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芯界  作者: カレーアイス
第四章 芯界強奪事件
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キメクロプス

「試合開始!」

Demetrular(デメトルーラー)!」

Iskace(アイスケイス) on(オン) the() music(ミュージック)!」

Cyclobeeps(サイクロビープス)!」

Chiramera(キラメラ)!」


 画面左側に広がるのは、鉄くずの世界と氷海の世界。

 始まった瞬間に、デメトルーラーは鉄くずを一握り口に入れて、左腕を変形させ――腕の平な部分にディスクができた。

 まるで、DJのように、右手でディスクを構えた。

 

「準備完了!」

「オーケー、ミュージック、スタート!」


 それと同時に芯界内に音楽が鳴り響いた。

 今回も、オペラ座の怪物。

 合わせてラミリも踊りはじめ、デメトルーラーもディスクで音楽に乗る。

 一見ふざけているように見えるが、大真面目。

 足が無いデメトルーラーにとって、音楽に乗るには、これが一番だったのだ。


「ギィ!」

「いいよ~」


 ラミリのルールによって、デメトルーラーのスピードが上がる。

 こうして、味方の能力を上げるのも、ルール型の強味だ。


「よし!」


 ここ一週間の練習が上手くいっているのを確認してから、相手の芯界を確認した。

 まず、眼帯の少女は、まっ平な地平線が広がる世界の中央に、単眼の大怪物、サイクロプスが立っていた。

 大きさは、四十メートルくらい。

 デメトルーラーで感覚が麻痺しているが、かなり大きいボス型だ。


 そして、蛇を巻いていた子は、蛇の軍団かボスだと予想していたが、大外れだった。

 外観は、ところどころに水晶がある、綺麗な洞窟のような場所。

 その広間に、ライオンの頭、ヤギの胴、ヘビの尾を持つ怪獣、キメラがいた。


「グイアアアアアアアアアアアアアア!」

「ギメアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 二体の巨大怪物の咆哮が、モニター越しでもビリビリと響いてくる。

 さらに、二体が向かい合ったかと思うと、急に走り出して激突し――融合。

 キメラの能力か。サイクロプスとキメラが混じり合い、一体の巨大な化物になった。

 ライオンの頭、ヤギの胴、ヘビの尾があるのは変わらず、胴からサイクロプスの目と腕が生えた、文字通りのキメラが完成した。


「「いけ、キメプロクス!」」

「名前ダサ!」

「ヴウウウウウウウウウウウウウアアアアアアアアアアアアア!」


 サイクロプスの頭の角にしがみついた二人が指示を出し、五十メートル級の化物が駆けだした。

 狙いは、デメトルーラー。

 本来なら、怪物二体の合体は、並みのボス型を蹂躙するパワーがあるのだろう。

 しかし、相手が悪い。


「デメトルーラー!」

「ギィ!」


 デメトルーラーがディスクで音楽に乗るのを止め、ボクサーのように身体を左右に振り……右腕が、消えた。

 音楽で加速した魔王の一撃。

 渾身の右ストレートが、ライオンの顔面にヒットした。

 まともに食らった怪物は、突き飛ばされ、数十メートル引き下がる。


「ハァ!?」

「チッ、邪眼ビーム!」

「ヴヴィ!」


 ライオンとサイクロプスの目が光り、レーザーが照射される。

 特に、サイクロプスの目からは、極太のビームが出た。


「ギリイィ」

「ッツ――!」


 咄嗟に腕をクロスさせて、ガードの体勢を取る。

 しかし、その威力から押され気味。かつ、ビームは超高熱であり、デメトルーラーの腕が溶けていく。


「行け、スネイクヘッド!」

「ジャアアアアア!」


 伸びたヘビの尾が、デメトルーラーの腕に食らいついた。

 その口から、紫の液体がポタポタと垂れる。

 おそらく毒だが、金属には効かなかったらしい。


「チッ」

「オレっちを忘れてんじゃねE()!」


 その時、天から足を付き出して落ちてきたラミリが、ライオンの頭に刺さった。

 大したダメージでは無さそうだが、怯んでビームが止まる。


(サングラスのせいで、技のキレがねえ)


「やれ、強制合体!」

「ヴウ!」

「ウワッ!?」


 ラミリが、ライオンの頭に足をうずめたまま、もがいている。

 どうやら、抜けないらしい。

 いや、それどころか、段々引き込まれている。


「何だ、こRE()!? 引き込まれRU()!?」

「ラミリ!」

「ギリィ!」


 デメトルーラーのアッパーが顎下に刺さり、打ち上げられた拍子に、ラミリが取れた。


「危ねE()。サンキュー」

「うん。足は大丈夫?」

「あ、あA()。違和感はあるが、問題ねえZE(ゼィ)!」


 ラミリが、取り込まれそうになった足をブンブン振り回した。

 どうやら、生物は強制的に取り込んでしまう力があるらしい。

 デメトルーラーも、金属の塊でなければ吸収されていただろう。

 

「オレっちは近づけねぇNA()

「ラミリは境界に行って、相手の出力を削いで」

「それだと、あの化物を一人で相手することになるけDO()

「……やるよ」

「そっKA()。頼んだZE(ゼィ)!」


 ラミリは、また音楽に乗って加速しながら、境界の方へと向かった。

 これで氷海の面積が増し、洞窟と平地が削れれば、あの合成獣も弱体化して、少しはイースも楽になるだろう。


「……そうなる前に、金属野郎を叩く。キメクロプス!」

「ヴヴゥ!」


 また怪物の目という目が光り出し、ビームが照射される、直前。


「デメトルーラー!」

「ギィ!」


 デメトルーラーが腕を振るうと同時に変形し、細長い槍になった。

 射程が一気に変わり、相手の虚を突く。

 ヤギの胴体に生えている、サイクロプスの大きな目に刺さり、ビームが止る。


「ヴウウウウウウウウウウアアアアアアアアアア!」

「ギリィ!」


 次の瞬間、もう片方の腕も槍になり、ライオンの頭に刺さった。

 釘刺しになり、合成獣の動きが止まる。

 というか、もう息していない。


「クッ、ヘビ!」

「ジャア!」

「やらせないZE(ゼィ)!」


 最後の抵抗として、ヘビがイース本体を狙おうとしたが、横からすっ飛んできたラミリが両断。

 残った本体の二人はあえなく降参し、俺達は一回戦を突破した。



 さて――本命はここからだ。

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