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芯界  作者: カレーアイス
第三章 鉄の意思と魂の魔王
19/72

桜井未空

 ザ、ネクストデイ。

 俺は、去年の世界大会の資料を読んでいた。


「去年の出場者で、当時十七歳以下の人がいたら、勧誘したいんだけど……」


 パッと見た感じ、そういうヤツは大会二週間前の今頃には、大体もう組み終わっている。

 アスリート精神か何か知らないが、前回対戦した人と組んでることが多い。

 前回のルールは一対一のガチタイマン。

 チーム戦と違って、相手をピンポイントに絞ったメタ型の者ではなく、出力で圧し潰すタイプが多く、頼りになると思ったが――


「そう簡単にはいかないかぁ」


 期待が空振りになった反動で、机に突っ伏した。

 マジでどうしよう。

 最悪、父に縋りつけば人数は集められるか……二体二を捨てて、俺とシュヴァリィで一対一を制すとか?

 いや、チーム戦だとアンチ能力を引く可能性も高い。

 俺は自己強化系かボス系の相手には押し負けやすいし、シュヴァリィに水の相手は難しいだろう。

 能力に相性が出る以上、できるだけ勝率を高めるに越したことは無い。

 何より、二対二を、対戦を明確に捨てるのは、王のすることではない。

 確実に評判は落ちる。


 そうなると、本当にあと二人必要なんだよなぁ。


「……まあ、悩んでも仕方ないか」


 きっといい仲間に巡り合える。

 根拠は無いけど、そう思う。

 「ンン」っと固まった身体を伸ばし、目を開けると、視界の端の去年の決勝戦の映像データが目についた。

 気晴らしに、見てみるとしよう


「去年は勉強三昧で見れなかったんだよな」


 う、苦い記憶が……。

 学園の卒業生であるベディさんから、座学の授業を受け、出来が悪いと戦闘訓練という名の下に、ボコボコにされる日々。


「世界大会で優勝するくらい強くなれば、あの人に勝てるようになるかなあ」


 呟きながら、決勝のデータを開いた。


『さあ、パスト暦2015年、芯界戦闘決勝戦です! 今年のルールはガチタイマン! 故意に殺さなければなんでもアリの、最も原始的かつシンプルなルールです!』


 マイクを持った実況の人が、勢いよく声を上げた。

 この実況を聞くのも、久しぶりだ。


『選手入場です。東から入場するのは、ドゥリター王国のルーマック・フィストン選手。去年のバトルフィールドでは、最後のタイマンで惜しくも敗退してしまいましたが、今年は悲願の優勝を果たせるのでしょうか!?』


 左側の門から入って来たのは、ロングヘアーに野球帽を被った、どこかチグハグな選手。

 うちの国の選手なら、俺はこの人を応援しようかな。

 そんなことを、呑気に考えてた。


『西から入場するのは、ミク・サクリィ選手』

「ッ!?」


 聞きなれない、聞きなれた名前に、思わず画面に目が釘付けになる。

 右から入って来たのは、ローブで全身を隠した、黒髪黒目の少女。

 背格好や髪形は変わっているが、その顔は見たことがある。


「……未空?」


 実況が何かを言っているが、全然頭に入らない。


 桜井未空。前世の俺の妹だ。

 欠けていた記憶が、加速度的に補完されて行く。


「グアァ!」


 凄まじい頭痛。頭を割ってしまいたくなるほどの激痛に、歯を食いしばり、机を叩く。

 だが、それに見合った効果はあり、無くなっていた記憶の、妹に関する部分は粗方取り戻した。


 真っ先に思い出したのは、病院のベッドで、上体だけを起こした彼女の、死を予見した儚い笑顔。

 桜井未空、俺の二つ下の妹だ。

 優しく純粋で、俺と同じくアメが好きで……俺が死ぬ二年前に、病気で死んだ。


 今のミク・サクリィは俺より二つ上の年。俺と同じように転生したとして、計算は合う。


「……こっちの世界では、普通に生きているのか?」


 まあ、芯界を見れば分かるだろう。

 芯界は本人を映す鏡だ。

 そう思って映像に目を戻すと……身体をスライムの様に溶かして戦う、ミクが映っていた。


「大丈夫か、あいつ」


 所属国は、アルイド帝国。

 帝国という名だが、国力はそれほど高くなく、年中のほとんどを雪で閉ざされた、最北の国だ。

 東側の国なので、国交が無く、詳しい様子は分からないが、最近は軍事に傾倒していて、市民は貧困に喘いでいると聞いたことがある。

 世界大会に出場するくらいなら、優遇される側だと思うが、国事情が国事情なだけに、不安だ。


 映像の中では、もう完全に不定の化け物になったミクが、相手の首を掴み、口を塞いでいた。

 呼吸不能になった相手は、あえなく降参し、無事にミクが優勝した。

 兄としては嬉しいが、勝利した後も淡々としている彼女に、不安しか残らない。


 今すぐ会いに行きたいけど、敵対国家には簡単に行けないよな。

 ……ミクは現在十八歳。去年の優勝者だし、今年もほぼ確実に出て来るだろう。

 俺も世界大会に出場すれば、会えるのではないか。


「……俺にも、絶対に勝たなきゃいけない理由ができたな」


 胸の前で拳を握った。


 メタ型は「普通に戦ってもある程度戦えるけど、特定のタイプにはガン有利を取れる」ヤツです。

 分かりやすいのはディーシュの風吸収。

 炎を操るだけの人とかに当てると、確実に勝てる。


 アルイド帝国は北欧諸国を思い浮かべておいて下さい。


 なんかブクマと高評価増えてる……。

 明日更新増やします。

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