメだろ?」

「初期は安定優先ね」


――――


▽ ステータス雛形


【名前】未登録

【種族】人間

【レベル】1


【HP】100

【MP】30


【STR】10

【DEX】10

【VIT】10

【INT】10

【AGI】10

【LUK】5


【スキル】なし

【称号】なし


――――


「基礎値は平均化して、こんな感じになるように設定してみた」


「努力反映型だよな?」

「うん。運動してる個体はSTRとVIT伸びやすく、知能が高い個体はINT補正」


「ちゃんと報われる世界だ。良いな」

「隠し要素も入れるけどね」


 ミロが指を軽く振る。


 式が変化する。


――――


▽ 隠し仕様


・極限状態でスキル覚醒

・死の淵で称号付与

・特定条件で進化分岐


――――


「これでドラマが生まれる」

「配信映えするな」

「そこが本命なんでしょ」

「よくわかってんじゃん」


 俺が笑う。


 最後にミロが指を鳴らした。


 光が地球全土に霧のように降り注ぎ、静かに消える。


「ステータス実装完了」

「どんくらいかかった?」

「四分十二秒」

「惑星干渉にしては早いな」


「んじゃ次、穴あけるぞー」


 俺が地球へ向けて手を伸ばす。


 空間がきしむ。


 都市の地下、砂漠の奥地、海底、山脈の中心。


 “世界の薄い場所”に亀裂が入る。

 それは物理的な穴ではない。次元の折り目。

 裏側へ続く入口。


「日本は多層地下迷宮」


 地中深く、幾何学的な石造迷宮が形成される。

 石壁が組み上がり、階層が重なり、魔力が循環する。石壁の隙間に、どこからともなく鳥居が現れる。


「アメリカは広域型フィールドダンジョン」


 荒野が別次元へと接続され、永遠に続く荒廃都市が生まれる。


「北欧は氷結系」


 吹雪と氷の神殿が凍てつく空間に固定される。


「南米は密林遺跡」


 巨大な樹木が天を覆い、古代構造物が浮かび上がる。


 それぞれが“世界の裏側”に根を張る。

 地球という果実に寄生する、もう一つの生態圏。


「数は?」

「初期二百三十七でど?」


「増やす余地は?」

「人類の反応次第」

「まあ、いいんじゃない」


「モンスター創ろうか」


 ミロが両手を合わせる。


 光が圧縮され、質量を持つ。


「基本種」


 青い粘液が脈打つ。


【スライム】

 HP:20

 STR:3

 スキル:体当たりLv1


「知能低め。初心者用」


 次に緑の影が形を持つ。


【ゴブリン】

 HP:60

 STR:12

 DEX:14

スキル:短剣術Lv1


「集団行動あり。学習機能あり」

「やられ役として優秀だな」


 巨大な影が翼を広げる。


【レッサードラゴン】

 HP:1500

 STR:120

 INT:80

 スキル:火炎ブレスLv3


「上層限定ね」

「地球人の夢らしいからなー、ドラゴン」


 俺が横から光を奪い、くるくる回す。


「罠番も作ろーぜ」

「性格悪い顔してる」

「褒め言葉だな」


 歯車と鎖と笑う仮面が融合する。


【ギアジャッカー】

 スキル:罠操作Lv3

 特性:逃走優先


「探索者煽り性能高め」

「炎上要因だね」

「絶対盛り上がるだろ?」

「うん、あとは土地別に調整して終わりだね」


「で、本命」


 俺は地球の情報網を掴む。無数の光回線が指に絡む。


「まずは全世界通信掌握」

「やりすぎじゃない?」

「一回だけだから」


 ミロが黒い球のような存在を生成する。


 目も口もない。


「知能なし眷属。記録特化」


 数万、数十万と増殖する。


 それらはダンジョン内部へ滑り込み、壁や天井に貼り付いた。


「ダンジョン内限定カメラ用にね」

「探索者もそのうち配信可能にするよな?」

「段階解放で」


「収益化は?」

「まだ早い」

「夢ないな」

「まずは混乱少なくするのが先でしょ」


 すべてが整う。


 ステータス。

 ダンジョン。

 モンスター。

 観測網。


 俺たちは青い星を見下ろした。


 まだ平和だ。まだ普通だ。


「ゼル」

「ん?」


「地雷案件じゃなくて、当たり案件だったかもしれないね」

「確かに。けっこー勝手やれるし、楽しいもんな」


 俺は笑う。

 ミロも小さく笑った。


「じゃあ――始めよっか」


 数秒後、世界中の通信網が、同時に光る。


『あー、あああ。聴こえてるかー?』

 

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