待ちが出来る戦法は大体ゴミ
「勝ってくれてありがとう、ラギナ」
「イースのお陰だよ。あそこでイースが庇ってくれなければ、俺もやられてた。アメいる?」
「うん」
イースにミント味のアメをあげて、控室に戻る。
その途中にラミリとすれ違った。
「二人ともナイSU!」
「えへへ」
「後は頼んだぞ、ラミリ」
「任せときNA! オレっちの初陣、勝利で飾ってやるZE!」
そう言って、軽やかにローラースケートで会場に向かった。
ぐっすり寝ているシュヴァリィの状態を診てから、モニターで試合の様子を見る。
ラミリは、始まる前からサングラスを取って、殺る気に満ち溢れている。
そして、相手はコッテコテの軍服の少女。
迷彩柄で、作り物か知らないが、胸には勲章が付いている。
「……騎士団ってあんな感じだったの?」
「違う、白を基調とした鎧が制服だ。アレは多分趣味」
キビキビとした動きから、ただ者で無いことは察せられる。
だが、キャラの強さでは負けてない。
こっちはサングラスにローラースケート&お嬢様のハイブリットだ。
「やっちまえー!」
「準備はよろしいでしょうか。では、開始!」
「Iskace on the music!」
「Woodilland gun field」
ピロン♪
今回は開始した瞬間に音楽が鳴り響き、ラミリが氷上を滑り始めた。
連携する時のために、曲を教わっていたから分かる。
これは――オペラ座の怪物。
低い立ち上がりから、完璧に音楽に乗って、スピードを上げていく。
対して、相手の芯界は、森。
視界が悪く、軍服の迷彩もあってか、姿が見えない。
「森ってことは、大軍系かな?」
「おー、鋭くなってきたな。けど、多分違う」
ヒュン
「ッ!」
一瞬前にラミリがいた所を、高速の何かが通り抜けた。
この世界ではあまり一般的では無いが、前世を覚えている俺には分かる。
銃だ。
森のどこかから、銃で狙撃してきている。
「サバゲーのフィールドかな?」
森に潜んで、銃で撃つ、ハイド&ショット。
まともにやるとウザかっただろうが、それはラミリも大概だ。
ヒュヒュン
段々と弾丸の雨が濃くなるが、アイススケートの不規則な動きと、段々加速する変速性から、全く命中する気配が無い。
「今日の夜どうする? 普通のご飯にするつもりだったけど、予選突破祝いにパーティでもしようぜ」
「いいねえ。でも、シュヴァリィがコレだから……明日にした方がいいかも」
「呼んだ?」
いつの間にか、睡眠中だったシュヴァリィが起き上がっていた。
周りをキョロキョロと見回して、状況を把握する。
視線は、モニターの戦いで止った。
「ラミリさんが戦っているということは、アナタたちは勝ったのね」
「うん」
「もうすぐ終わりそうだから、とりあえずそのまま起きとけ」
ガガガガガガ!
試合は佳境を迎えていた。
しびれを切らした軍服が、木に登って姿を現し、ガトリングを唸らせている。
加速前ならハチの巣になっていただろうが、ラミリはもう分身して見えるレベルの速度だった。
当然、銃弾は一発も当たっていない。
「クッソ、ロケラン!」
「ラストスパート!」
軍服が、切り札らしきロケットランチャーを構えた。
それに応じて、ラミリも試合を決めにかかる。
大きく飛び上がって、右足を美しく伸ばし、ライダーキックのポーズを取った。
「発射!」
「メテオストライク!」
ロケットランチャーが発射されるが、スケートの靴はそれを切り裂いて突破し、相手の首を軽く傷つけた。
真っ二つになったロケットランチャーの弾頭が爆発し、彼女の勝利を飾る。
ドカーン!
「試合終了!」
……ライダーキックで通じるかなぁ。