叔父夫婦に虐げられていましたが、結婚を約束した幼馴染が助けに来てくれました
「大きくなったら、結婚しよう」
真夏の青空のような綺麗な青い瞳の男の子が、明るい笑顔を浮かべて小指を差し出してくる。
大好きな男の子からのプロポーズに私も明るい笑顔を浮かべて小指を絡める。
彼と一緒なら、どんなに辛いことがあっても乗り越えられる。
目を覚ますと薄暗い物置の中だった。
そうだった。いいつけられた時間の中で掃除を終えられなかったので、叔母に罰として物置の中に閉じ込められてしまったのだ。
小窓から月の光が差し込んでいる。寒くて震えてしまうけれど、毛布のようなものはないので体を丸めて耐えしのぐ。
寒さのお陰か、叔母に打たれた頬はもう腫れが引いていたので痛くない。けれど朝から何も食べていないので、お腹が空いていた。
辛くて苦しいけれど、幸せな夢を見れたのはとてもよかった。
幼馴染のジャスパーとはお互いの父親の仲がよかったこともあり、子供の頃からよく一緒にいた。一緒にいる時間が長いせいか自然と惹かれあい、結婚の約束をした後はお互いの両親も承諾してくれたので大人になってもずっと一緒にいるんだとばかり思っていた。
けれど騎士となった彼は隣国との戦争のために駆り出され、会えなくなってしまった。そしてその後すぐ両親が事故で死に、後見人として叔父夫婦が屋敷にやって来てから私の生活もガラリと変わってしまった。
私は持ち物と部屋を叔父夫婦の娘に奪われ、暗い屋根裏部屋に追いやられて使用人のように働かされた。叔父はギャンブルで、叔母とその娘はドレスや宝石類で瞬く間に家の資産を食い潰していった。
女で、しかも未成年である私にできることは何もなく、大切な両親が残した資産を食い潰しされるのをただ見ていることしかできなかった。
どうしたらこの状況を打開できるのかわからない。
叔父たちの蛮行をただ見ているしかできない自分が情けなくて悔しい。
「ジャスパー、私どうしたらいいのかな。このままじゃお父様とお母様に顔向けできないよ」
自然と頬に涙が伝っていく。
そのとき、扉が勢いよく開いた。叔母がまた暴力を振るいに来たのかと身をこわばらせたが、入ってきたのは私がよく知る青年だった。
「ジャス、パー?」
「ようやく見つけた。遅くなってすまない」
彼は小屋に入るなりぎゅっと私の体を抱きしめてくれた。
彼の暖かな体温が、氷のように冷え切った体を溶かすように染み渡っていく。
どうして彼がここにいるのか不思議だったけれど、そんなことよりも彼が無事に戦争から帰って来てくれたことが嬉しくてほっと安心した。
「よかった、無事に帰って来れたのね。どこも怪我はしていない? 体調はどう? 具合が悪いところとかない?」
「君は変わらないね。僕なんかのことなんて気にしなくていいんだよ。こんなに冷たくなって、かわいそうに。僕の屋敷に戻ったらお風呂で体を温めて、一緒に食事をしよう」
彼の言葉は以前と変わらず、優しくて穏やかで安心感を覚えさせるものだった。
ひょいと軽々と体を横抱きに抱えられる。
私を抱き上げることができるということは、きっとどこも怪我をしていないし体調が悪い訳でもないのだろう。よかった。戦争に行ってから彼が無事に帰って来れるか毎日心配でたまらなかったのだ。
そんな彼が今は私を腕に抱いてくれている。彼の体温がたまらなく心地いい。
私は自然と体を彼に預けて、安心したからかいつの間にか眠ってしまっていた。
その後はジャスパーの屋敷で昔のように穏やかな暮らしを送ることができた。
叔父夫婦は違法なギャンブルや密輸品に手を出していたことがわかり、捕まって今は刑務所に入っている。叔父夫婦の娘も修道院に入れられたらしい。
そして私が成人するまでは若くして当主となったジャスパーが後見人となってくれたので、家を取り戻すこともできた。
全部上手くいったのはジャスパーのおかげだ。
戦争でも手柄を立てたので、国王様から新しい領地を貰うほどだ。
すごいすごいと褒めると、彼は頬を赤くして照れているようだった。
「エリーンがいてくれたから頑張ってこれたんだよ。武功を立てられたのは君に1日でも早く会いたくて戦争を早く終わらせるためだったんだ。エリーンがいなかったら僕なんかすぐに死んでいたはずだ。本当にありがとう」
優しい彼はすぐに私のお陰だと言ってくれる。
本当に素敵な人だから私にはもったいないくらいだ。
彼と離れ離れになった数年間は寂しくて辛かったけれど、その分これからはずっと一緒にいられる。
これから2人で築いていく幸せな生活を胸の内に描いた。
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