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世界の深層

とあるコンシューマゲームのギミックで占いができる事実が判明し、試しに占ってみたところ『吉』と出た。


<ところでこれは『ゲーム内の主人公』の運命についてなのか、それとも…>


複雑に考え過ぎてよく分からなくなりかけたその日、たまたまゲーム内の『フレンド』からメッセージが届いた。


『メリリさん!お得情報がありました!明日△△屋(某古本店の名前)でセールだそうです!』


ゲーム内でもフレンドだがもともとは読書アカの趣味繋がりだったその人からの『情報』は有益という他ないが、ゲーム内で伝えられると不思議な気分になる。念の為現実世界のネットで検索すると同じ情報がヒットしたので、せっかくだから行ってみることに。翌日、良い商品をゲットする為に早いうちから店の前に並んでいると、情報を提供してくれたその『本人』もほぼ同じタイミングでやってきていた事が判明。自分の真後ろに付いた『北欧巨人』さんは意気揚々としていた。


「メリリさん、来ましたか!」


「北欧巨人さんはお目当てのものとかあるんですか?」


「文庫本何冊か買えればいいかなという感じです。メリリさんは?」


「特には無いですね。良いものがあったら買うつもりですが」


そんな話をしながらいざ開店するとそそくさと入店し、それからは熱心に品定め。予定はしていなかったが半額ほどに値引きされている良書をいくつか見つけてしまい結果持ち帰るのが大変なくらいの量に。


<これは完全に『吉』だな。占いが当たったわ>


と高揚感に溢れた気分で今一度『北欧巨人』さんを探していたら、文庫本の棚に居ると思っていたら意外なことにサブカル系の本棚でじっくり背表紙を眺めている姿が。


「北欧巨人さん、こういう系の本にも興味があるんですか?」


「あ…いや、ここに怪しげな本があったので」


「『世界の深層にアクセスする方法』」


彼が指差した方向にあった本のラベルを声にしてしまった事を僅かに後悔する。それほどまでに怪しさというかヤバさを感じてしまうタイトルだった。


「いやぁ…こういうのは良くないですって。よく分からないけど『危険な匂い』がします」


「そうですよね…。しかも値段も激安なんですよ」


「え、そうなんですか?って、100円ですか!?」


裏に張っていたシールに印字されていた驚きのプライス。調べてみたら元の値段が1000円だったのでここまで割安になった理由は推して知るべしなのだが、基本的に『雑食系』の本のソムリエでもある北欧巨人さんが惹かれてしまうのも無理はないのかも知れない。


「あ、でも前にこれに似た本読んで頭痛くなってきたことありますし、流石にやめておきます」


苦笑を浮かべた彼は「それではこれで」とそのまま会計に向かった。一人その場に残されて腕組みをしながらしばし考えた。


<そういえば『あの人』こういう本が好きだって言ってたような気がするな>


北欧巨人さんとは別の知り合いにオカルトマニアがいたのをそのタイミングで思い出した。自分が読まなくてもその人にプレゼントすれば喜ばれるかも知れないという妙案が浮かんだら勝手に手が伸びていた。



結局本を購入したことを北欧巨人さんはには伝えそびれてしまったが、家に帰って何となくパラパラと捲って出てきた太字フォントの『まずはこの世のバグを探しましょう』という謎のフレーズで始まる章だけは辛うじて読むに耐えた。要点を整理すれば、



①見逃されているがこの世にはバグが存在する

②そのバグを発見できれば深層にアクセスできる確率がグッと上がる

③まずは手近なところからバグ探しを始めましょう



という論法。真には受けていないので、<手近なところって家の中にあるものとかかいな>などぼやきながら、とりあえず例のゲームを起動し普段通りの行動を開始する。フレンドからのメッセージがないかチェックしてから、ギミックである『占い』をもう一度試してみたが…


「え…!?フリーズしたの!?」


画面が固まって一切進行できなくなる非常に稀な展開になってしまった。少し取り乱してしまったが、リセットして再起動したら何の問題もなく起動する事が確認される。胸を撫で下ろして、念の為もう一度占いをしてみたが今度は問題なく『大吉』と表示された。



「ちょっと待てよ…もしかして」



こういう不具合は基本的にある動作を行った場合に起こり易いという知識があった為、もう一度リセットし、自分が『普段通り』行っている行動の手順でスタートし、最後にフレンドからのメッセージのチェックを行う。



「ここまでは『同じ』。そして占いを起動したら???」



なんと再び画面がフリーズしてしまった。同じ事を繰り返しても同様にフリーズする事が判明。これは正真正銘、予期しない動作つまり『バグ』である。タイミングがタイミングだっただけに、



「まさかこの世の深層に…」



と思い掛けたものの常識的な判断で運営のバグレポートに仔細を報告してみたら当然ながら丁寧に対応され感謝された。その後、公式に不具合のアナウンスとバグを修正するアップデートが発表された。アップデート後、念の為同じやり方で占いを起動させると今度はしっかり結果が表示された。


「『吉』か」


考えてみればゲーム内の主人公からすれば『世界の深層』(ゲーム開発)にアクセスしたことになるのかも知れない。そんな内容のメッセージを北欧巨人さんに送ってみたりした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「世界の深層にアクセスする」というワーディングがワクワクしますね(`・ω・´) 世の中には奇書とされているものがありますが、ドグラ・マグラくらいしか読んだことないです……理解するのはなかなか…
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