竜と火山とチリチリと
十二角形の大広間。
床と壁のアメがキラキラと輝き、世界の主人を迎え入れる。
そして、シュヴァリィの世界は……焼野原、流れる溶岩、灰の空。
荒廃した火山の世界。
火山には至る所に横穴が開いており、そこから飛び出したのは、赤いドラゴン。
サイズは人より少し大きい程度だが、何せ数が多い。目算で軽く八十といったところか。
自由自在に空を飛び、綺麗な隊列を組む。
真ん中のドラゴンに、シュヴァリィは騎乗していた。
「大軍とエレメントの混成かな?」
「そういうアナタは……不定?」
「一番近いのはエレメントだ」
「……まあいいわ。左翼!」
俺の芯界を測りかねていたシュヴァリィだったが、殴ったら分かると手を振り上げ、左側のドラゴンが火を吹く。
束にって凄まじい威力になった火炎放射だが、アメで作った壁で簡単に防いだ。
多少溶解するが、俺まで届くことは無い。
「アメ? にしては溶けないけど」
「……師匠二人とも熱使いだったから」
「そう……|牙〈ファング〉!」
最前衛のドラゴン数匹が、陣形から突出して突っ込んでくる。
映画のワンシーンような圧巻の光景に感嘆しつつ、武器として巨大な棒付きアメを作り出した。
「……ふざけてるの?」
「真面目なんだなぁ、これが」
テトレディさんに持ち武器を作れと言われ、色々試した結果、この形が一番しっくりきた。
一先ず、大きく上に振り上げ、正面のドラゴンに向かって振り下ろす。
「ディ・メイス!」
「ヴァウ!」
ガン!
食らったドラゴンは頭から潰れ、反動で俺は少し浮く。
「ガンガン行くぞ!」
「ッ!」
大質量に振り回されながら、アメのハンマーを振り回す。
薙ぎ、下ろし、叩き。近づくドラゴンは全てねじ伏せる。
さらに、倒れた伏した奴は、アメでガチガチに縛り、再起させない。
こうして、近づいてきたドラゴンを全て処理した。
(このまま、近づく奴を叩き続ければ勝てるかな?)
束の間の沈黙。
シュヴァリィは下手にドラゴンを指し向けても、無駄に数を減らすだけだと分かっているし、俺も数十匹のドラゴンに囲まれたら、どうなるかは分からない。
水面下で芯界の押し合いは続けているが、今のところは互角。
押し合いを有利にするために、ゆっくりと境界の方へ歩く。
それに合わせて、シュヴァリィはゆっくりと下がる。
境界との距離が変わり、押し合いが俺有利に。
火山が狭まり、六角のアメが再生されていく。
出力が上がり、アメの自由度が上がっているのを感じた。
(このまま行けば、確実に勝てるけれど……)
あのシュヴァリィがこれで終わる気がしない。
色々仕込んではいるが、対応しきれるだろうか。
押して押して、芯界の割合7対3になった頃。
「中々やるわね」
「どうも」
「けど、それもこれで終わりよ!」
ゴゴゴゴゴ!
火口から追加のドラゴンが飛び出し、地鳴りが起こる。
火山が煙を上げ……噴火した。
ドッガァアアン!
複数の火山が火を吹き、火砕流が降り注ぐ。
冷静にアメで防いだが、同時にドラゴンが接近し、壁の無い部分から攻撃を仕掛ける。
「クッ!」
「行くわよ!」
さらに、このタイミングでシュヴァリイは前進。
押す力が強まり、火山の世界が広がっていく。
「調子に、乗るなァ!」
アメのハンマーを振り回し、回転薙ぎ。周囲のドラゴンを一掃する。
上手くいったと思っていたが……ふと周りを見渡すと、付近にドラゴンはおらず、少し遠い所から、俺を囲んでいた。
「ファイア!」
「ッグアアア!」
瞬時に全身にアメを纏い、威力を軽減したが、それでも火傷ができる。
「降参なさい。全焼したら、細胞一つ残らないわよ」
「しないから大丈夫!」
ポン!
仕込んでいたアメの砲が、巨大な飴玉を発射した。
空中で破裂し、俺を囲んでいたドラゴンを一網打尽にする。
さらに、仕込み中に用意していたアメの海から、巨大な津波を発生させ、サーフィンの様にそれに乗り……地味に流れて来ていた溶岩を回避した。
「危ねえ!」
床に固定されていたドラゴンが飲み込まれ「一歩遅ければ俺もああなっていた」と戦慄する。
シュヴァリィがチッと舌打ちし、手を上げたかと思うと、死んだ分のドラゴンが巣穴から復活してきた。
まあ、こうなるのを察していたから、殺すのを避けていたところはある。
しかし、復活から隊列に合流するまでには少し時間がかかり、今シュヴァリィの護衛はたったの二十匹程度しかいない。
アメの波が前に進み、これ以上芯界が狭くなると立て直せなくなるからか、シュヴァリィも前進する。
最終決戦といこう。
「フッ!」
先頭のドラゴンと接触。
アメ付き棒のハンマーで薙ぎ払おうとしたが……がっしりと受け止められた。
「ッ!?」
流石に護衛用のドラゴンは強いか。
ニ、三回と打ち合っても崩せず、強靭な腕を振るう。
「アメでも食ってろ!」
軽く動きを止めた後、口にアメを押し付けて呼吸困難にし、一匹落す。
これが、あと十九匹。
「ああもうメンドイ! 来い!」
アメの棒を差し向け、圧縮してたアメを解放。
ビームのようにアメを伸ばし、シュヴァリィを乗せたドラゴンを捕えた。
彼女は乗るドラゴンを変えようとしたが、既にアメは彼女自身も捕えている。
「クッ!」
「オオオオオオオオオオ!」
芯界のパワーを自分の身体に全集中。
背中に炎を受けながらも、捕えたアメの棒をしっかりと握り、背負い投げ。
ドラゴンごとシュヴァリィを頭から床に叩きつけ……彼女は、失神した。
◎◎◎
「……さすがは実戦トップといったところね。甘く見てたわ」
「アメだけに?」
「ドラゴンの餌にするわよ」
「すみませんでした」
会話しながら、医療設備から緑の液体をすくい、身体に塗る。
すると、見る見るうちに火傷が治り、戦いの前のように戻った。
ついでに黒い液体を頭皮に塗り、髪を伸ばしてチリチリになった部分の髪を切る。
「下手ね。切ってあげましょうか?」
「え?」
「友達、なんでしょう?」
「……じゃあ、よろしく」
ハサミをシュヴァリィに渡し、彼女は慣れた手つきで俺の髪を切っていく。
もしかしたら、髪を焼いた相手に対して、よくやるのかもしれない。
「これくらいでどうかしら?」
「ありがとう。前より綺麗になった気がする」
長い分を縛りなおして、ポニーテールにし直してから、チリチリな髪を掃除する。
「お礼とお近づきの印に、アメいる?」
「……甘いやつ」
「どうぞ」
「辛いのが好きそうなのに、意外」と思いつつ、甘めのアメをあげた。
彼女は苦々し気にアメを睨んでから、口に入れた。
「案外美味しいわね」
「そうでしょう」
「あなた……私の専属騎士にならない?」
「え?」
ラギナの姿描写無かった……。
白髪ポニーテール(侍みたいな感じ)
男性なので平均より頭一つ分くらい高い身長(ベディヘロペアよりは低い)
筋肉質の体
いつも棒付きアメを咥えてる