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芯界  作者: カレーアイス
第四章 芯界強奪事件
32/72

不審者(サングラス&シャボン玉ストロー&黒グラサン)

すみません寝てました

 イースと分かれて、シュヴァリィと二人で、王城の方へと歩みを進める。


「で、どうだった? イース君は」

「戦力としては十分。だけど、戦闘慣れしてないから、イース本人を狙われると厳しいな」

「基本は、フォローができるタッグマッチ運用ね。私のドラゴンとは相性が悪いから、相方はアナタに任せるわ」


 食べ終わったアメの棒を携帯ゴミ袋に入れ、新しいのを咥える。

 シュヴァリィが物欲しそうに見ていたので、同じものをあげた。


「ん――で、イース君の芯界は、コピーできた?」

「ああ。でも、俺が使うとメッチャパワーが低下する……」

「意志薄弱なせいよ」

「言うと思ったよ! まあ、鉄を食っての形態変化が面白いから、そっちメインで運用しようと思う」


 鎖以外にも、腕を巨大化させたり、帯電させたりと、中々興味深い。

 イースよりも変形が簡単らしいので、俺の性質が出ているのだと思う。


「なるほど、いいんじゃない? で、どれくらいシたの?」

「……最近時間が無いから、まだあんまり練習できてない」

「そういうことじゃ無いのだけれど……まあ、その答えで許してあげるわ」


 シュヴァリィが殺気を放ち始めたので、話題を変える。


「宮廷工作の方は、どれくらい進んでいるんだ?」

「もう大体終わったわ。主犯格は爵位の没収、それ以外に加担していた方々には、幾つかの利権の剥奪と罰金が下った。今は味方を増やしている段階ね」

「なるほど。味方はどれくらい」

「想定以上に集まってきてるわ。大きいところだけ言うと、ラームン家、フィズム家、バルトニック家といった所かしら」

「……結構名門だな」


 世間知らずの俺でも、よく聞く名前だ。

 家の方針的には、派閥に入ってもおかしくないが、それらは――


「第一王女派閥じゃなかったっけ?」

「方針が似てるから、流れて来てくれたわ。第一王女――姉さんは、その地位に胡坐をかいて、城の中で豪遊しているから、名門の学園に入学した私の方が評判はいいの」

「方針百八十度転換とかしたのに?」

「そこは私の説得術の見せどころよ。あと、姉さんには、外国と繋がっているという噂もあるから。それより――気づいてる?」

「当然。香水変えたでしょ」

「……」

「冗談だって。気づいてるよ」


 後方十メートル、俺達を付けているヤツが二人。

 おそらく、シュヴァリィを狙う暗殺者だ。


「久しぶりだな。最初の頃はよく来てたけど」

「勝てそう?」

「余裕。一般人を巻き込むとマズいし、次の路地を右に曲がろう」

「分かったわ」


 路地を右へ、襲いやすいように、人気のない方を行く。

 少しずつ、距離が詰まる。

 十メートル、九メートル、八メートル……。


「大会の練習にもなるし、二人でやりましょう」

「自分たちを襲う暗殺者相手に? ……まあいいけど」

「じゃあ――」


 ……もう慣れてきた、シュヴァリィの唐突なキス。

 絶好の暗殺チャンスだろうに、驚いたのか、足を止めている。

 ジックリ数秒してから、ゆっくり口を離した。


「一応聞いておこう。何でキスした?」

「インクの補充よ。一度やってみたかったのよね、ドラゴン二百体運用」

「えぇ……絶対違うヤツ使ったほうがいいって」

「もしかしたら、信じられない強さを発揮するかもしれないじゃない」


 不服だが、暗殺者にバレないよう、スッと胸に手を置いて、芯界をアメから火山に塗り替えた。


「じゃあ、三、二、一で振り返って、同時に二人を巻き込もう」

「了解」

「じゃあ、三、二――」


カー カー


 その時、後方から――謎の音がしてきた。

 聞き覚えがあるような、無いような、地面を滑走する音。


「……ちょっと待って」


 カウントダウンを打ち切り、振り返ると……ローラースケートで、歩道を爆走する少女がいた。

 黒いサングラスに、口はシャボン玉を吹くストローを加えている。

 その外見に呆気に取られていると、タッと大きくジャンプし、綺麗に回転を決めながら暗殺者を飛び越え、俺たちの間に入った。


「「「「何この人」」」」

Iskace(アイスケイス) on(オン) the() music(ミュージック)!」


 芯界の宣言。

 気づくと、ローラースケートの変人と、暗殺者二人が消え、場には小さな芯界の光のみが残っていた。


「……どう思う? 敵か、味方か」

「私たちの敵だけを、芯界に閉じ込めたのだから、味方ではあるとおもうわよ」

「確かに」

「まあ、本人から聞けばいいだけの話よ」


カッ


 話している内に、スケートの人が、気を失った黒ずくめの暗殺者二人の首を、持って出てきた。

 改めて不審者と対面し、微妙に緊張する。

 だが、それは俺だけだったようだ。


YO(ヨー)。おたくら不審者に狙われてたZE()。気を付けNA()


 不審者は変なイントネーションでそう言った。

 謎言語で、またもや怯む。

 先に立ち直ったのは、シュヴァリィの方だった。


「……まずは、ありがとう。不審者を撃退してくれて」

「気にすんNA()

「こういうことはたまにあるから、後処理は任せて頂戴」

「そうかI()? じゃ、頼んだZE(ゼィ)


 気を失った暗殺者二人を俺たちに任せて、ローラースケートの不審者は、地平線の彼方に消えた。

 ローラースケートは、かなり速かった。


「……名前くらい聞いとけばよかったな」

「いらないでしょ、あんな不審者の」

「どうする、コレ」

「処理はいつも通りよ。誰の指示か聞き出して、然るべき場所につき出すわ」

「はーい」


 二人を縛ってから抱え、シュヴァリィの先導に従って歩いていく。

 ……ローラースケートの彼女とは、また会える気がした。


 ……ルビ入れる必要あります?

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