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芯界  作者: カレーアイス
第一章 少年編
4/72

着地は任せた、アーメー!

 修行を開始してから数週間。

 大分食らいつけるようになってきた。


「撃て!」

飴壁(いへき)!」


 砲撃の群れが訪れるが、アメの壁で受け止める。

 完全に固めず、粘性を保つことで、安全に衝撃を殺しきった。


「今度は、こっちから行きます!」


 壁からせり出した砲身から、アメの弾を放った。

 火薬を使っていないので、スピードは無く、大砲に撃墜されてしまうが、想定どおり。


ポォン!


 腑抜けた音が鳴り、アメの弾が(はじ)けて、アメの雨が降る。

 威力は保持していないが、大砲に憑りつき、無力化させた。

 これで、大分楽になる、ハズ。


 ベディさんは嬉しそうに頷き、


「考えたな。なら、これはどうする?」


 主砲が、熱を帯びる。

 アメを溶かし、黄金がさらに鮮烈に輝いた。


「ウソだろオイ!」

「ゴールデン・レーザー!」


ジュッ


 分厚い、列車の様な壁を築いたが、瞬時に溶解。

 アメを使い、カタパルト方式で自分を打ち出すことで回避した、が――それを完璧に予測した砲弾に被弾し、失神した。




 冷水を被り、俺は目を覚ました。


「中々良かったが、熱に弱いのは課題だな。あと、そろそろ近接戦闘も訓練した方がいいかもしれん」

「……ですね」


 気分治しに、新しいアメを口に入れ、立ち上がった。


「もう一度お願いします」

「今日はこれだけだ」

「え、マジで!?」


 おっと、いきなりのことで敬語が崩れてしまった。

 まあ、修行が始まってから、一日中ボコボコにされる日々だったし……喜んじゃうのもしょうがないよね。

 ベディさんは俺の様子に溜息をついてから、話を続けた。


「実は騎士団の方の仕事が入ってな。ここを離れなきゃいけなくなった」

「ええ!?」

「目を光らせるな」


 ジト目で見られたが、なんとか笑顔で誤魔化した。

 しかし、ベディさんはすぐに俺以上に笑顔になり、


「だから、先輩に、仕事に同行させていいか聞いたら、余裕で許可された」

「え?」

「あと、団長に頼んだら、見習いにしてくれた」

「えっ?」

「行くぞ、王都へ!」

「ええええええええええええええぇぇぇ!?」


 芯界から、ベディさんの戦艦が出て来て、空を飛んだ。

 「アレって空も飛べたのか」と驚愕しつつ、逃げようとしたが、もう手遅れ。

 首を掴んで無理やり戦艦に乗せられ、結局行くことになった。



◎◎◎



「見えてきたぞ」

「うえぇ」


 戦艦は、最初の方はノロノロとしていたが、次第に加速し、最後の方は凄まじい速度になっていた。

 車で一日半かかる所を、三時間で踏破したと言えば、そのスピードが分かるだろう。

 やっぱこの人ヤバい。


 さて、話には聞いていたが、ドゥリター王国の王都は想像よりずっと混沌としていた。

 中央の城は普通(?)だが、所々高層ビルが立っているうえ、飛行船が飛び交っている。

 かとおもいきや、普通に木造の建築物群があり、ほとんどの道は舗装されていないと、チグハグさを伺わせる。


「意味わからん」

「そういうもんだろ」


 現地人からすると、そんなものなのかもしれない。


「さて、これ以上町に近づくと撃墜される。ここからは歩いてくぞ」

「え、撃墜されるんですか?」

「……いや? 余裕で突っ切れるが?」

「撃墜されるとこ見たかったのに」

「そうか、突っ切って欲しかったか」

「いえ、そこまでは言ってません。……言ってない言ってない言ってない!」


 一時停止ていた戦艦が、進行を再開した。

 王都の防壁を越え、中央の城を目指す。

 その時、城壁から砲撃が放たれ、船底に穴を開けた。


 俺、この船傷つけられたこと無いんだけど。


「ヤバいっスよ! ヤバいっスよ!」

「いやぁ、私は降りていきたかったけど、アークエス伯爵家のお嬢さんに頼まれたらなぁ。仕方ないなぁ」

「俺のせいにする気だァ!」


ガッ、ガァン!


 さらに攻撃を受けて、戦艦が揺れる。


「速く、速く行きましょう!」

「流石私の弟子、もう覚悟を決めたか」


 戦艦は速度を上げ、王都の上空を突き進む。

 そして、遂に城の上空に到着したかと思うと、ベディさんは唐突に戦艦を消した。

 当然、俺達は落下する。


「……着地する手段ありますよね?」

「無い」

「何やってるんですか!」

「お前が対処しろ。強度調整したアメをクッションにしてな」

「……」

「こういう時でも鍛錬を忘れない師匠の鏡」

「ウオオオオオオオ!」

 

 本気でやる気が無いと見え、胸に手を置き、芯界からアメを取り出す。

 まだ高度があるので、量を優先。

 ある程度の粘度にして、城の天井にぶつけた。


ヌン


 ファーストタッチは良好。アメが硬すぎて、死因が「飴に衝突した」になることはなかった。

 後は、着地までに勢いを殺し切れるか。


「ッ!」


 かなりのアメを突っ切ったが、止まらない。

 水性を高め過ぎた! このままじゃ――


「まあ、八十点ってところか」


 最後の最後は、ベディさんが黄金の水を出して止めた。


「……着地する手段、無いって言いましたよね?」

「使う気は、無い、と言ったんだ。気が変わった。あと、お前を巻き込みたかった」

「……」

「これでお前も共犯者だ」

「あああああああああああああ!」


 何から何まで、この人の掌の上だった。

 王都の無断飛行。国防にも関係することだし、割と重罪だったような……。

 俺が後悔していると、何者かが城の天井に現れた


 綺麗な銀髪。

 スラっとした体格と、パッチリとした意思が強そうな目、「これぞ騎士!」というような、銀の鎧を纏っている。

 何より目を引くのは、彼女が背負う、旗の様なマントだった。


「またやっているの!? ベディヘロペア!」

「ヤッベ、一番ヤベェ奴に見つかった」


 新たに現れた人を見て、ベディさんは珍しく焦りを見せた。

 俺を雑に置いて、背を向けて逃げようとしたが、背中に飛び蹴りを食らって倒れ込む。

 さらに、うつ伏せになった所に、畳みかけるように踵落とし。

 ベディさんは「ヴッ」と断末魔を上げた後、動かなくなった。


「もう、今回はこれくらいにするけど、次やったら罰金だからね!」

「待って、金だけは……」

「ならやらないこと!」


 一連の説教を終えた後、白銀の彼女はボウっと立ち尽くしていた俺に向き直った。


「あ、あのー」

「気にしなくていいよ。どうせベディヘロペアが勝手にやったんでしょ」

「……!(コクコクコク)」


 話が分かるで良かった。


「あなたがラギナ君?」

「はい。そうです」

「私はテトレディ・ジャスフィ。第七騎士団の団長だから、ベディヘロペアの上司にあたるわ! よろしくね!」

「よろしくお願いします」


 銀の籠手(こて)を外して、差し出された手を握り、握手した。

 ……ハイテンションな人だなぁ。


「さて、あなたは第七騎士団の見習いってことになってるから、私の指揮下に入ってもらうね。大丈夫、主な仕事は雑用だから」

「分かりました」

「あと、近接戦闘の講師は私がするから」

「……え?」


 ……急に笑顔が怖く見えてきた。


「とりあえず一回やっとく?」

「い、いえ、長旅で疲れてるので」

「そっか……」


 テトレディさんは、残念そうに顔を俯け、胸に手を当てた。


「じゃあ、今日は一回だけね」

「そういえばこの人、ベディさんの上司だったなぁ!」

「いくよ! Grandun(グランドゥン)!」

Dream(ドリーム) of(オブ) bandy(バンディ)!」


 テトレディって名前良くない?


 芯界の物は取り出せます。

 取り出し過ぎると、存在基底がすり減って、自分の存在が薄くなり、体調が悪くなる。

 戦艦とか出てるのは、ベディヘロペアがおかしいだけ。


 これからは12時台と18時台の一日二話投稿でいくつもりです。

 忘れてたら一時間くらい遅れることもあるかもしれません。

 感想や高評価があったら、作者のモチベが上がって更新が早くなる。言い切ろう、なる。

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