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芯界  作者: カレーアイス
第二章 騎士入学編
8/72

イース・     

 ブックマークが一個ついてたので更新します。

 騎士団の雑用になってから、九年が経ち、俺は十五歳になった。

 テトレディさんが騎士団を卒業し、第七騎士団が再編されるこのタイミングで、俺も騎士団を抜けることにした。

 今は、そのお別れ会の最中だ。


「本当に行っちゃうの? ラギナ君」

「もう私たちの中でも上位の実力なんだから、このまま正式な団員になればいいのに」

「上位は言い過ぎですよ。まあ、実家からの要請ですので」

「アークエス家か……なら仕方ないね」

「学園でも頑張ってね!」

「はい」


 世話になった人に、次々に挨拶していき……最後に、ベディさんとテトレディさんの二大師匠に挨拶する。


「ベディさん、テトレディさん、今までありがとうございました」

「大げさだよ。生涯の決別じゃあるまいし!」

「やだ、残ってよ! 私の金のなる木!」

「講師契約、解約されてましたよね?」

「いい副業だったのに……」


 どうでもいいことで泣くベディさんを置いて、テトレディさんと話す。


「新天地でも頑張ってください。って、俺が言うまでもないか」

「うん、やることは変わらない。私の正義を為すだけだよ。ラギナ君こそ、頑張ってよ。今まで会って来た中で、君が一番私に近いから」

「……憧れでしたので」


 まあ……最も深い部分で、相反しているのだが。

 テトレディさんもそれを理解しながら、深い笑みを浮かべた。


「君とは遠くないうちに会える気がするよ」

「味方として?」

「さあ、どうだろう?」

「……」

「最後にキスでもしとく? ストック少ないでしょ」

「いらないですよ」

「フフッ、じゃあね!」


 最後は、彼女らしい満点の笑顔だった。



◎◎◎



 俺は、今世は沢山の友達を作ると決めた。

 騎士団のみんなとは、仲良くできてはいたが、大抵年齢が離れており、対等な友にはどうしてもなれなかった。

 だから俺は、同年代の少女が集まる、王都のドゥリター学園に通うことを決めた。


 ドゥリター学園は国の名前を冠するだけあって、かなりの名門で、貴族社会でも憧れの場となっている。

 うちの両親はどちらも学園の卒業生――というか、学園で付き合い始めたらしく、学園への入学は強く勧められた。

 入学年齢は違うが、システムとしては大学に近く、専攻する学問は自分で決める。

 俺が合格したのは、唯一ある科目の試験がある、軍学専攻だ。


(地球よりも文明が進んでるからなぁ。そこの名門となると――うん)


 掛け算で褒められるくらいの世界に行きたかった……。

 苦い記憶に頭を痛めながら、歩いていくと……学園の門が見えてきた。

 低い建物が並ぶ外に対して、学園内は巨大な豆腐型の直方体ビルが並んでいる。

 よく覚えていないが無いが、本当に日本の大学みたいな感じだ。


「慣れるまでは絶対に迷う」


 さて、最初は寮に荷物を置くところからか。

 王都にアークエス家の別荘はあるが、寮に入ったほうが友達ができそうなので、入る。

 幸い、今日は入学式があるので、入寮者のために矢印付きの看板が設置されていた。

 眠い目を擦りながら、学園内を進む。


 ああ、勿論俺以外に男はいないので、男子寮なんてものは存在しない。

 何なら男が危ないとかいう概念も無いので、普通に二人一部屋にぶち込まれた。

 まあ、変なことをするつもりなど毛頭無いので、いいのだが。


「ルームメイトは、付き合いやすい奴だといいな」


 そんなことを考えているうちに、自分のネームプレートが付いた部屋に着いた。

 中から物音がして、同室者の気配がしてくる。

 深呼吸し、軽くノックしてから、部屋に入った。


 扉を開くと、さすが名門校というべきか、机にベッドから、風呂にキッチンまである。

 そして、リビングの端には、荷ほどきをしている少女がいた。


「こんにちは……いや、時間的におはようかな?」


 鉄の様に鈍く光を反射する、灰色の瞳とショートカットにおさげのワンポイントが輝く髪。首に巻いたチョーカー。

 童顔と比較的しっかりした身体から、男性的な印象を受ける。

 その柔和な笑みと、落ち着いた声は、どこか安心するものだった。


「ボクはイース。イース、キルーラ。よろしくね」

「あ、ああ。俺はラギナ・アークエスだ。よろしく」


 うん、これは多分大アタリだ。


「アークエスって、伯爵家の? 僕は普通の家だから、失礼が無いといいけど――」

「気にしなくていいぞ。学園内では家のことは関係無いし、気にかけるつもりも無いから」

「そう? ならよかった」


 彼女は、ホッ胸をなでおろし、「ところで――」と言葉を紡ぐ。


「軍学専攻って聞いたけど、君は強いの?」

「まあ、学園内では中々やる方だと思うぞ」

「そっか、安心した」

「安心?」

「ほ、ほら、強盗とかが来た時に心強いじゃん」

「……」

「ボクは芯界学科だから、いざという時は守ってね」

「オウ」


 芯界学科。

 確か、未だ不明な点が多い芯界について、探求したり、技術利用したりする学科だったか。

 面白そうだなぁ……今度豆知識でも聞こう。


「ん、もうそろそろ時間だよ。荷ほどきは後にして、一緒に入学式に行かない?」

「そうだな。行くか」


 荷物だけ置いて、二人で入学式の会場へと向かった。

 寮に来た時と同じく、看板の誘導に従って進んで行く。


「アメ食べるけど、いる?」

「え? うん」

「甘いのでいい?」

「甘いのは……落ち着く感じの、ある?」

「はい」

「ありがとう」


 ポケットから取り出した、薄いながらも、しっかりとした味がする青色の飴玉を渡した。

 イースは、少しアメを観察してから、口の中に入れ、気に入ったように頷いた。


「うん、いいね。勉強する時に食べてもよさそう」

「常備してるから、いつでも言ってくれ」

「そっか」


 俺を見る目が、一気に変わった人を見る目になった気がするが、気のせいだろう。

 やっぱりアメは最高のコミュニケーション手段だな。


 普通の学園モノとの一番の違い:クラスが無い。

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