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芯界  作者: カレーアイス
第二章 騎士入学編
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シュヴァリィ・ドゥリター・ユートロン

 口にアメを含んだ二人が、入学式の会場に入った。

 自由席だったので、適当な場所に二人で座る。


「思ったより人間関係ができているね」

「この学園、学生の七割は貴族だからな。家の繋がりでグループができる」


 まあ、俺はパーティなどにほとんど出ていないので、その辺りの繋がりは無いのだが。

 友達を作るためにも、関係が良好険悪極端な貴族の名前くらいは、父から聞いておいた方がいいかもしれない。


「始まるみたいだよ」

「ん、本当だ」


 少し思考に傾倒していると、いつの間にか式が始まろうとしていた。

 年配の学園長が登壇に立ち、美辞麗句を並べている。

 多分いいことを言っていると思うのだが、婉曲な上に難しい言葉を使うせいで、よく分からない。

 脳が理解することを拒み、右から左に通り抜けていく。


「……なんて言ってるか分かるか?」

「何とかね」

「やっぱ頭いいな」


 諦めてアメ細工でもしようかと、真面目に検討し出した時、ようやく学園長の答辞が終わり、続いて新入生代表の答辞の段となった。


 壇上に上がったのは、(あか)

 深く恐ろしい、炎のような紅蓮の赤。

 靴、服、爪、瞳、髪。全てが赤く、吊り上がった口や鋭い目から、酷く攻撃的な印象を受ける。

 この子も、格式ばった素晴らしいことを言うのかと思いきや、彼女は台からマイクを剝ぎ取り、台に足を乗せて、高らかに宣言した。


『私はこの国の第二王女、シュヴァリィ・ドゥリター・ユートロン! この国の第二王女よ!』


 その大きな声が、会場内に反響する。

 「そういえば、王女が同学年にいるって噂があったなぁ」と思い出しつつ、単刀直入な言葉を聞く。


『今は第二王女だけれど、その立場に甘んじるつもりは無いわ。いずれは姉様を追い抜いて、この国の王女になるつもりよ! この学園で主席になったことから、私の優秀さが分かるでしょう!』

「やめなさい! ここは政治の場ではありません!」

「誰か、芯界に取り込め!」


 体面上、政治とは切り離されている学園で、思い切り次期王の話を始めたことで、教師陣に連れて行かれそうになっていた。

 ただ、相手が王女なので無理はできないのか、どこか手を抜かれており、その隙を突いて発言を続ける。


『私に取り入りたい貴族、自分は絶対に役に立つという自信があるなら、平民でもいいわ! 私の陣営に加わりなさ――』

「もう許さん、Chesst(チェスト) mapp(マップ)!」


 結局、言い切る前に、キレた教師の芯界に捕まっていた。

 一瞬可哀そうだと思ったけど、まあ順当だろう。


「あの人、軍学専攻らしいから、ラギナは授業で会うかもね」

「王になりたいなら、政治学行けよ……」

「第二王女は戦争を重視してるらしいから」

「へぇ……っていうか、イース詳しくない?」

「これくらい常識だよ。ラギナが知らなすぎるだけ」


 ……流石にこの無知は不味いかもしれない。

 せめて、実家に迷惑がかからないくらいにはしないと。



 その後、何故か大学なのにいる生徒会長の挨拶や、来賓の紹介などの末、ようやく入学式が終わった。


「これからどうする?」

「学園内を見て回りたいな。初手は学食からでどうだろう?」

「いいね。行こう」

「あなたが、ラギナ・アークエス?」


 立ち上がろうとした時、聞き覚えがある声がしてきて、見上げると……第二王女、シュヴァリィ・ドゥリター・ユートロンが、俺達を見下ろしていた。


「……そうですけど、何か?」

「来なさい。事情は歩きながら説明してあげるわ」


 ……行きたくなかったが、有無を言わさぬ目に負け、付いていくことにした。


「ちょっと用事ができた。イースは好きにしといてくれ」

「僕も行くよ。役に立てるかは、分からないけど」

「ありがとう。心強いよ」


 立ち上がって、シュヴァリィを先頭に、俺とイース、それにシュヴァリィの付き人一人を連れて、学園内を進んでいく。

 どこにいくかは、まだ検討もつかない。

 歩きながら、彼女は事情を説明し始めた。


「さっき宣言した通り、私はこの国の王になりたいの」

「……それで、うちの家を勧誘したいと?」

「違うわ。いえ、勿論うちの陣営に入ってくれても良いのだけれど、今回は別件よ」

「……?」

「私は、王女になるために沢山勉強してきたわ。そのお陰で、試験では一科目を除いてトップの点だったのよ」

「その一科目とは?」

「実戦」


 まぁ、俺が呼ばれたということは、そういうことだろう。

 軍学科の入試科目には実戦という、試験管と戦って、その出来を点数にする科目があった。

 俺は座学に自信が無く、合格するために全力で実戦に取り組んだ結果、なんと実戦でトップの成績を取っていたのだー。


「試験の順位は、本人にしか通達されないハズでは?」

「そこは、権の力よ」

「……聞かなかったことにしておこう。それで?」

「アナタをぶっ飛ばして、全科目トップと新入生最強を名乗るわ」

「そっかぁ」


 話を聞き終わる頃に付いた場所は、学園の戦闘訓練場だった。

 といっても、芯界のバトルに広い空間は必要ないので、あるのは医療設備だ。

 医療関係は国際技術警察の基準が緩いのか、地球よりも遥かに発展している。

 技術で魔法のポーションのようなものを作ってしまうから、驚きだ。

 というか、即効性や一滴あたりの効果は、ファンタジーの世界を超えているように見える。


「じゃあディーシュ、意識不明の重体になったら、回復させてね」

「お任せください」

「イース、頼んでいいか?」

「うん、分かった。……ちょっと使い方分からないから、説明書読んでおくね」


 一般人のイースは使い方が分からないようだったが、まあ大丈夫だろう。

 負けないから。


 対面に立ち、双方、自身の胸に手を置く。


「ルールは殺害禁止だけとして、痛覚止めは打たなくていいのかしら?」

「師匠から禁止されてるから。それより、このままだと俺が勝った時、メリットが無いだろ?」

「……そうね。失念してたわ」

「だから、俺が勝ったら――友達になってくれ」

「フフッ!」


 シュヴァリィは心底おかしそうに笑い、側近のディーシュという人が俺を睨む。


「そんなに王家に取り入りたい?」

「いや、純粋にあなたと友達になりたい」


 ひとしきり笑った後、彼女はスンっと真顔になり、


「いいわ。やってみなさい!Firester(ファイアスター) Dragavolc(ドラガボルク)!」

Dream(ドリーム) of(オブ) bandy(バンディ)!」


 平民の入学制限があるとかではないです。

 ちょっと試験が難し過ぎるのと、小学校みたいなのが無いので、ある程度財力が無いといけないのです。

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