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芯界  作者: カレーアイス
第四章 芯界強奪事件
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作戦会議

 警察の事情聴取を終え、寮の部屋に帰って来た。

 最近多い、急に植物状態になる事件ということで、事件時の様子を少し聞かれるくらいで、すぐに終わった。


 ラミリを連れて、扉を開ける。


「ただいま」

「おじゃましまーっSU()

「お帰りなさい。それと、いらっしゃい」


 エプロン姿のイースが、出迎えてくれた。


「事情は聞いてるよ、ラミリさん。ボクはイース、よろしくね」

「こちらこそ、よろしKU(クゥ)!」


 ローラースケート靴を脱いで、俺と同じくらいの身長になったラミリと、リビングに入る。

 テーブルの上には、四人分の牛丼と味噌汁が並んでいた。


「ごめんね、簡単なもので」

「いいんだよ、こういうので」


 いつもの配置で四人用テーブルに座り、空いている席に座るよう、ラミリに促した。


「ご馳走になるZE(ゼィ)

「先に手を洗いなさい」

「分かってるっTE()


 箸を持ったシュヴァリィが、キッチンから出てきた。

 今日は二人の合作らしい。


「じゃあ、いただきます」

「「「いただきます」」」


 みんなで挨拶して、食べ始めた。

 ご飯の上に乗った、牛肉とタマネギが美味しそうに湯気を上げる。


「うん、美味しい」

「ありがとう。それより、作戦会議をしましょう」


 箸の動きを緩めながら、話を始める。


「運よく、初日から芯界が奪われる現場を見れた」

「……初手からぶっこんでくれるわね。で、どうだったの?」

「発生してから数秒で駆け付けたけど、逃げられた。かなり理想的なな形だったから、同じ方法では捕まえられないと思う」


 かなり近い場所で発生してたし、発見してから駆け付けるまでの動きも悪くなかった。

 『高い場所から広範囲を見張って、駆け付ける』という方法では、いつまで経っても捕縛は不可能だろう。


「一応、収穫はあった。ドラゴンが風を吹かせたとき、流れというか、音が不自然だった」

「透明にいるってこと?」

「ああ。幽霊になってるとか、奇想天外な手段ではないっぽい」

「それが知れただけでもよかったわ。さすが私のドラゴンね」


 シュヴァリィが誇らしげに腕を組んだ。


「で、明日からはどうすRU()? ちょっと低い建物で見張るKA()?」

「それだと、今日とあんまり変わらないと思うぞ。同じように逃げられる気しかしない」

「実体があるなら、ペンキで色付けしちゃうのはどう?」

「いい案だけれど、あのレベルの実力者なら、ペンキなんかすぐに自分の服くらいの感覚で消してしまうと思うわ」

「うっ」


 牛肉がノドに詰まりそうだったので、水を口に流し込んだ。

 目尻に涙を浮かべながら、意見を出す。


「……まあ、そんなに焦る必要は無いんじゃないか?」

本戦(タイムリミット)まであと二週間よ」

「逆に言えば二週間はある。深入りし過ぎると、俺たちが芯界を抜かれかねない」

「……確かに。本格的に動き出すのは、シュヴァリィが情報を集め終えてからでもいいかもね」

「イエー。オレっちも賛成」


 味噌汁を一気に飲んだ。

 みんなもそろそろ食べ終わりそうだったので、デザートの用意にかかる。

 今日は花型のアメだ。


「あと……犯人は、芯界を集めて何がしたいのかしら?」

「……確かに、目的が分からないNA(ナァ)


 俺がいない間に、話が進んでいた。

 まあ、友達同士の仲がいいなら、それに越したことはない。


「今日軽く調べてみた感じ、芯界を奪取しても、できることといえば芯界生物を取り出すくらい。それだけなら、野生を捕まえるのと大差ないわ」

「植物状態にすることに意味があるとか?」

「犯人の目的が『芯界を集めること』であるのは、間違いないと思うわ」


 議論が白熱してきた。


「……芯界生物を集めて、傭兵を作るとか?」

「取り出した芯界生物は、簡単な指示しか聞かないわ。あまり傭兵には適さないでしょう」

「ブラックマーケットで、売り捌くつもりかもしれないZE(ゼィ)

「……今のところ、それが一番ありそうね。闇市の取引も調査しておくわ」

「できたぞー」


 精巧に作ったアメ細工を、みんなに提供した。

 俺も席に座りなおして、飴細工をかじる。

 みんなも美味しそうに口に運んでいるのを見てから、自分の見解を話した。


「目的の話なんだけど、海外勢力の線は?」

「……なるほど」

「どういうこと?」

「敵対国のスパイが犯人で、戦争で芯界生物を使おうとしているとか。相手の戦力を削って、自軍の戦力を増やす、と言ったら、良い手に聞こえるだろ?」

「そっか。そうなると、戦ったことが無い人の芯界も取ってるみたいだけど、それはカモフラージュかもしれないね」

「……強い人は標的になりやすくなっているのかもね。それも調べるわ」

「シュヴァリィがやること多くNE()?」

「大丈夫よ、派閥の貴族を使うから」


 ……ごめんな父さん、面倒なことになった。


「やることをまとめておきましょう。まず授業には普通に出る。夕方から夜にかけて、ラギナ君、イース君、ラミリさんで順番に見回り。私は、事件の傾向、取り出した芯界でできること、闇市の動向を調べるわ」

「あと、世界大会の予選もあるぞ」

「ワタクシも出場しましょうか?」


 ラミリは、いつの間にかサングラスを外していた。

 サングラスが真面目スイッチになっているらしい。


「いいのか?」

「みなさんが、必死にワタクシの冤罪を晴らそうとしてくれているのは分かりまし、シュヴァリィさんの評判を上げるには、どちらにしろ事件解決が必要ですので」


 真面目にしていると、ラミリは深窓の令嬢らしく、とても綺麗で美しかった。

 髪と瞳の薄い水色から、ガラスの様な脆い印象を受けるけれど、その目にはしっかりとした芯がある。

 サングラス一つで、ここまで印象が変わるのか。


 呆気に取られていると、彼女は俺の方を向いて、微笑んだ。


「どうかしましたか?」

「……いや、何でも。アメいる?」

「今食べたばかりですが――」


 そんなことをしていると、立ち上がったシュヴァリィがサングラスを奪い、無理やりかけさせた。


「私とキャラが被るから、二度と取らないで頂戴(ちょうだい)

「被ってる……かなぁ?」

「ラミリが令嬢で、シュヴァリィは……高飛車の悪役令嬢?」

「……この後は暇だし、戦闘訓練といきましょうか」

「「ごめんなさい」」

「ハッハッHA()!」


 俺たちの日常を見て、ラミリは陽気に高笑いしてた。


 誰のセリフか分からないと言う人は、質問してください。

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