8 私がロボットを必要とする理由
目を醒ますとベッドの上にいた。
「ここは…?」
「あぁ…姉さん…殲滅ジャーの基地です。」
ドレッドは私に教えてくれた。
「あら…目を醒ましたの?」
看病してくれていた殲滅ピンク(の中の人)が私に話しかける。
「……魔女ネメシスは?」
あの場に唯一残っていたネメシス…
彼女があの場の者を殺そうと思っていたら、誰も生きてはいない…
「帰ったよ…アンタをここに届けた後…アクアと一緒に消えた…」
「そう…」
マシロは消えた…再び私の前から…
「姉さんをここに連れてきたとき、目にアザがありましたけど、変身が解けたらすぐなくなりましたね…」
「私だけの特別な体質なの……けれど呪いのせいでしばらくは動けない…」
「まぁ動けないけど、話があるからみんなを呼んでくれない?」
そして私はベッドの上で起き上がりながら3人の元魔法少女に頼み事をした。
殲滅グレーは何か事務仕事をしなければならないらしかったが、基地の他の人間は私の元に来てくれた。
「みんな…わかっていると思うけれど説明します。」
私はまず魔法少女が魔女に変わることを言う。とは言っても、この場の全員は知っていることだが…
まず魔女の退治にヒーローのみが戦える理由…それは魔法少女が絶望するのを防ぐため…
以外にも、魔女は生身の人間から精気を奪う…
つまりは近くに存在するだけで魔法少女と人間を魔女に変える。
ディザイアシードとホープズシードは元は同じシードと呼ばれる生命力そのものだ…
つまりは魔女が生命力を奪えば、人間は屍と化する。
「そして魔女の体質について…
彼女達は私が救いたい『元人間の少女』」
魔女は呪いにより変身が解けない。
つまり永劫魔女の姿であり続ける。
つまりは常時生き永らえる為にシードを持つものを襲ったり、生命力を奪い続ける。
人間とは共存が不可能だから、彼女達は自身の歩んだ人生を否定し、次第に人間も憎み始める。
けれど怪人や他の魔女を倒して、ディザイアシードの力で生き永らえる良い存在も存在する。
人間でいる為に…
人間と共存する為に…
でもいつかは彼女自身も壊れる。
魔女を倒すにはロボットが必須だ。生命力を奪わせない為に…
ならば逆に魔女がロボットに乗れば、人間から生命力を奪わずに済むのでは?
私はそう考えた。でも魔女を救う理由でロボットが必要とは言えない。
だから
「怪人を効率良く倒してディザイアシードを手に入れる為に、私は戦闘ロボットを導入したいの!」
「ぶっ。だからなんでロボットなの?」
「表向きはこの理由…
でも本当の目的は頑張って来た魔法少女が…
魔女になってしまった存在を助けたい。
再び人間と共存出来る道を選ばせたい!」
私は微笑む。前と違って、周りに否定する人間はいないから…
例え夢物語だとしても皆、真剣に話を聞いてくれる。
「先ずは人間との共存を第一目標にしたい。
だって…ロボットなら中に入っているのが魔女か分からないでしょ?
魔女でも自我を保ち欲望に負けない人もいる。
そんな人が他人に絶望する前に…
彼女達を助けたいの!」
魔女になった者は孤独だ…
誰かに思われる事はなくなる。
思われたとしてもその者を傷付ける。だから遠ざけてしまう。
誰かに想われずにディザイアシードに呪いが募り、段々と救えない存在と変わる。
キレイ事だが他人に感謝される事で空っぽの心は少し満たされる。
けれど魔女は魔女と言うだけで感謝されなくなる。
だからこそ私は武装ロボットを導入するのだ…
魔法少女の…いや魔女となった者を少しでも救う為に…
少しでも人々に感謝され、再び人間らしく生きられる様に…
そしていつかマシロを…ネメシスと言う魔女になった彼女を救うために…
まずは魔女と人間達の共存…
その為には正体を隠して、平和に貢献すると言う実績がいる。
その実績を積み重ねていけば、理解してくれる人間や人を襲う魔女も少なくなると信じて…
願いを叶えて魔法少女を無事に卒業する人間はほとんどいない。
多くの魔法少女が魔女になるからこそのセカンドプランなのだ…
これが私の考える魔法少女の働き方改革だ!
え?他に手段があるって?
知らん。手段があっても、ロボットを導入する以上にロマンはないでしょ?
そこは考えるな…感じろ!ってコトで…
◇◆◇
「ねぇ…マジカル・アクアとか言ったっけ?今なら引き返せるよ?」
「いえ…あーしはもう魔女なんで!」
「魔女でも…レイアといれば人間に戻れるかもしれないのに…」
ネメシスはため息を吐く。
「人間に…魔法少女に戻れなくても、あーしにはやらなきゃならないことがあるから!」
「はぁ…聞いておきましょうか?あなたがやらなきゃいけないこと…」
「あーしらを魔女にしようとした奴に復讐を…未来永劫の苦しみを…」
「私と同じか…」
ネメシスは聞こえないくらい小さな声でポツリと呟く…
「そこにハッピーエンドなんて待ってないよ?」
「自分を思ってくれる人たちがハッピーエンドを迎えてくれれば良いんで!」
ネメシスは優しく微笑んだ。
「じゃあ行きましょうか?私達にはもう救いなんて必要ないから…」
「はい!」
「あっ…その前に…」
ネメシスはアクアに青いバラを渡す。
「これは?」
「魔法のバラ…それが枯れた瞬間にアナタは魔女として他人から生命力を奪い始める。」
「じゃあ…これはあーしが人間でいられるタイムリミットって事っスか…」
「いいえ…アナタはもう人間じゃない…
大切な人に別れを告げるリミットだと思って。
魔女になればもう希望なんて無い。絶望だけだから…」
「その…ありがとうございます。」
「じゃあ行きましょうか?」
こうして2人は暗闇へと進む…
それが引き返せない道と知りながら…