いつのことだったかしら
いつのことだったかしら
そのねこは
ひとりも駅員さんのいないその駅に
姿を見せるようになったの
駅の改札の横に
まるくすわってね
細い目をして
ねむりこけているの
ときには
そのあたりの空気を
ぜんぶ吸いこんでしまうような
おおきなあくびを
したりするの
その駅をつかう
けっして多くない人たちは
そのねこのことを
ねこの駅員さんといったわ
何年かして
それが
ねこの駅長さんになったわ
たくさんのときがたってね
その駅は
使われなくなってしまったの
小さな建物はこわされてね
なんにもない
まったいらな土地ばかりに
なってしまったわ
でもね
いまでも
あのねこは
駅があったその場所で
細い目をして
ねむりこけているのよ