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こっからまたラギナ視点。
「大丈夫か!?」
「……遅いわ」
「これでも最速で来たんですけどね。状況は?」
「平和主義者になると言ったら、刺された」
「刺されたって……うわマジじゃん。アメで傷塞ごうか?」
「……頼むわ」
躊躇なく胸の布を破って傷を見せる彼女に、少し引きつつ、これ以上出血しないよう、アメでガチガチに固めた。
「芯界も解除していいかしら?」
「いや、塗り替えるから、まだ少し維持しててくれ」
まずは、対話だ。
「やあディーシュさん、大人しく捕まる気はない?」
「ありません。アナタこそ、こちらの派閥に入って、シュヴァリィを引き渡す気はありません? これから、思想が似てる第四王女あたりをトップに挿げ替えて、再起する予定なんですが」
「友達を売るような真似、する訳ないでしょ」
「……立場分かってますか? あなたのアメじゃ、私には勝てませんよ」
言葉と同時にディーシュの両手の暴風が強くなった。
「あの風は一定以下の質量を取り込むわ。アメはある程度固めないと、ただの養分よ」
「……それが分かってて、どうして俺を呼んだの?」
「呼びに行かせたのは、能力が分かる前だったから。それと……今の状況で一番信用できるのが、あなただったから」
「嬉しいこと言ってくれるじゃん。じゃあ、期待に答えようか」
あの人のは……あと一回だったか。
もったいない気もするが、使い時だろう。
「解除してくれ」
「話が長いから疲れたわ」
「ごめんな……後は任せろ」
火山の世界が解体され、代わりに広がるのは……アメの広間ではなく、宇宙。
「来い、Grandun!」
不安定な深い紫。
煌めく無数の星々。
テトレディさんのよりは小さいが、それでも十分なサイズを誇る巨大なロボットが、宇宙に立った。
「ハァ!? アンタの芯界はアメじゃないの!?」
「敵に答える義理は無い」
ディーシュが驚愕している間に、シュヴァリィを抱えてジェットパックでグランドゥンに搭乗した。
操縦桿を右手に、コマンドボタンを左手で押す。
『さて、やろうか』
「……!」
ビームソードを起動し、両手で構えた。
巨大ロボットと、嵐を腕に宿した少女が対峙する、なんとも奇妙な構図。
長々と話したせいで、シュヴァリィがそろそろ限界だ。
この一撃で、決める。
⇒⇩⇘⇒⇩⇘ A
『食らえ、正義の断罪剣!』
「吸収!」
グランドゥンがビームソードを上段から振り下ろし、ディーシュは嵐の両腕でそれを受け止める。
拮抗。
両者一歩も譲らず、火花が飛ぶ。
しかし、
「ビーム吸収されてない?」
「……クッソ何が『ビームは正義!』だ、テトレディさんめ!」
ビームソードが、粒子に分解されて、吸収されている。
嵐の腕にビーム粒子が追加され、逆にビームソードは出力が減少し、少しづつディーシュさんに圧される。
「不味い!」
(ビームソードを変形させるか? でもそのコマンド苦手だし……副武装? いや、今出力を下げるのは――)
迷っていると――今にも消え入りそうな、シュヴァリィのか細い声がした。
「右の腕に力を掛けなさい」
「ッ、信じるぞ!」
体勢を低くし、ビームソードを短くして、ディーシュさんの右腕に繋がる暴風に、全ての力を掛ける。
すると……ディーシュの腕が、折れた。
「ガアァ!」
「なんかよく分かんねえけど、ヨシッ!」
片腕相手なら、勝てる!
⇒⇘⇓⇙⇦ A!
「オオ!」
「解放!」
ビームソードと解き放たれた粒子が激突。
それは、大きな爆発を引き起こし――立っていたのは、一人だけだった。
ラギナがテトレディの芯界を使えた理由については、また次回