百合ゲー主人公、シュヴァリィ!
「あの、二人しかいないように見えるのですが……」
「ごめんなさいね、あと三人メンバーがいるのだけれど、少し飛行船が遅れているみたいで、今この場にはいないの」
世界大会のエントリー会場にて。
受付のお姉さんに、シュヴァリィが食ってかかっていた。
「ああ、自己紹介しておくわね。私、シュヴァリィ・ドゥリター・ユートロン」
「お、王族の方でしたか」
「そう。私、王族なの」
「お、おい、無茶すんなよ」
「あと少し、あと少しで到着するの」
「いや、あと三人どころか、一人もい――!」
「いない」と言おうとした瞬間、シュヴァリィに口を塞がれた。
キスで。
あまりにも白昼堂々としたキッスに、周りから黄色い声が上がる。
短いようで長い数秒が経ち、ようやく口を離した。
「こんな所でキスしたがるなんて、我慢できない子ね」
「おい!?」
「……」
「あの、シュヴァリィさん!? シュヴァリィさん!?」
シュヴァリィが受付に身を乗り出し、職員さんの首元を掴んで、唇を近づかせ――あと数センチという所で、相手の職員さんが音を上げた。
「分かりました!分かりました! この場にいなくてもエントリーを認めます!」
「ありがとう」
「……お前は百合ゲーの主人公か」
「本当でする気は無かったわ。……もしかして、嫉妬してる?」
「してねえわ!」
二人だけエントリーシートに個人情報を書き、残り三つの欄に、シュヴァリィが適当な情報を書き込んで行く。
「誰だよ、ザッリガーニって」
「頭に浮かんだのが、ザリガニだったから……」
「そんなに適当でいいのか?」
「書きさえすれば、あとは『ちょっと間違えてた』でどうにかなるわ」
「ちょっと(全て)」
真実が半分しかないエントリーシートを提出し、大会の登録を終わらせた。
ちなみに、チーム名はシュヴァリィ。
少しでも売名をするためである。
「とはいえ、どうする? 最低でも、あと二人はメンバーがいるぞ」
「想像以上に見つからないわね」
「イースの魔王でも連れて来るか?」
「相手を殺すわよ」
「だよなぁ」
鉄の魔王を見た時「もしや」と思ったが、無謀だった。
初戦は一週間後。
それまでにメンバーが集まればいいのだが――。
「まあ、二週間で一人も見つからなかったんだから、一週間増えたところで、あんまり変わらないよね」
今日は、世界大会の予選。
俺たちの初試合となる日だ。
相も変わらず、メンバーは俺とシュヴァリィの二人だけ。
この一週間、必死に残りのメンバーを探したが、候補すら見つからなかった。
「とりあえず、二人は体調不良ということにしておいたわ」
「それはいいけど、どうする?」
今回のルールは団体戦。
一対一、二対二、一対一を順番に行い、二勝した方が勝利となる。
しかし、現在俺たちは二人しかいないので、試合は一対一、一対二をして、両方勝たなければならない。
言うまでも無く、芯界戦闘で一対二は厳しい。
「……落ち着きなさい。まず、世界大会といっても、私たちみたいに『絶対優勝する!』なんてマインドで参加している方が少数よ。ほとんどは『友達と思い出作りに~』とか『上手く行ったら、就職で使おう』くらいの人の方が多いわ」
「確かに。……それはそれとして、その声真似なに」
「だから、今日の相手はほぼ格下。一対二でも勝てるわ。私が殺る」
また、抱え込んで。
自分が巻き込んだことに、責任を感じているのか、殺気立っている。
「一対二は俺がやるよ。何回か経験あるし」
「でも――」
「何より、姫をリンチにさせる騎士がいるかっての」
至近距離で、目を合わせた。
加速的に時間が長く感じられ――永遠の様な時間の後、先に目を逸らしたのはシュヴァリィの方だった。
「そうね。二人相手はアナタに任せるわ」
「任されました」
その時、控室の扉が開き、職員さんが先方の人を呼びに来た。
「チームシュヴァリィの先方の方、会場にお越し下さい」
「じゃあ、パパッと勝ってくるわ」
「ファイト」
職員さんに連れられて、シュヴァリィが会場に行った。
仲間は観戦することができるが、シュヴァリィが勝つと信じているので、見ない。
二人相手の定石を、思い出しておく。
数分後、シュヴァリィが普通に勝って帰って来た。
「腕前はそこそこ程度よ。普通にやれば勝てるわ」
「オーケー」
「……今回は予選だから、最悪一回負けたとしても、何とかなるわ。気負わず行きなさい」
「いいや、勝利をお届けしますとも」
「次鋒の方」
「じゃ、行ってくる」
職員さんに呼ばれて、俺は戦いの地に赴いた。
予選なので、観客などはいない。
こじんまりとして、中央には机とテーブルがある、カードゲームでも始まりそうな部屋だった。
そして、対面に立ったのは、糸目に青い髪、マーメイドドレスを着た、俺と同じくらい大きな少女と、もう一人、ほぼ同じ容姿で、少し小さい少女。
(見た目的に姉妹かな? いや、俺の見た目予想は信用ならないから、可能性の一つくらいに留めとかないと)
「君、相方は?」
「……ちょっと体調不良で寝込んでて。悪いけど、一人で相手させてもらいます」
「あらあら可哀そう」
「でも、それで一人って……舐めてるの?」
「すみません。でも、勝つつもりなんで」
少し睨みを効かせると、二人とも怯んだ。
多分、戦闘慣れはしてない。
一対二でも、勝ち目はある。
「それでは、中堅戦を開始します。両者、芯界の用意を」
間に入った審判の人の合図と共に、手を胸に置き、いつでも芯界を使えるようにする。
相手の二人も、同じく胸に手を置いて構えた。
「では、開始!」
「Dream of bandy」
「Seanger opel nutry」
「Pirany diriver」
もう十三時投稿に変えた方がいいかもしれない