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12 裁きの天雷

 ブオオオオオン

 物凄い速さでバイクが学校に近づいてくる。


「アンナぁぁぁぁ…」

 スメラギのようだった。ボロボロになりながらも、誰かの名前を叫んでいた。


 それに関わろうともせず私達は街に向かおうとする。


 今は生存者の確認よりも、まだ助けられる人間を助ける事が先決だから…


 学校を制圧した敵の手腕は凄かった。

 皆が逃げようとした時の、複数の銃声は空砲だった。


 つまりは逃げた人間を撃ち殺したと思わせただけだ。

 そう…容赦なく人を殺すと誤認させ、教室の外に誰も逃がさない。


「ここまでは完敗かぁ…」

 私はため息をついた。


「そうねぇ…それに加えて敵はこの学校から特に距離の離れた街を中心に襲撃しているようだしねぇ…


 しっかりと計画を立てて、邪魔されないようにしてるようねぇ…」

 サクヤもため息を吐く。


 ここから離れた距離をどうやって助けに行くか…

 サクヤは能力が強大ではあるが、機動力がない。


「サクヤ…あなたはこの近くの街や学校の救援に向かって欲しい。

 遠くの街は私が制圧する。」


「えぇぇ…せっかく会えたのにもうここでお別れぇ?」

 サクヤは艶やかなパーマのかかった髪をすこし弄る。雨に濡れてより艶やかさが増してきれいだった。


「うーん…私とサクヤで別々に行動するのが効率良いから…

 助けて貰ったのにごめんね…こんど食べたいもの奢るから許して?」


「じゃあ私ぃ…レイアちゃんが食べたいなぁ。ふふふ。」

 冗談がキツいな…不思議ちゃん過ぎて、やっぱりこの子苦手だ…


「オッケー。じゃあちゃっちゃと済ませますか。」

 そう言って私は左手を足元に向ける。


「サクヤ…しばらくは建物の中に避難して?で、外には出ないで?」


「それって…?」


「これから敵を殲滅するから。サクヤみたいに対象は選別出来ないから…」


「そっかぁ…見るのはぁ?」


「…止めといた方が良いよ。」


悪魔の左手(デモンズレフト)

 その瞬間足元の水溜まりを分解する。水は水素と酸素でできている。


 水素と酸素…つまり…すこしの衝撃で爆発する。


 私が足元を蹴りあげると同時に足元は爆発する。その勢いで私は雲の上の遥か上空まで飛び上がる。


 急激に空中に上がった為か、肺が凍りつきそうなくらい体が冷える。



 雨雲を越えた先の空…雲の上から見る地平線の向こうでは夕日が今にも沈みそうだった。


「夜も近いか…」

 私は雲ひとつなくなった空から、夜を迎えようとしている街を眺める。


 どの街も…普段は昼間でも明るいはずのネオン街でも電気はほとんどついていない。


 つまりは夜を迎える前に怪人を退けなければ、確実に街は敵の手に堕ちる。


「アストラ?いる?」

 私は何もない空中で問いかける。


「ここに…」

 アストラはポンと突然現れた。恩人が私専用に作ったネコ型脱法ゴーレム。


 本来の魔法少女のゴーレムならば、こんな移動は出来ないがこの子は特別だ。


「救援のヘリや飛行機が飛んでいないけれど…」


「高い確率でヒーロー達の基地も制圧されているからね。」


 つまりは避難誘導ができているかすら分からない絶望的状況。


「避難はできていると思う?」


「どのくらい怪人がいるかにもよるけど、学校が制圧されて半日近く経つ。


 先ほどライダーが学校に現れたし、恐らくは皆地下シェルターや建物の中に隠れているはずだ。」


 この場合はヒーロー達は優先的に避難誘導を行う。

 戦いや殲滅の際に、一般人を巻き込まない為に…


 私は背中に羽を生やし、空中から街を眺める。夜が迫るのに電気さえつく気配がない。


「地上にどれだけの人間がいるかな?」


「火事場のどろぼう位じゃないかな?少なくとも一般人はみんな逃げたはずだ。」


 私は左手を見る。

 一般人が逃げた事を信じるしかないか…本当は殲滅の為に使う技だけど…


「四の五の言ってられないか…やらなきゃもっと犠牲が出るから。」

 私は左手を雨雲に向ける。雲を分解するために。


「分解魔法・天雷」

 雨の時の殲滅によく使う技。無差別攻撃なので確実に人がいない場合のみ使うのだが仕方がない。


 雲を細かく分解して、イオンの衝突によって強制的に静電気を発生させる。

 簡単に言うとヤバイくらいの雷を発生させるのだ。


 さらに空気を分解して真空状態を作り出し、雷の落とす場所をある程度コントロールする。


 対象は近隣の明かりが消えた街。そこに雷を落とす。


「裁きの雷よ!落ちろ!」

 私が合図をした瞬間に地上に無数の雷の雨が降り注ぐ。


 自然現象ではあり得ないくらいの量の雷だ。


 今地上では雨は雷の雨に変わっている。

 空中から見ると、稲妻が地上に無数に降り注ぐ光景が見えるのだが、恐らく地上では目を開けるのが難しいくらい眩しい光に満ちているはずだ。


 その雷は雨雲が尽きるまで落ち続ける。


 神の裁き・天雷


 半日経過した今、地下シェルターや建物の中に避難している前提の殲滅魔法。


 雷を10分程度落とした後、左手を雲に向ける。


 雨雲を消し去るために…

 雨という天気が鬱陶しいから…天気を晴れに変える。



「分解魔法・大爆発(エクスプロージョン)


雲を水素と酸素に分解して、摩擦を起こす。

 つまりは…空中で大爆発が起きる。


 ズドーーーーーーーーン

 空中で飛行機が大爆発を起こしたのかと疑いたくなるくらいの爆音が、地上にも聞こえた。


 その爆発は雨雲を吹き飛ばし、空をこの世の終わりかと思うくらい真っ赤に染め上げる。

 雨空を雲一つ無くす程の大爆発だった。


 それは再びしばらくの間大爆発の連鎖が続いた。身動きもとれなくなるほどに…


 そうして空は雲ひとつ無い見通しの良い空に変わる。


「とりあえず雨は消した。あとは…現地に…先ずは」


ゴオオオオォォォ


私が現地に向かおうと体勢を変えたその時だった。


「緊急事態発生…緊急事態発生」


物凄い勢いで私に向かって小型の飛行機が飛んでくる。


「計8台くらいの戦闘型飛行機かぁ…

ようやく事態の深刻さに気付いて、救助機を飛ばしたかぁ。」


自分も頑張らなきゃと、気合いを入れたその時だった。


ガガガガガガ


散弾銃が私に向かって飛んできた。


「悪魔の左手」

私は左手を向け、銃弾を分解する。


「何?まさか…敵!ありえないんだけど…」

 助けが来たと思ったら…どうやら…



「敵生存確認…以降自動殲滅モードに移行します。」


 飛行機…いや戦闘機から機械音声が聞こえた。


「全隊、戦闘形態へ移行しターゲットを囲め!」

 戦闘機は旋回しながらも私を囲んで逃げられない様にした。


「戦闘形態?まさか…ロボット達が敵に乗っ取られたの?」


 そう呟くうちに、戦闘機はロボット型の戦闘形態に変形した。


 ロボットらしい格好良いフェイス…右手にビームサーベル、左手にライフル…


 控えめに言ってめっちゃ格好良い。本気でこんなロボットが欲しい。


「平和を脅かす敵め!我らオートボットが貴様を倒してやる!」


 機械音声だけど、自動操縦ロボットって憧れの未来って感じでロマンがあるな…

 そう私は思ったのだった。あとはこのロボットが敵でなければ良かったのに…

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