表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
芯界  作者: カレーアイス
第一章 少年編
7/72

巨大ロボは正義

「いきなり来られても困りますよ。それも壁を壊して」

「ごめんなさいね!」

「うーん、いい元気」

「……今度からはせめてアポイントを取ってくださいね」


 もうなんかよく分からないけれど、なんとかノンフット伯と接見することができた。

 接客室に通され、対面に配置されているソファに腰掛ける。

 ノンフット伯は中年で少し肥満体形の女性。吊り上がった目に、口角の上がった口で、強気な印象を受ける。


 挨拶握手を一通り済ませ、早速本題に入った。


「突然ですが、ノンフット伯。あなたに脱税の嫌疑がかかっています」

「本当に突然ですね……どうして税務菅ではなく騎士団がお越しになったのです?」

「……うちには優秀な書記官がおりますので」


 その優秀な書記官さん、さっきからずっと本読んでますが。


「ゴホン。単刀直入に聞きます。あなたは辺境の村に重税をかけておりますよね!」

「……どこからそんなホラ話を?」

「そんなことは些細な問題です! いいから、過剰に税を集めようとする理由を吐きなさい!」

「……」


 ノンフット伯が従者に何か指示したかとおもうと――いきなりナマモノが出てきた。

 目算で、一千万といったところか。


「今回は、これで目をつむってくれませんか?」

「中々潔いですね。分かりました、貰っておきましょう」

「い!?」


 出されたお金を、テトレディさんはすぐに受け取り、芯界の中に突っ込んだ。

 ベディさんとは違って、そういうことはしない人だと思っていたから、この行動は意外だった。

 ノンフット伯はさらに口角を上げ――テトレディさんはダンッと机を叩いて立ち上がった。


「ですが! お金を集める理由はお聞かせ下さい。私が力になれることがあるかもしれません」

「……貴族でいるためには、ある程度金がいるんですよ。特に、私はこの家の位を男爵から子爵に上げようと考えておりますので」

「そうですね。貴族と汚い金がイコール関係で結べることは、私も理解しています。が、」


 テトレディさんはマプティルさんに視線をやり……彼女は頷く。


「人が生活できないほどに税を課すのは、度が過ぎている。私は、これが正しいことだと思わない」


 テトレディさんは芯界から戻した金をノンフット伯に投げつけた。

 彼女は顔面にお金の塊を食らい、背後に倒れ込む。

 そんな様子を後目に、テトレディさんは机を蹴り上げて、天井に突き刺し、堂々と宣言する。


「こんな害悪な家、ぶっ潰す! Grandun(グランドゥン)!」


 巨大なロボットが現れ、天井をぶち抜いて蒼然と立った。


「え、やるんスか!?」

『ラギナ君、マプティルをよろしくね!』

「あーもー!」


 マプティルの手を引いて、邸宅から避難しようと廊下を走る。


「あの頷きって、どういう意味だったんですか?」

「あいつの言うことが正しいというサイン。いいから走って」


 初めての邸宅なので、建物の構造が分からないが、ただグランドゥンから離れるために逃げる。

 しばらく走ると、突き当りに外に繋がる窓が見えた。


「破片に気を付けて下さい!」


 アメで手をコーティングし、殴って割った。

 二階からの落下だが、悲しいことにもう慣れた。

 手のアメを流用して、無事に着地する。

 マプティルさんも怪我は無かったようなので、もう少し離れてから、屋敷の方を見ていると――


ゴゴゴゴゴゴ!


 影。

 段々大きくなる巨大な影。

 何が起きているのかと、上を見上げると……隕石が、上空から屋敷に迫っていた。


「なんですか、アレ」

「テトレディの芯界から取り出した隕石」


 そういえば、あの人の芯界の起点は宇宙だったなぁ。

 唖然としながら、その様子を見ていると、従者の方々が慌てて邸宅から脱出してきていた。


「……避難誘導って、雑用に入ると思います?」

「立派な雑用」



 数分後、仕方なくしていた避難誘導が終了した頃、邸宅の中央に隕石が着弾。

 同時に屋敷が連鎖爆発を引き起こす。

 その爆炎の中から、笑顔で歩いてくる、テトレディさん。

 右手には何枚かの紙、左手でトランシーバーを耳に当て、どこかと連絡を取っている。


「そう、田舎の村に対しては、法の規制以上に取ってた。他にも――え、廃嫡? なら屋敷壊してもいいよね? もう壊したけど。うん、今芯界に閉じ込めてる。ベディヘロペアと合流するから、帰るまであと四時間はかかるかな。じゃあ、後よろしく!」


 テトレディはさんトランシーバーを仕舞い、俺達に話しかけた。


「お疲れ。ベディヘロペア達がこっちに向かってるから、もう少し待ってね」


 そう言いながら、芯界に避難させていた人たちを出して、逃がしていく。

 本人が中にいない時に、他の人を入れるのはかなりリスキーなのに……やっぱこの人おかしいよ。


「どうする? 観光でもする?」

「そんな空気じゃないですよ」

「めんどい」

「そっか、ならいいや。ラギナ君、アメちょうだい」

「どうぞ」

 

 テトレディさんにアメを渡し、ついでにマプティルさんにもあげる。


「んん、やっぱり美味しいね」

「少し聞きたいことがあるのですけど……」

「うん? 何?」

「まず、どうして隕石を落したんですか?」

「正義の鉄槌」

「ドヤ顔で言われましても……」

「そうするべきだと思ったから。それが正しいことだと思ったから」


 ……彼女の目から、信念のようなものを感じた。


「もしかして、グランドゥンって――」

「私の正義の体現!」

「巨大ロボは正義だったか」


 なんだろう。

 まだ、彼女のことを測りかねている気がする。

 核心となる部分に、触れられていない気がする。


「どうして――どうして、あなたは自分を正義と言い切れるんですか」

「常に、正しくあろうとしているから」

「ッ!」

「私は騎士団に所属しているけれど、正義を為せないと判断したら、直ぐ抜けるつもり。事情をできるだけ把握するため、マプティルをいつも連れてる」


 ハッとマプティルさんの方を見ると、呑気にピースしていた。

 本から目を離さず、話始める。


「私の芯界はToughive(タッケイヴ) log(ログ) books(ブックス)。触れた相手の、人生の一部が書かれた本を所蔵する、書庫」

「本人から話を聞いて、本から裏をとる。そして、自分が正しいと思ったことをする。それが私」


 そう言って、テトレディさんは笑った。

 これが、彼女の、芯。


「お、来たみたいだよ」


 空を見上げると、町のはずれにベディさんの戦艦が飛んでいた。


「行こっか」

「……もしかして、ジェットパックですか?」

「もちろん」

「諦めろ、新人」


 右脇にマプティルさん、左脇に俺を抱えて、テトレディさんは飛び立った。

 とてつもないGがかかったのは言うまでもない。

 アメで飛ぶ手段を模索するのが最優先かなぁ。


 何はともあれ、俺達は戦艦の甲板に着いた。

 項垂れる俺を置いて、テトレディは戦艦内に入る。


「ただいま!」

「お疲れ様です、団長!」

「うん、みんなもお疲れー」


 テトレディさんが、人混みに飲まれて行く。

 慕われているんだなぁと、思った。

 あの、人の話を聞かない、強引な人がここまで慕われるのは、そのあり方からか。


「常に、正しくあろうとしている」


 もう少し、ここにいよう。まだ学べることがありそうだ。


 少年編はこれで終わりです。

 次から待望の学園編に突入します。

 ブックマーク感想高評価、その他諸々反応があれば、更新頻度が上がります。絶対に(強者感)。


 ……メンタル弱いから、早く0ptから変えて! お願い!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ