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芯界  作者: カレーアイス
第四章 芯界強奪事件
33/72

ラミリ・ローグレシル

 次の日、軍学科の授業。


「……あ、昨日はどうも」

YO(ヨウ)!」


 いつもの席にシュヴァリィと座っていると、ローラースケートの昨日の少女が教室に来ていた。

 昨日はドタバタしていたので、しっかりと容姿を観察し直す。

 一番目立つのは、シャープな黒のサングラス。

 普通は怖い印象になるのだが、童顔のお陰か、どちらかというと可愛らしい印象を受ける。

 そして、シャボン玉のストロー。

 昨日はただ咥えているだけだったが、今日はしっかり(?)ポコポコとシャボン玉が出ていた。


「……目に入ったら危なくない?」

「特殊な器具を使ってるから、大丈夫だZE(ゼィ)


 薄い水色のロングツーサイドの髪型に、ローラースケートで分かりにくいが、かなり身長が高く、特に足が長い。

 サングラスとシャボン玉でふざけていなければ、綺麗なお姉さん枠になっていたと思う。

 問題は、どう考えても、授業でこの人を見たことが無いことだ。


(今はもう六月に入る頃。……この人単位大丈夫か?)


「隣いいかI()?」

「どうぞ……名前聞いていい? 俺はラギナ・アークエス。こっちはシュヴァリィだ」

「よろしく」

「オレっちラミリ・ローグレシルってんDA()! 17だけど、タメ語でいいZE(ゼィ)。よろしくNA()!」


 17……一年目にしては高いな。

 学園の入学年齢は15から17。

 上の方の年齢制限がある理由は、勉強で一生を終える悲しいモンスターを生み出さないためだ。

 この人は二年浪人したのか、思い立ったのが16の時だったのか。


 考えていると、俺を挟んで隣の、シュヴァリィが身を乗り出した。


「ローグレシルって、子爵家の?」

「その通りだZE(ゼィ)。ま、縁切りされてっけどNA()

「ラミリ・ローグレシルって……まさか!」


 ……縁切りって、何をやらかしたんだ?

 少し怖くなって、シュヴァリィの方に身を寄せた時、丁度ヒルトレイヴ先生が教壇に立った。


『はーい、席についてー。みんなのアイドル、ヒルトレイヴ先生ですよー』

「無表情なんだよなぁ……」

『今日は、言っていた通り、系統ごとの運用法の話の、続きといきましょうか。前回配った資料を出して下さい』


 先生は資料を片手に、ホワイトボードに何か書き始めた。

 話が始まる前に、鞄から資料を取り出して、机の上に置いておく。


「センセー、前回いなかったんで、資料持ってねえっSU()

『隣の人に見せてもらって下さい』

「ラギナー、見せてくRE()

「どうぞ……アメもいる? 色々味あるけど」

「渋いやTU()

「ほい」


 緑色のアメを渡すと、一旦ストローを離して、アメを咥えた。

 背中から視線を感じるので、シュヴァリィにもいつものをあげ、前を向く。


『まず、戦争の大半は遠距離武器の打ち合いです。芯界戦闘が起こるまで接近することは、ほぼありません』


 今回の内容は、あまり聞かなくてもよさそうだ。

 現地に行ったことがある俺は、肌感覚で大体分かる。

 なので、もっと重要なことをすることにした。


「ラミリに、頼みたいことがあるんだけど」

「なんだI()?」

「これがこれが終わったら、ちょっと手合わせしてくれない?」


 一瞬、彼女の手が止まったが、またスラスラと動き出す。

 俺と目を合わせないまま、返答した。


「まあいいけどYO(ヨゥ)。どうしTE()?」

「不審者二人を、数秒で片づける、あなたの実力が気になって」

「不意打ちしただけだZE(ゼィ)

「だとしても、立ち振る舞いから、ただ者でないことが分かるんだよ」


 ずっとローラースケートでいても、全くバランスを崩さない所とか。

 渋いアメが好きな所とか。


 心の中で理由を唱えていると、アメを食べ終わったラミリが、ストローを咥え、シャボン玉を吹いた。

 キラキラと輝くシャボンが、天井に登っていく。

 それを見送ってから、彼女はこちらを向いて、サングラスを光らせた。


「やろうじゃねえKA()。オレっちも、久しぶりにガチンコやりたかったんだYO()

「ノリがよくて助か――イテッ」


 その時、硬い物が頭に直撃した。

 当たったのは、プラスチックのペン。

 投げられた方を向くと、赤鬼のお面で顔を半分隠した、ヒルトレイヴ先生が立っていた。

 相変わらず表情は変わらないが、赤鬼の面は怒っている時だ。


『ラギナ君、話聞いてましたか!?』

「当然っすよ!」


 頭には入ってないけど。


『じゃあ質問! 行軍中に一番意識することは!?』

「芯界を使った緊急避難。危険に気が付いた人が、他の人も巻き込んで、自分の芯界に避難させます」

『……そういえば、元軍関係者でしたね。では次!』


 その後の授業は、先生の質問に、俺が答えるだけで終わった。

 雑談していた俺が悪いので、申し訳なかった。

 だが、答えられることは答える。



◎◎◎



「じゃあ、やろうか」

「かかってこI()


 訓練場に移動した俺とラミリは、シュヴァリィに見守られながら、両者とも胸に手を置き、世界を開く。


Dream(ドリーム) of(オブ) bandy(バンディ)!」

Iskace(アイスケイス) on(オン) the() music(ミュージック)!♪」


 ラギナ君はよくツッコむので、授業では愛すべきアホ枠になってます。

 友達が欲しいから、実はそういうポジションを狙ってたり。

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