78.ピリつく楓華をミファは揉む
※キャラサブまとめ
・時雨楓華。金髪女の主人公。
・モモ。かわいい小さな鬼娘。天才科学者。
・ミファ。明るい能天気アイドル。背丈などは楓華と同じ。
・マイケル。白銀の巨竜。
・泥棒している魔術師。見た目は青年。名前はコピー。
ミファと鬼娘モモの2人は警察から待機を命じられており、スタッフ達が休憩する大部屋で雑談していた。
その部屋には2人と同じく待機しているスタッフが大勢いて、誰もが呑気そうな様子で解放されるまでの時間を潰している。
つまり他人事同然の態度で過ごしているわけだが、実際は全員が窃盗事件の関係者だ。
しかし皆一同に記憶が忘却させられているため、どうしても当事者気分にはなれない。
そんな中、モモが又聞き感覚で今回の事件について触れた。
「ミファさん。私はあまり分かってないままですけど、これって大事件ですよね?だって、目玉のイベントが潰れてしまった以上、魔王の誕生日パーティーが台無しにされた事にもなる訳ですから」
「そうかもね。でも、だからと言って気にするのは極少数じゃないかな~」
「なぜです?」
「これくらいのトラブル、他の問題と比べたらサプライズみたいなもんでしょ。元よりこの世界は色々と不安定で、いきなり惑星同士が衝突しかける事も多々あるくらいだしさ」
「確かに……その通りですね。私も、少し前には地底国との戦争に巻き込まれました。ただ些細な問題だとしても、やはり解決できた方が良いと思います」
「にゃっはっはっは~、そりゃあそうだ!ところでフウカちゃんは?まだ事情聴取を受けているのかな」
「それもあると思いますけど、多分また独断行動を起こしていますよ。フウカさんは手短に終わる私用の場合、一言も伝えず実行してしまいがちですから」
そうして2人が楓華のことを話題にした直後、その当人が彼女らに近づいて来た。
しかもモモの言う通り一仕事を済ませてきた雰囲気であり、いつも以上に陽気な口調で声をかける。
「2人ともオッスオッス!いやぁ、ごめんね。ご明察の通り、勝手にあれこれ済ませて来た所だ!」
「フウカさん、いつの間に戻って来ていたのですね。それで済ませてきた用事というのは何ですか?」
「アタイなりの再調査かな。しっかしなぁ。今回ばかりは、うーん……」
楓華は詳細に語らず、分かりやすく不服そうな素振りで唸る。
それは思い悩んでいる気分と釈然としない苛立ちが入り混じった反応であり、精神状態と思考の両方が整理できてないのだとモモは見抜いた。
「どうかしましたか?心なしか、かなりピリピリしていますね」
「マジ?まっ、なんつーか、とりあえず犯人が気に食わないって感じだよ。物のみならず、人の思い出まで盗むなんて極悪非道だ。何よりモモちゃんの家族愛を汚した罪は重い」
「凄い事を言いますね。そういえば、まだフウカさんから私の記憶について詳しい説明を受けてないです。一体、どのような記憶が盗まれたのですか?」
「あぁ、それは……うぅん。なんだったかな~」
楓華は露骨に視線を逸らし、安易には説明せず誤魔化すように言い淀んだ。
もしも失われた記憶や絵のことを教えたら、きっとモモは姉にプレゼントするという本来の目的のために代用品を探し求めるだろう。
そうなってしまった場合、本来彼女が抱いていた姉なら喜んでくれるという前向きな期待は儚く消える。
それに加えて、母親が見た光景を姉にも体験して欲しいという願いまで諦めることになってしまう。
つまり真実を伝えても、言い表し難い悲しみが生まれるだけだと楓華は考えた。
更に彼女はモモの望みが潰える事態を避けたいと思い、つまらない悪足搔きながらも少女の質問には答えないようにするのだった。
「とにかくモモちゃん。今のアタイは懐中時計の事よりも、モモちゃんの記憶を取り戻したい一心だ。もはや使命感に燃えていると言っても良い。だから無事に解決するまでパーティーを楽しんでてくれ」
「急にそう言われましても……。どう反応するべきか分からないです。私のためですから、まずは感謝すれば良いのでしょうか」
「あっははは、感謝は万事解決した後で良いよ。それじゃあアタイは次に……うん。啖呵を切ったものの、何も決めて無いし思いついて無いわ」
楓華は解決すると意気込んだのに、早速モモの目の前で困り果てた仕草を見せる。
どうやら相手のために成し遂げたいという気持ちだけが先行していて、解決に至る見込みは全く無いらしい。
そんな彼女のことを放っておけないと思ったのか、ミファは少し躊躇いながら喋り出した。
「にゃっは~。ミファ様的にはもっと長期的な解決を望んでいたけど、目の前で友が困っているなら見捨てるわけにはいかないよねぇ」
「何かあるの、ミファちゃん?」
「実はミファ様はな、犯人についてちょっと心当たりがあるんだよ。ただ人違いを考慮して、先に確認させて頂くぞ。まずはフウカちゃん、お手々を出してな~?」
「あぁ、ほら」
楓華は言われるがままに両手を差し出す。
するとミファは彼女の手を掴むなり、なぜかモミモミと執拗に揉み始めた。




